弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 久保田 庸央
2013.09.03

嘘ついて裁判に勝とうとしたらダメですよ

平成25年8月30日、札幌に出張して、弁護士倫理の研修を受けてきました。

弁護士会(日弁連)には、弁護士職務基本規程というのがあって、弁護士の職業倫理が定められています。そして、弁護士倫理の研修を受けることは、弁護士に義務として課されています。

この度の研修は、受講者にあらかじめ設問が配布されて、それぞれが回答を提出した上で、主催側が事前に回答結果を集計し、それも踏まえて研修が実施されました。今回、研修のネタをコラムに書こうと思ったのは、この受講者の回答の集計に驚愕したからです。



設問は、夫が不貞行為(不倫)をはたらいたとして、訴訟提起されており、訴えられた側(夫)の訴訟代理人として受任し、夫は当初弁護士に対して、不貞の事実はないと説明しており、不貞の事実はないと答弁したことを前提とするものでした。

そして、訴訟が進行して、妻側から、不倫相手と男性が腕を組みながらラブホテルから一緒に出てくる写真(ただし、男性の顔は横顔)が証拠提出されたとして、次の場合、弁護士はどうするかというものでした。

①夫が、実は、この女と不倫している。でも、この女には別に男がいて、この写真は自分ではない。この日は友人と居酒屋に行っており、友人の証言もとれる。妻は他に証拠を持っていないはずだから、不倫していないとの主張を貫いてくださいという場合。

②夫が、この写真は自分である。でも、写真の男は横顔だから、必ずしも自分とは特定できないはずだ。この日友人と居酒屋で飲んでいたと嘘の証言をしてくれる友人もいる。このまま不倫していないとの主張を貫いてくださいという場合。



①、②ともに、こんな夫の要請に応じてはダメだと思いますし、②なんて特に問題外だと思うのですよね。②なんて、裁判所に誤った判断をさせるために、弁護士が積極的に加担するわけですから…。にもかかわらず、会場の回答結果は、5%の弁護士が問題ないとの結果。その主な理由として、本人の意向を尊重すべきであるとのこと。この場合の本人の意向って、裁判所を騙してくれっていうものなんですがね。こんな弁護士が少しでもいるというのには、驚きでした。

で、①

これは一応、相手の証拠だけからでは不倫の事実は認定できないのかもしれませんが、これもダメです。これも、弁護士が本来負ける事件であることを知りながら、真実でないことを主張しようとする依頼者に加担するわけですから。

弁護士職務基本規程5条には、弁護士の真実義務というのが定められています。刑事事件においては、同規程の82条1項後段で、第5条の解釈適用について、被疑者・被告人の防御等の観点から修正が入りますが、民事事件ではそのような修正は入りませんので、民事事件においては、裁判所に嘘をついて勝とうという依頼者に一切協力すべきではないのです。

パネリストは、辞任せざるを得ない等、きわめて常識的なことをお話になっていましたが、

この①の会場の回答結果…

なんと、30%以上が問題ないとの回答をしていました。これは驚愕の字でした。訴訟の途中からとは言え、また、必ずしも積極的にではないにせよ、依頼人が嘘をついて裁判に勝とうとしているのに加担するわけですから。

このような意識の弁護士が30%以上もいるということが分かったので、今後は心構えを新たにしなければいけないと思いました。相手方弁護士が真実でないことを分かった上で弁護活動をしていることが判明した場合には、厳しい対処をしないといけないとも思いました。

私は、司法修習生に弁護士倫理の講義をする関係上、弁護士職務基本規程やその解説を読み込んだりしているのですが、一人で勉強していても、他の弁護士の感覚は分かりませんので、今回のような集合研修は、ある意味有意義な研修でした。



ご参考

弁護士職務基本規程

(信義誠実)

第5条 弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。

(偽証のそそのかし)

第75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

(解釈適用指針)

第82条 この規程は弁護士の職務の多様性と個別性にかんがみその自由と独立を不当に侵すことのないよう実質的に解釈し適用しなければならない。第五条の解釈適用に当たって、刑事弁護においては、被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護権を侵害することのないように留意しなければならない。