弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

ヘッダーイメージ
ご相談の予約・お問い合わせ

釧路本店

概 要
〒085-0017
釧路市幸町6丁目1番地2号AKビル

TEL

0154-32-0515

受付時間

平日9:00~17:00

無料駐車場完備

中標津事務所

概 要
〒086-1128
標津郡中標津町西8条北5丁目1番地13

TEL

0153-72-8121

受付時間

平日9:00~17:00

無料駐車場完備

釧路弁護士会バナー 法テラスバナー 勤務弁護士募集
弁護士 久保田 庸央
2017.10.18

刑の下限を下回る判決って・・・

 犯罪を犯したとして刑事裁判にかけられた場合、有罪となれば、法律で定められた刑の範囲内で、刑罰が言い渡されます。

 例えば、万引き。
 これは窃盗罪で、刑法235条で、10年以下の懲役、又は、50万円以下の罰金と定められているので、懲役刑か罰金刑のいずれかが選択された上で、定められた範囲で刑が言い渡されます。万引きくらいだと、刑事裁判になっていたとしても、懲役8年とか9年とされることはあまり考えられず、懲役10カ月とか、1年など刑の下限近くで処罰されることがほとんどです。
 さらに、懲役刑を科されるのが初めてであれば、執行猶予と言って、刑罰の言い渡しを受けても刑務所に行くのではなく、執行猶予期間中、社会内で更生をはかるという判決が言い渡されることがほとんどです。例えば、懲役1年、執行猶予3年という判決が言い渡された場合、3年間は社会内で更生をはかり、その間、犯罪等の問題がなければ、刑務所に行かなくてよく、逆に、その間に、犯罪等を犯した場合は、言い渡された1年懲役に服するということになります(実際は、執行猶予取消による懲役1年と後の犯罪で言い渡される懲役とをあわせて服役することになるので、全体として、服役期間はかなり長くなります。)。

 法律で定められる刑の多くは、「懲役〇〇年以下」というものです。
 先ほどの窃盗罪も10年以下となっていますし、人に怪我をさせた場合の傷害罪も刑法204条で、15年以下の懲役、又は、50万円以下の罰金と定められています。
 しかし、一定の重大犯罪の場合は、「〇〇以上〇〇年以下の懲役」とか「〇〇年以上の懲役」というように、刑の下限が「~以上」と定められています。
 最も重大な犯罪の一つである殺人罪は、刑法199条で、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役と定められているように、最低でも懲役5年と定められているのです。

 他にも、強盗致傷罪という犯罪がありますが、刑法240条で、無期又は6年以上の懲役と定められています。強盗の際に人に怪我をさせたという犯罪で、非常に重たい刑が定められており、最低6年の懲役となっているのです。
 でも、実際に、この罪で言い渡される刑は、懲役3年とか4年、5年というものが何割も占めています。中には、懲役3年で執行猶予がついているものもあります。
 最低6年なのになぜ?というのが普通の感覚だと思いますが、そのような刑の言い渡しも違法なものではありません。
 酌量減軽というものがあり、刑法66条で、情状に酌量すべきものがあるときはその刑を減軽することができるとされているのです。酌量減軽された場合は、刑の下限を半分にすることができます。なので、最低6年であれば、半分の最低3年までの刑を言い渡すことができるのです。
 そして、実際のところ、最低刑が懲役6年とか7年などという一定の重い犯罪については、相当な割合で酌量減軽されており、事実上、刑の下限の半分になっている状態と言っても過言ではありません。上記の強盗致傷罪であれば、6年以上の懲役と定められていますが、3年以上の懲役の範囲で刑が定められている実情にあるということです。
 
 そのような犯罪類型の弁護をするときは、当然、酌量減軽も踏まえて弁護活動をするのですが、刑の下限が定められているのに、その下限が簡単に破られるのであれば、そもそも法定刑がおかしいのではないかと思います。酌量減軽が多く適用されている実情にある犯罪については、法定刑の下限を下げて、本当に特別な場合に限って酌量減軽するというのが、法律で刑の範囲を定めるという趣旨に合致する手法だと思います。