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弁護士 久保田 庸央
2018.06.21

紛争相手は1人とは限らない?

 原告が訴えて、被告が受けて立つ…。この類型が最も単純な紛争の類型で、原告と被告とが一対一で戦うというものです。

 原告が2人以上を同時に訴えるということもあり、例えば、家賃を滞納した人に対して、借りている家から出て行け、滞納家賃と原状回復の費用を払えという訴訟の際に、保証人に対して、保証人として滞納家賃と原状回復の費用を払えという訴えも同時に起こすというものがあります。
この場合、家賃を滞納した人(賃借人)と保証人が敗訴したならば、今度は、保証人と賃借人とで紛争になることが考えられます。通常は、家賃が滞納されているわけですから、賃借人にはお金がなく、敗訴した結果として、まずは保証人が滞納賃料や原状回復費用を支払うことになります。その後、保証人としては、賃借人の代わりに滞納賃料等を支払ったのですから、最終負担させられる筋合いはなく、求償といって賃借人に対する請求権を持つことになり、保証人と賃借人との間も紛争になり得るということです。

 上記の例は、同時に訴えられて同時に敗訴しているので、賃借人が保証人に対して、支払っていけるのかという支払能力のあるなしだけが問題となります。

 上記と似たようなものですが、他に例えば、賃借人が退去後に、滞納賃料と原状回復の費用を払えという訴訟が提起される場合、どうせ賃借人はお金がないだろうからということで、保証人のみが訴えられることが考えられます。
そして、保証人が敗訴して、滞納賃料と原状回復費用を大家さんに支払った後、賃借人に、「あなたの代わりに払ったから、保証人である私に払ってね。」と言ったときに、問題が生じ得ます。
「同時に訴えられているのと何が違うの?」と思うのが普通の反応だと思いますが、賃借人から、「滞納家賃はあなたに払いますが、原状回復費用は、本来原状回復としては必要のないクロスの張替や畳の張替をあなたがしっかりと争わずに裁判で負けて勝手に払ったものだから、私は払いません。」などと反論されると難儀します。
 実は、裁判というのは、原則として裁判の当事者にしか拘束力がなく、裁判に参加していなかった賃借人には関係ありません。ですので、保証人が賃借人に対して裁判を起こした場合、後の裁判所が、賃借人の言い分の通りの判決を下すことがあり得るのです。
 そうなると、保証人は賃借人の代わりに払う義務があるだけで、最終負担させられる筋合いはないのですが、結果として最終負担させられる羽目にあいます。
では、保証人は、単独で訴えられてしまったときに、どうにかできないのでしょうか。
 この場合は、訴訟告知という方法が有効です。
訴訟告知というのは、「今裁判やっているから参加してね。」という告知を裁判所を通じて行うものです。
 この訴訟告知を受けて、賃借人が裁判に参加すれば、敗訴した責任を賃借人と共同で負うことになるので、後日、保証人から求償されたときに、原状回復の範囲じゃないなどという主張はできなくなります。また、裁判に参加しなかったとしても、参加する機会は確保されていたわけですから、同じように保証人敗訴の責任を共同して負うことになり、やはり、保証人に対して原状回復の範囲じゃないなどという主張はできなくなります。
 家賃を滞納して追い出されている賃借人に対して、求償してもお金がなくて支払ってもらえないというリスクは変わりませんが、大家にも負けて、賃借人にも負けてという二重の敗訴は回避できるので非常に有効な手段です。
 その他にも、配偶者の不倫相手だけ慰謝料の訴えが提起された場合にも、同様の問題が起こります。不倫相手は慰謝料請求訴訟で敗訴したならば、一番悪いはずの不倫した配偶者に対して適切な負担割合の請求をしたくなるでしょう。
 例えば、不倫相手が200万円の慰謝料の支払いを命じられて支払ったあと、不倫した配偶者が8割悪いから160万円を返せと訴えた際に、「いやいや8割悪いのはいいが、慰謝料200万円は払い過ぎで、100万円が妥当だからその8割の80万円しか払わないよ。」なんて反論されてしまったとします。
 訴訟告知をしていれば、慰謝料200万円を前提に、裁判所には、その負担割合を判断してもらうことになるのですが、訴訟告知をしていないと200万円という前提部分まで争われてしまうので、訴訟告知はやはり大事なのです。

 このように、紛争で相手にすべき者は、裁判を起こしている相手1人とは限らず、先のことも考えて、誰を相手にすべきか、誰を巻き込むべきかということも考えなければなりません。

 かなり特殊な処理をした例ですが、いわゆる100:0の完全な被害者の交通事故があり、加害者側の保険会社から、修理の際の代車の単価が高すぎるし、修理の期間も不相当に長すぎるから、修理業者から請求の来ている代車費用の1日の単価は約半分しか払わないし、修理の期間も半分程度しか認めないということで、実際の代車費用の4分の1程度しか認めないというような事件がありました。

 完全な被害事故であり、被害者としても事故に遭った車両と同程度の車両を代車として用意してもらったものであり(若干高額であるという程度で代車として不相応なものを敢えて選んだわけではない。)、事故の発生場所と被害者の居住地が離れていたため、損害箇所の特定に若干時間を要してはいるものの修理期間は被害者のコントロールがきく部分ではなく、被害者に代車の費用の一部でも負担させるのはいかがなものかという事件でした。
 被害者から事件の依頼を受け、保険会社に再考を促しましたが、当初と変わらずでしたので、訴訟を提起することにしました。
 ここでとった手段は、事故の加害者(保険会社側)と修理業者を同時に訴えるというものでした。
修理業者は、保険会社が費用を支払わない態度を見せていたことから、被害者に代車費用の請求書を出すようになっており、私は、保険会社と修理業者を闘わせることを画策したのです。
 事故の加害者に対しては修理業者から来ている請求額の代車費用を払えという訴訟を提起し、同時に、修理業者に対しては代車の単価が不当に高く、修理期間も不相当に長くしたのだから保険会社が言っている金額までしか支払い義務がないという訴えを提起したのです。そして、訴状の中では、加害者と修理業者で適切な代車費用を協議して定めるべきとの指針を述べておきました。
 原告である被害者側の両者に対する裁判の内容は矛盾をはらんでいるものではありましたが、裁判は私が意図しているように進みました。私は、訴状以外の書面は一切提出することはありませんでしたが、加害者の代理人弁護士は従前の保険会社の主張の通りの主張を根拠を含めて書面を提出し、修理業者の代理人弁護士は代車の単価は相当で、修理期間も相当であるとの主張と証拠を提出していました。それに対して、私は、裁判期日で、それぞれの書面や証拠に口を挟み、両者で適切な代車費用で和解が成立するように進めていきました。期日は、何回も重ねることにはなりましたが、最終的には、加害者が一部減額された代車費用を修理業者に直接支払い、被害者は支払関係には一切関係ないという和解が成立し、めでたしめでたしということになりました。

 解決結果の内容は多くの人が妥当であるものとお考えになるものと思いますが、この件で、この結論となるのは、上記の方法しかなかったものと思います。仮に、オーソドックスに加害者に対してのみ損害賠償請求の訴訟を提起したとしても、代車の単価の相当性や修理期間の相当性の立証には難儀するでしょうし、結果として、当初の保険会社の提示よりは高い代車費用が認められても、業者の請求していた代車費用には及ばず、一部は被害者の負担という結果にしかならなかったと思っています。

 上記の処理は極めてレアなものだとは思いますが、依頼人のためには、「通例」というものにとらわれないことも必要になることがあると思っています。