弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 久保田 庸央
2017.06.22

不当訴訟は逆に損害賠償請求?

裁判所から訴状と呼出状が届きました…

訴えられたということでのご相談です。

この訴状に書いてあることは、全部でたらめなんです…

訴えられた方としては、訴状で要求されていることはおかしいんだとして、ご相談に訪れているということです。さすがに、どんなにでたらめでも、原告と被告の名前くらいは間違っていないとは思いますが、訴えられる筋合いがないと思っている方としては、そのくらいのお気持ちでしょう。

それでも、裁判所に訴えが提起されている以上は、裁判を完全に無視するようなことをすれば、原告の言い分通りの判決が下されてしまいますから、訴えに対しては、きちんと対処する必要があります。

きちんと対処した結果、依頼者の仰る通り、訴えられる筋合いがないということであれば、原告の要求を認めないという判決が下されることになります。

依頼者の方は、裁判手続中は必死で、裁判そのものに集中していますが、判決が下されたあたりでは、自分に対する訴えは、不当訴訟だったのではないかとお考えになることがあり、判決後に、そのようなご質問を受けることは多くあります(訴訟の入り口段階で聞かれることもありますが…。)。

不当訴訟に関しては、以下のような最高裁判決(昭和63年1月26日)があります。

「民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。」

訴えることが違法になるのは、負けると分かっていたのに敢えて訴えたなどのやり過ぎな場合に限られるということで、かなり限定的であることが分かります。

被告側が裁判に勝ったとしても、原告に対して、逆に不当訴訟として損害賠償請求をするのは中々難しいということです。

上記最高裁判決は、憲法上保障されている裁判を受ける権利に重きをおき、訴えを提起すること自体は原則として正当な行為で、ただ、実際に裁判に巻き込まれる人が不当な負担を強いられるというのはよろしくないので、限定的に例外を認めるということになってます。

理屈の上では当然かと思いますが、実際に訴えられた人からすれば、釈然としないかもしれません。

しかしここは、裁判所にこちらの言い分が認められたことでよしとして、祝杯でもあげて喜びましょう。

その方が精神衛生上もいいはずです。