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弁護士 久保田 庸央
2021.11.17

民事裁判の終わり方

 民事上の紛争がこじれて、交渉でも解決しないときには、法的手続をとることが多くあります。
 その場合、民事調停や民事裁判のような法的手続をとることになります。
 
 民事調停は裁判所を使った話合いです。話し合いとはいえ、裁判所が関与する前の交渉では解決していないことが多いので、直接言い合いをしても通常は解決するはずはありません。通常は、裁判所にいる調停委員という役職の方に、それぞれが言い分を交互に主張して、間接的に話し合いを進めて行くということになります。調停で話し合いが成立した場合は、その成立した内容について判決と同様の効果(強制執行ができるなど)があるため、大きな効果があります。

 民事裁判となった場合。
 この場合、多くの方は、判決となることをイメージするものと思います。
 しかしながら、裁判となっても判決に至るのはむしろ少数派で、多くの事件は和解によって解決しています。裁判所から解決案が示されるなどして、条件を整えて、事件を終わらせるのです。
 「和解」という名前はついていますが、「裁判上の和解」という法律用語で、条件を整えて裁判を終了させるという程度の意味しかなく、仲直りの意味は含みません。
 かつては、和解による離婚は制度上できなかったので、和解に仲直り的な意味を含むというような誤解があったのかもしれませんが、現在では、純粋に裁判を終わらせるという程度の意味しかありません。
 判決になった場合、日本の裁判では三審制がとられており、一審の判決に対しては不服申立として控訴ができ、二審の審理に入ります。ですので、判決となった場合は、それが最終解決とは限りません。
 他方で、和解となった場合、双方とも不服申し立てができないので、最終解決となります。早期解決となりますし、上級審で判断が覆る等のリスクを回避することができ、一般的には判決よりも優れた解決方法ということができるものと思います。
 判決に至る場合は、通常、裁判所による解決案の提示にもかかわらず和解が成立しなかったというプロセスを踏んでおり、解決案を提示した同じ裁判体が判決をする以上、判決の内容に双方が納得することは考えにくく、多くの場合は控訴となってしまうという意味でも、和解は即時に最終解決となってメリットは大きいものと思います。もちろん、早期解決等のメリットだけでなく、解決案の内容も踏まえて、総合的に当事者の利益になる場合のみ、和解をするべきであるというのは当然の前提です。

 裁判は、以上のような裁判上の和解か判決で終わるのがほとんどです。

 そのほか、裁判の終了原因には、請求の放棄、請求の認諾というのがあります。
 請求の放棄は、原告が自分の請求権をないものとして確定させることを言い、請求の認諾は、被告が原告の請求を受け入れるというものです。このような解決は、極めて少数でほとんどありません。請求の認諾的なものであっても、分割払いとするとか、一部遅延損害金をカットするなどして、裁判上の和解として解決されるものがほとんどです。

 数は多くはありませんが、訴えの取下げというのもあります。請求の放棄は、原告の請求権がないことを確定させるのに対し、訴えの取下げは、単に裁判をやめるだけで、請求権がないことが確定するわけではありません。
 何らかの事情で、裁判を維持すべきではないことになったときに、請求の放棄では請求権がないことまで確定してしまうので、訴えの取下げをするというのが一般です。
 訴えの取下げは、単に裁判をやめるだけなので、制度上は、もう一度訴えること(再訴)もできます。被告は、判決で勝ち切れば、原告の請求権がないということが確定するので、被告としては、訴えが取り下げられるよりも、判決で勝ち切る方が有利であるということは言えます。ですので、訴えの取下げは、被告の同意が必要ということになっています。普通は、一旦は裁判をやめるという選択をしている以上、もう一度訴えられるということはほとんどないですし、判決で勝ち切るには時間も労力もかかるので、同意をするのが通常です。

 ある時、同一の依頼者との間で法テラスを利用して複数案件を取り扱っている事件がありました。法テラスは、一定の資力基準のもと、弁護士費用を立替えてくれるところです。ただし、あくまで立替なので依頼者は法テラスに分割返済をする必要があります。また、事件の相手から損害賠償金等を受領した場合にはその賠償金の中からまとめて返済する必要があり、相手から支払を受ける場合には弁護士が一旦預かることを始め、色々な指示を出してきます。
 上記の複数案件では、一部の事件が先に解決して、相手から支払を受けていました。別件として訴訟を提起していましたが、法テラスが、相手から支払を受けていた金銭を別件の訴訟が終わるまで本人に返してはならないなどという決定をしてきました。これは、これまでに法テラスが立替払いした金額を超えた部分も本人に返すなということであり、一部の事件が先行解決している意味を失わせるものです。
 この方は、これまでも法テラスの不当な決定に対して、異議申立をして是正してもらったということを経験しており、弁護士費用を立替えるなどして支援してもらえるはずの立場の法テラスから再びはしごを外されるようなことをされ、うんざりしていました。協議の結果、もはや法テラスを相手にどうこうすることはしないということで、法テラスに対する異議申し立てはしないこととなりました。そして、別件の訴訟は相手の争い方から、時間がかかることが想定されていたので、依頼者に直ちに返金するために別件訴訟をとりやめることにしました。
 そこで、訴えの取下げをしたのでした。
 これで、被告が同意してすんなり終わるはずだったのですが、相手の代理人から電話があり、どうしたのかと。
 取下げの実情をあまり話すわけにはいきませんが、再訴のリスクを勝手に感じ取り、不同意にされては面倒なので、訴えの取下げによって裁判が終わったあとは、私が関与することはない旨の話をしておきました。
 すると、予想に反し、訴えの取下げには不同意。これで裁判が続くことになります。
 おそらく、その後裁判が続いた場合に弁護士が関与することはないから、勝ち切れるという読みによるものだと思います。
 これに対し、裁判を直ちに終わらせることを重視するのであれば、請求を放棄するという方法もありますし、裁判をそのまま継続させるとしても、法テラスをとりやめることにして弁護士費用の支払をしないことにしている以上、私が代理人として関与し続ける筋合いもありません。
 ただ、事件の他方当事者に上記のような問い合わせをすること自体、あまり好ましいものとは思われず、さらに、一定の話を聞いているのに、通常と異なる対応をするというのは、信義に反する行為であると思います。
 単に、取下げに不同意であっただけであれば、請求の放棄をするか、その後の裁判手続きはご自身で対応されるよう助言して、事件から離れますが、このような仕打ちを受けて、黙っているわけにも参りません。幸いにして、この案件は依頼者との信頼関係が毀損しているのではなく、法テラスの不当な決定が取下げの原因でしたから、法テラスの利用を取りやめて、裁判をするための着手金をゼロにして、裁判の方は仕切り直すことに致しました。
 手続は進んで…。
 当事者尋問が終わりました。この段階では、裁判所は証拠も出揃っており、ほぼ判決を下せる状況になっており、当事者も出頭していることから、裁判所から和解案を提示されることが多いです。
 裁判所からの和解案は、相手に支払をさせる方向の内容でした。
 相手は支払条件に拘り、長期の分割払にはなってしまいましたが、和解が成立。しっかりと勝ち切りました。
 訴えの取下げに同意していれば、相手に支払いが発生するという結果にはなりませんでした。相手がどのような意図であったのかは分かり兼ねますが、果たして単なる結果論なのでしょうか。