弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2020.01.30

「1枚の絵」

「1枚の絵」

一体何のことかと思われるかもしれませんね。
先日、釧路管内の小学校に赴き、6年生を対象に弁護士の仕事についてお話するという機会がありました。そのときにも6年生たちに「1枚の絵」を見せました。

「1枚の絵」。それは私が法曹を目指そうと思ったきっかけの一つになった絵です。
正確には絵というより写真あるいはイメージということになりますが「1枚の絵」と言ったほうが格好いいかなと思ってこのような表現を使っています。

小学校の先生からは、6年生に対し、純粋に弁護士の仕事がどのようなものかを伝えてほしいとリクエストされていました。弁護士の仕事は、広汎に渡っているためどうやればうまく伝わるかなと悩みました。裁判と交渉、また、裁判といっても大きく刑事と民事があることは伝えようと思いましたが、高学年とはいえまだ小学生ですので憲法・民法などの詳しいお話をしても退屈でしょう。そこで、なぜ弁護士を目指したのか、また、弁護士になってよかったと思うこと、あるいは弁護士になって一番思い出がある事件等を具体的なエピソードを交えてお話することにしました。ただ、たくさん話しをしても子どもたちからすれば40分授業の一つでしかありませんので、弁護士の仕事を紹介しつつ、子どもたちに伝えたいことを一つに絞り、それを伝えるために「1枚の絵」を活用することにしました。

本番当日、わざとらしく分厚い六法全書を携え、普段身に付けないことが多い弁護士バッジもその日ばかりは目立つようにしっかりと着用していきました。弁護士のバッジが「自由と正義」を意味するひまわりの形をしていること、また、ひまわりの中には、「公正と平等」を意味する天秤が描かれていることという簡単なところから入り、バッジの裏面には弁護士ごとに決められている登録番号が印字されていること、もしバッジを紛失してしまい再びバッジを受けた場合には、二度目だということがわかるように登録番号の横に「再」という漢字が印字されていること、私の身近にも「再」が入っている弁護士仲間がいますなどと軽い話をしながら、なぜ弁護士になろうと思ったのかといった話をしました。

弁護士になろうと思ったのは、以前のコラム(http://www.ak-lawfirm.com/column/269) でも紹介したとおり「都会の森」というテレビドラマを見たのがきっかけでしたが、実は、もう一つのきっかけがあります。それが冒頭に紹介した「1枚の絵」でした。
当時、高校生だった私は、ある先生から「1枚の絵」について聞かれました。
それは次のような絵でした。





先生から、この絵をみてどう思うか、銃を持っている人は悪いか、と質問されました。
先日の授業でもこの絵を使って、小学6年生の皆さんに同じ質問をしました。

そうしたところほとんどの6年生は銃を持っている人が悪い人です、と素直に答えていました。私も高校生だった当時、先日の6年生のみなさんと同様、銃を持って脅している以上、銃を持った人が悪い人ですと答えました。

その答えを聞いた先生は、そうだね、と軽くうなずいた後、
では、次のような場合はどう?と質問してきました。




 銃を持って脅している人の後ろに更に銃を持った人がいました。
 こうなってくると少し話が違います。
 真ん中で銃を持って脅しているだけの人だと思っていたのが、さらにその後ろの人に脅されていた、銃で脅かさないのであれば自分が銃で撃たれてしまうという危険が迫っているということになります。そうしますと単純に真ん中で銃を持っている人が悪いとは言い切れません。このとき私は、物事というのは、見えているものがすべてではなく、多面的に物事を見ないといけないんだなと感じました。見た目だけで判断してはいけないという発想を持ったことがとても新鮮でした。そのときの先生の聞き方が、銃を持った人は罪になるかというようなものだったと記憶しております。法律的な話でいきますと、真ん中の人が罪に問われるかは、緊急避難が成立するかどうかということになりますが、当時、そこまで純粋に法律の話をされたわけではなかったと思います。それでも漠然と法律って面白いかも、って思った記憶があります。それが法曹を目指すきっかけの一つになりました。
 
 さて、今回の小学校の授業では、弁護士の仕事を知ってもらいたいということもありましたが、この授業を通じ、見えているものが全てではないよ、物事を多面的に考えてね、というメッセージを伝えたいと思っていましたので、「1枚の絵」を6年生に見てもらうことにしたのです。
 
 6年生の反応はすごく素直でした。「おお~」「あれっ、後ろに銃を持っている人がいる!」「後ろのやつが悪い!」等と声を出して反応してくれました。授業を終えてから1週間後。私の話を聞いてくれた6年生から感謝の手紙が届きました。1人ずつ丁寧に書いてくれた手紙でした。六法全書の法律を実はほとんど暗記していないと聞いて驚いたとか、冤罪事件の弁護をしたときの話がとてもよかったとかという感想もありましたが、一番多かったのがやはり「1枚の絵」のことでした。ほぼ9割の子がこの絵のことに触れてくれていました。あの絵はすごく印象的だった、何事も決めつけてはいけないと思った等、6年生ながらも私が伝えたかったことを感じ取ってくれたのがわかり本当に嬉しく思いました。
 
 もしまた別の小学校等でお話する機会があればまた同じ用に「1枚の絵」を見せたいなと思います。