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弁護士 久保田 庸央
2019.09.18

幻(?)の令和元年1号事件

 裁判所の事件には、事件番号というのがあり、事件の種類に応じて記号が割当られ、その種類の事件がその年の何番目かという番号が付されます。
 例えば、地方裁判所の一般民事事件は(ワ)の記号が割当られており、釧路地方裁判所の平成30年の一般民事事件の12番目の事件であれば、「釧路地方裁判所平成30年(ワ)第12号」という事件番号となります。
 その年の1番の事件となった場合には、例えば、「釧路地方裁判所平成31年(ワ)第1号」となったりして、少しおめでたい気分になります(ただし、事件処理自体は厳格に行われますから、こんなことを前面に押し出すのは不謹慎であり、心の中にそっとしまっておく必要があります。)。

 ところで、今年は改元がありました。しかも、昭和から平成のときと異なり、改元の時期が予め決まっていました。

 そうです。少し不謹慎ではありますが、記念すべき令和元年度の1号事件をゲットできるのではないかと…。

 平成31年4月に、裁判所に問い合わせを致しました。
 改元に伴って事件番号はどうするのかと。
 「通算します。」

 少しがっかりしましたが、当たり前の話です。4カ月と8か月で分けていれば、統計も取りにくいですし、改元に伴って仕切り直しする理由もありません。
 ここに、令和元年度1号事件の野望は、脆くも砕け散りました。


 そんな野望など忘れ去られたある日…。

 裁判所の和解調書を眺めていると、「1号」と書いてありました。
 「令和元年(イ)第1号」。

 (イ)って何よ?という話ですが、訴え提起前の和解という手続です。

 裁判外の交渉で話がついている状態で、裁判所に申立をして、第1回の期日でいきなり裁判上の和解を成立させる手続きで、即決和解と言ったりもします。
 裁判外で合意書等を交わした場合、合意が破られたとしても、合意書だけでは強制執行はできず、結局、裁判所に訴えを提起して、判決等をもらってから強制執行をしなければなりませんが、この即決和解をしておけば、合意が破られたら、即決和解の調書を使って強制執行ができます。
 他に、いきなり強制執行ができるものとして公正証書がありますが、公正証書の場合は、強制執行ができるのが金銭の請求の場合のみで、それ以外の、例えば、不動産の明け渡しでは強制執行できません。
 即決和解は、不動産の明渡しを伴う合意が裁判外で整いつつも、強制力のある合意にしたいという場合には非常に有効な手続きで、上記の事件は、まさしく、そのような事件でした。
 
 とはいえ、この手続。そんなに利用される手続ではなく、令和になってしばらくして申し立てた事件が、1月から数えても最初の事件であったということになります。

 そう、忘れ去られていた野望が、令和1号の野望が果たされたのです。
 おめでたいのです。

 しかし、これを強調するのは不謹慎ですから、そっと心の中にしまっておくほかありません。

 申立人となった依頼者にも、裁判上の和解の内容の説明はしても、令和元年1号事件となっているという話はしていません。