弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 久保田 庸央
2016.08.19

とある交通事故訴訟にて(後編)

損害賠償請求訴訟の一審は何とか勝訴しましたが、被告側から控訴されました。今回は、控訴審から最終解決までのお話しとなります。

控訴があった場合、控訴の詳しい理由は多くの場合は控訴時ではなく、後から出てきます。控訴された時にはどのような理由で控訴されたかは分からず、控訴理由書の提出期限が民事訴訟規則で控訴後50日以内とされているので、そのころ、具体的な理由が明らかとなります。

控訴人から控訴理由書の提出がありました。従前の主張を塗りなおすような内容でした。
私は、控訴審の答弁書を作成し、控訴人の主張に反論しました。

控訴人の控訴理由書には、特に目新しい主張や証拠もなく、1回期日で結審するだろうと思われました。控訴審では、控訴人が控訴理由書を提出し、被控訴人が反論の書面を提出し、1回で結審することが多く、本件もそのようになるものと思っていました。

ところが、第1回期日の直前になって、控訴人側から、立証を補充したいから期日を続行して欲しい旨の上申書が提出されました。そんなことなら、控訴理由書と同時に証拠を提出しろなどと思いながら、続行の必要性なしとの意見書を提出しました。

第1回期日、私は1回結審を希望していましたが、期日は続行されてしまいました。
そして、いろいろな角度からの鑑定書や事故の状況をシミュレーションするパソコンソフト等の証拠が提出されました。控訴人側はバックが保険会社ですから、証拠に多額の費用をかけることができるわけです。
他方で、こちらの依頼者は一私人ですので、資金力の差は顕著であり、いわば丸腰状態です。鑑定書等の証拠に関する反論は基本的に私自身が行わなければならず、私は、鑑定書の数値がおかしいとか、シミュレーションの前提がおかしいとか、相手の立証活動の問題点の指摘に奮闘したわけです。

一応、相手方の新証拠とお互いの主張反論が出揃ったところで、裁判所から和解の勧めがありました。私としては、相手方の鑑定書やシミュレーションにはおかしなところがあり、相手方の立証は成功していないものと思っていましたが、裁判所からの和解の提案は、こちら側は見舞金程度の支払を受けて解決しないかというものでした。要するに、このまま手続を続けていけば、一審判決をひっくり返すということです。
この期日においては、相手方が主張を補充することになり、次の期日は、相手方の補充主張も踏まえて、和解の話が出ましたが、やはり同じようなことを言っていました。既に依頼人とは、裁判所の和解の提案は拒否することを協議しており、私としても、裁判所の考えていることはおかしいとの認識でいました。
第2回期日以降は、札幌高裁は遠いので、当方は電話会議で裁判に臨んでいましたが、次回期日の第7回期日は出頭すると申し出て、札幌高裁に赴くことといたしました。

次の期日。相手方の鑑定書等の証拠がいかにおかしく、本件では、相手方が主張するような事実はおよそ認定できない旨の20ページを超える準備書面を提出して期日に臨みました。
和解の話があり、大部な準備書面を提出しているにもかかわらず、裁判官はこちら側は見舞金程度で我慢した方が得ではないかというような話をしています。ちなみに、和解の話をするときは、当事者の一方は席を外し、交互に直接裁判所と話をすることが多いです。
そこで私は、裁判官に対し、証拠の具体的個所を示しつつ、今回の事件は、いかに事実認定ができないかを延々とレクチャーしたのです。その時間はなんと30分間。裁判官もよくもまぁこんな長い話に付き合っていたものとは思いますが、これで雲行きが変わりました。裁判官には、一審判決を覆すことを前提としていたことに疑問を持っていただくことに成功したのです。

以後、裁判所から和解の話が出ることはないまま、双方、証拠や主張を追加していき、そして、裁判所から和解の話が出ることのないまま結審となりました。さらっと書いていますが、実際は、相手からさらに鑑定書が出され、こちらも何十ページにも及ぶ準備書面で応戦しており、それなりに苦労はしました。

判決。
2審も見事勝訴。裁判官へのレクチャーの手応えから、勝訴するものとは思っていましたが、控訴審においても当方が敗訴することが前提の和解案が示されていたことや、その後の鑑定書等の補充により、裁判所の考えが変わっている可能性も考えられ、不安はもちろんあったので、一安心でした。

その後、上告されましたが、最高裁は審理に入ることなく、相手方の上告等を退けましたので、この段階で、こちらの勝訴という最終解決が図られたのでした。因みに、上告されても最高裁判所はほとんどの事件で実質審理をせず、上告された側には上告をした理由についての書面も送られず、反論する必要もないため、民事事件は事実上高裁でほぼ終わりということになっており、今回の事件もほとんどの事件と同様に実質審理をしなかったということになります。

ここまでで、訴訟提起から約3年8か月。死亡事故で目撃者なし、生存当事者がこちらに不利なことを言っているという極めて厳しい状況で、紆余曲折を経た長い長い戦いにピリオドが打たれたのでした。