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弁護士 久保田 庸央
2017.08.23

面会交流の実際

 夫婦に子供がいて離婚すると、子供が未成年者であれば、夫婦の一方を親権者と指定します。
そして、親権者とならなかった方の親と子供が定期的に会うという合意をすることが多くあります。このように親権者や監護権者とならなかった親と子供とが会ったりすることを面会交流と言います。

 面会交流は、離婚の話し合いの際に離婚の条件として問題となったり、離婚後に面会交流だけ問題とされたり、離婚前に別居している場合に監護していない親から面会交流が要求されるなどして問題となります。

 面会交流は、主に親権者等ではない親から請求されますので、親の権利という側面はないわけではありませんが、子供の権利と考えられています。
 民法766条1項には、面会交流のことが定められ、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされています。

 しかしながら、夫婦はこれから離婚したり、既に離婚しているわけですから、夫婦間の信頼関係は通常はありません。特に、裁判所や弁護士が関与するところまでいっている離婚事件では、双方が感情的になっていることの方が多いくらいです。
 双方の親から愛情を感じられる方が子供のためになるというようには中々思えないというのも致し方ない面もあります。
 親権者となったり、監護していたりというのは母親側が多く、父親側から面会交流が求められるという類型が多くあります(以下は、面会交流を求める側を父親側として話を進めていきます。)。事件となるのは、母親側が子供が拒否している等の理由で面会交流を拒否するような場合です。
 余程のことがない限り、子供は父親も母親も好きというのが普通であろうと思われます。子供が面会交流を拒否しているとしても、子供が母親の顔色を窺ってそのようなことを言っている場合もあり、また、父親が育児にあまり関与してこなかったから子供が面食らってしまう等言っていても杞憂であることが多いものと思われます。
 このような普通の事件では、家庭裁判所で試行的面会交流というのが行われ、問題がないとして、面会交流の合意が成立するという流れとなることが多いです。
 家庭裁判所には、おもちゃとかが置いてあって、試験的に面会交流を行う場所があり、そこで、お試しの面会交流をするのです。そして、多くの母親の不安に反し、試行的面会交流はうまくいきます。そうすると、特に問題はないため、面会交流の中身を検討することになるのです。稀に、試行的面会交流がうまくいかないときがあり、その時は面会交流はしない方向も検討されることになります。

 ところで、上記のような普通の事件は、面会交流を実施することの不安等が解消され、双方が一定の信頼関係を築くことができればよく、その方向で円滑に面会交流を実施すればよいのです。
 しかし、現在の裁判所は、半ば盲目的に面会交流を実施しようとします(私にはそのように見えます。)。面会交流が子供の福祉にそぐわない場合は認められないはずですが、子供の前で父親が母親に暴力を振るっている事件であったり、躾と称して暴力が振るわれていて顔が赤くなっている写真を証拠提出した事件であったり、実刑前科があって離婚時にも勤務先から横領の責任追及がなされているという事件のような、面会交流の実施は子供の利益にならないのではないかという事件でも面会交流を行う方向で手続を進めようとします。
 必ずしも両親が揃っている子供ばかりではないのですから、他方配偶者がいるからといって、何でもかんでも認めなくてもよいのではないかと思います。
 先週の8月16日、兵庫県伊丹市の面会交流中の無理心中事件で、父親が被疑者死亡で書類送検されたようです。報道によれば、裁判所で認められた離婚後初めての面会交流だったようです。少なくとも、結果からは面会交流を認めたことは大失敗だったわけです。裁判手続中に全く不審な点が見当たらなかったのかもしれませんが、面会交流が本当に子供のためになるのかについて、一度立ち止まって検討すべき事件も少なくないものと思います。

 「俺が楽しくなかったから今回の面会交流は回数にカウントしない」などという、面会交流が子供の権利というところを全くはき違えた事件も見たこともあります。
 当事者も裁判所も弁護士も、面会交流について、真に子供の利益になるように考えていくことが必要だと思います。