弁護士 荒井 剛
2018.11.29

1円未満はどう計算するの?

今回は短め、かつ、軽いコラムです。

社会の決まりごとのほとんどは法律で定められています。
以前、祝日については、「祝日に関する法律」で決められていることについてのコラムを書かせていただきました。 (http://www.ak-lawfirm.com/column/611

今日は、お金に関わる法律をご紹介してみたいと思います。

ご存知のとおり、日本の通貨単位は「円」と決められています。そして、通貨の額面価格は一円の整数倍とするとも決められており、一円未満の金額の計算単位は、銭及び厘とすることも「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」によって決められています(第2条1項、2項)。そして、貨幣の種類は、500円、100円、50円、10円、5円及び1円の6種類と規定されており、これとは別に国家的な記念事業として発行する貨幣があります。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」はそれまでの通貨関連法令を整理し、新たな通貨に関する法律として昭和62年に制定されましたが、昭和62年以降、すでに42種類もの記念貨幣が発行されています。結構、多くの記念貨幣が発行されていて驚きました。直近に発行された記念貨幣は「平成32年に開催される東京オリンピック競技大会及び東京パラリンピック競技大会を記念するため発行する一万円」です。4万枚発行されているようですなのですが、残念ながら実物にお目にかかったことはございません。 デザインは財務省の下記HPを参照 https://www.mof.go.jp/currency/coin/commemorative_coin/2020_olyparagames/20180223.html

さて、このように貨幣の種類が定められていますが、買い物をすると1円未満の単位で端数が生じることがあります。商品の価格にもよりますが、たとえば賞味期限が近づいている食品が表示価格の2割引きで販売されているといった場合、計算上、割り切れず1円未満の数字が出てしまいます。たとえば、108円と表示されている豆腐が2割引きで販売されたとすると販売価格は「86.4円」となります。一円未満の計算単位は「銭」とされますので86円40銭ということになりますが、1円未満の貨幣はないので、「86円40銭で支払ってください」と言われることもなければ、「86円40銭で支払います」と言うこともないかと思います。

ではこの場合の「40銭」部分の計算はどうなるのでしょうか。

実は、このような場合、さきほど挙げた「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の3条により、1円未満の額が50銭未満なら、切り捨て、50銭以上なら、切り上げて1円として計算すると規定されています。四捨五入ですね。したがって、さきほどのケースでは、「40銭」部分は50銭未満なので切り捨てられることになり、結果「86円」だけを支払えばいいということになるわけです。ただ、この3条は、国等の場合には適用されないと書かれています。つまり、国や地方公共団体に対して支払いがある場合や国等から支払を受ける場合にはこの条文が適用されないということになります。

ではどう計算されるのか。

実は、国等の場合には、さらに別の法律が用意されています。
「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」です。 

これによると国が債務を負う場合には、
1円未満は1円として切り上げて計算し、
逆に、国が債権を有している場合には、
1円未満はすべて切り捨てろと
規定されています。

ささいなことではありますが本来の四捨五入に比べると国民にとって有利だということになってはいます。ただ、この恩恵を受けるのは、あくまで1円未満が問題となるケースだけになります。

以上、お金に関わる軽いコラムでした。