弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 久保田 庸央
2016.06.22

とある交通事故訴訟にて(前編)

 とある交通死亡事故のご遺族が私のところにご相談にいらっしゃいました。

 信号機のある交差点で、相手方トラックと出合い頭に衝突し、死亡してしまったという事故で、相手方に損害賠償請求したいという相談でした。
しかしながら、目撃者はなく、相手方トラックは自分は青信号だったと主張しているとのことでした。
また、刑事事件では、相手方トラックの運転手は、不起訴(裁判にかけられていない)になっているとのことでした。

 これだけ聞いた時点で、この事件はかなり絶望的な状況です。何せ、生存している相手方がこちらに不利なこと(相手が青、当然こちらは赤)を言っており、目撃者がいないというのですから…。肝心のこちら事故当事者は死亡してしまって、何も語れない…。死人に口なしの状態です。

 弁護士を依頼して裁判をしても、裁判で負けた場合、弁護士費用や裁判の実費を負担することになりますから、結果としては返ってマイナスになってしまいます。私は、その旨のご説明を差し上げましたが、ご遺族の弁護士依頼の意向はかなり強かったこともあり、実況見分調書を取得して、その内容を検討した上で、相手方に損害賠償を求めるか、断念するかを決めるということにいたしました。
実況見分調書は、警察官が現場で当事者の説明を受ける等して作成された図面です。相手の車両をいつ発見したとか、信号をどの地点で見たというような指示説明も記載されており、上記のように不起訴となった事件でも、弁護士会を通じて、捜査記録のうち、実況見分調書だけは取り寄せられるようになっています。

 後日、実況見分調書を取得して、その内容を検討しました。

 相手方の青信号を確認して、交差点に入ったという内容の指示説明がなされている内容になっており、一見すると、やはり難しいなという内容となっていました。
しかしながら、交差点まで相当遠い位置にいた被害車両を発見して、直ちに危険を感じ、急ブレーキをかけたという内容にもなっていました。
私は、これを見て、相手方運転手はなぜそんなことができたのかと思いました。青信号で交差点に入るとときに左右を見るのか、仮に見たとしても、まだ遠くにいる交差道路の車両を見て直ちに急ブレーキをかけることなどできるのか。青信号を行くときに、交差道路の車両が信号無視をするなんてことは普通は考えませんし、ある程度様子を見て、その様子(車の勢いなど)から、もしかしたら赤信号で止まる気がないのではないかというような迷いを経てからでなければ、ブレーキをかけるなんてことにはならないと思うのです。
要するに、実況見分調書の内容は、青信号で交差点に進入する者の行動とは思えなかったということです。私としては、信号を見落としていて、交差点に入る直前にでも赤信号に気づいて、急ブレーキをかけ、左右を見たら交差道路から被害車両が来ていたというような事件ではなかろうかと思いました。

 ところで、実況見分調書の分析は以上のような感じですが、相手方運転手の説明がおかしいのではないかという疑問はあるものの、断定できるものではありません。また、私が思った相手方が赤信号を見落としていたのではないかというのは、単なる憶測に過ぎません。
損害賠償を受けるために、相手方に落ち度があったということ(赤信号無視)を証明する必要があるとすれば、やはり、この事件で損害賠償請求をするのは難しいと言わざるを得ません。
一般に、相手にお金を請求する裁判の場合、請求の根拠となる事実を請求する側が証明しなければなりません。貸金請求をするのであれば、借用証等を証拠提出することにより、貸金請求権があることを証明する必要があるわけです。損害賠償請求の場合も、相手に落ち度があること等を証明する必要があります。
しかし、人に被害があった交通事故は、法律で証明責任が転換されています。交通事故の被害者が、相手方に落ち度があったことを証明するのではなく、加害者側が自分に落ち度がなかったことを証明できなければ、損害賠償が認められるということになるのです。この事件では、相手方が青信号で交差点に入ったということが証明できなければ、損害賠償請求が認められることになります。

 相手方運転者は生存しており、自らの口から事故状況を語ることができ、目撃者がいない、こちらの事故当事者もいないということで、分が悪いことは変わりませんが、実況見分調書の内容に疑問があること、法律で証明責任が転換されていることから、一筋の光が見えるという状態になったのです。

 このような実況見分調書の内容の検討結果を踏まえ、ご遺族と協議し、損害賠償請求訴訟を提起することといたしました。
ここから、3年を超える長い戦いが始まったのです。

                                                              つづく