弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2017.11.30

ごめん、勉強します

 弁護士になろうと思ったのは17歳。高校生のときに観た「都会の森」というテレビドラマがきっかけでした。そのことは以前のコラム http://www.ak-lawfirm.com/column/269 に書いているのですが、その後、大学に入り、司法試験の勉強を始めたものの大学での部活動が忙しくなったためすぐに挫折してしまいました。  
 大学4年となり再び司法試験の勉強を始めることにしましたが、真剣度がそこまで高くなかったせいか勉強に身が入らない日々が続いていました。そんな大学4年の秋ころだったと思います。横浜市内のとある小さな、古びた映画館で上映されていた「告発」という映画を観て、真剣に勉強することを決意させられました。一緒に観に行ってくれた女性には、デートで観るような映画ではなかったなと今でも申し訳なく思います。

 「告発」はサンフランシスコ湾に浮かぶ小島、アルカトラズ島にあるアルカトラズ連邦刑務所で起きた実話に基づいて製作された映画(1995年公開)です。
 アルカトラズ連邦刑務所は1963年にすでに閉鎖され、現在は、サンフランシスコの観光名所となっております。かつてはアメリカマフィアの象徴的存在であったアル・カポネも収容された刑務所であり、周囲を海に囲まれ脱獄不可能な刑務所として有名でした。それでも過去には脱獄に成功した囚人がいたとのことです。その脱獄劇が映画化されてもいます(クリント・イーストウッド主演「アルカトラズからの脱出」(1976年))。

 さて、話は「告発」に戻ります。
 アルカトラズ刑務所内で行われた非人道的な虐待を告発するという内容です。それだけでもテーマとして重いのですが、虐待の事実を告発していく過程で描かれる1人の囚人ヘンリーと1人の若き弁護士ジェームズとの交流に強く胸を打たれます。
 ケビン・ベーコンが演じた囚人ヘンリーは既に犯していた罪でアルカトラズ刑務所に25年の刑を受け服役しておりましたが、その服役中にヘンリーが脱獄を試みます。しかし、他の囚人の裏切り行為によって脱獄は失敗してしまいます。そこからが本当の地獄であり、非人道的な生活が始まります。まったく光が当たらない地下牢で3年間もの間、閉じ込められます。地下牢であって部屋と呼べる広さではありません。文字通り地を這うような態勢でしかいられない位の狭さの空間にずっと閉じ込められます。来る日も来る日もいつになったらそこから出られるのかわかりません。
 極限の精神状態の中、ヘンリーは暗闇の中、1日過ぎる毎に、壁に印をつけていました。1日ごとに縦に棒線を4本引いた後、その縦の4本の棒線を横断するような形で横線を引きます。これを一セットとして繰り返し、印を壁に刻み続けました。ちょうど日本語でいえば「正」という漢字を使って数を数える手法と同じです。そうやってヘンリーが刻み続けた日数が1000日近くになっていました。その状況を想像するだけで精神がおかしくなりそうです。それでも何とか地下牢を出た後、刑務所内で食事をしているとき脱獄のときに裏切った囚人を見つけ、突発的その囚人を殺害してしまいました。ヘンリーは服役中に犯してしまったこの殺人罪について新たに裁かれることになります。そのときヘンリーの弁護を担当することになったのがクリスチャン・スレイター演じる新人弁護士ジェームズでした。
 ジェームズはヘンリーと面会しますが、極度の人間不信に陥り、健全な精神状態にはなかったヘンリーはあまり話をしようとはしません。それでもジェームズは何度も足を運びヘンリーとの面会を重ねるうちにヘンリーもジェームズに対し徐々に心を開くようになっていきます。その中で、ジェームズは、ヘンリーが受けてきた刑務所内の虐待の事実を知り絶句します。あまりに非道な虐待が行われているということでヘンリーの裁判の中でジェームズはアルカトラズ連邦刑務所を告発することにしました。
 その結果、世間にもアルカトラズ刑務所の実態が明るみになります。この事件もきっかけとなり、しばらくした後アルカトラズ刑務所は閉鎖に追い込まれます。ヘンリーは、殺人の罪で再度刑務所に送られることとなります。映画ではヘンリーが刑務所に送還されるところをジェームズが見送る場面で終わったという記憶があります。そのときのヘンリー演じるケビン・ベーコンの表情が何ともいえません。一生、自由になることはないという虚脱感を漂わせながらも虐待の事実を社会に公表して刑務副所長を更迭させたことによる満足感をもにじませるその表情はまさに迫真の演技でした。ヘンリー演じたケビン・ベーコンはこの映画で放送映画批評家協会賞の主演男優賞を受賞しました。また、新人弁護士を演じたクリスチャン・スレイターも純粋にかっこよかったです。

 この映画は正直いってしんどいです。何度も観ようとは思いません。私も実際、一回しか観ておりません。それだけ内容が重いのです。それでいて今でも心に残る映画の一つですし、私に、司法試験を真剣に勉強させる決意をさせた大切な映画です。
 このコラムを書いた後に映画のチラシを見返しました。「涙を流す前に、拍手を贈ってください」。あらためて胸に突き刺さります。ケビン・ベーコンやクリスチャン・スレイターが好きな方、法廷物や裁判物の映画でどっしりとした映画を観たい方、是非一度観て戴ければと思います。
 この映画を観終わった後、遊んでいる場合ではないと思い、真剣に司法試験に取り組むようになりました。