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弁護士 久保田 庸央
2017.02.22

付け焼刃の対策は危険。残業代訴訟

最近は、ブラック企業という言葉をよく耳にします。

ブラック企業では長時間労働や、サービス残業は当たり前。

従業員からすれば、残業をしたのであれば当然残業代を払ってもらうべきですが、中々在職中に残業代を請求するのが難しかったりします。そのため、紛争になるのは、従業員が退職した後に過去の残業代を請求するというものが多く、裁判に発展することも多くあります。

では、この残業代の裁判。どちらに分があるでしょうか。

それは圧倒的に従業員側です。

もちろん、一点の曇りもなく残業代の支払がなされているというのであれば、そもそも紛争になるはずはなく、ここで裁判になっているのは、残業代を支払っていないとか、残業代に関する就業規則等の規定に疑義がある場合です。

いざ、残業代の裁判が起こると、企業側が、この従業員は成果を上げていないとか、勤務時間中にスマホをいじってサボっていた等の主張がなされることがあります。

しかし、こんな主張は残業代の訴訟においては、法的意味のない無駄な主張ということになります。

ですから、残業代をそもそも払っていないとか、一定の時間数の分しか払っていないというのであれば、企業側は勝負になりません。

また、残業する場合の事前申請がなければ残業代は払わない(残業を認めない)という制度を採用しているところ、従業員から事前申請がないから、残業代は払わないという主張がなされることもあります。

これも、実際に残業をしていたのであれば、ほとんど意味をなさない主張です。

要するに、従業員に仕事をさせていたと評価されるような場合には、残業代を払えということです。

では、企業側に対策はないのかということになりますが、従業員にサービス残業させる方法はありません。また、残業代を不当に払ったことにするということもできません。

あるとすれば、残業が不要になるように、業務を徹底管理して残業時間を減らすことくらいです。これも、到底勤務時間内に終わらないような業務量を課しておいて、ただ従業員を帰らせて、従業員は実は帰宅後に業務をしていたというのであれば、やはり残業代は発生しますので、名実共に残業をさせないことが重要となります。

また、賞与等の通常法的には支払義務のないものを削って、残業代の原資にあてるという方法もありますが、従業員のモチベーションとの関係で難しいこともあるかもしれません。

ところで、基本給に残業代を含んでいるなどという主張が企業側からなされることがあります。給与明細にその旨が記載されていたり、就業規則にそのような趣旨の規定がおかれていたり。

これは、弁護士から見れば、最低の対策です。

それまで残業代を払ってこなかった企業が、しれっと給与明細にそのような記載を始めたような、残業代を払っているかのような形式を整えただけの企業は、最低の企業ですから、こっ酷く裁判で負ければいいです。

そうではなくて、これからは残業代を払うという趣旨で、例えば、基本給をいくらか上げて、基本給には残業代を含んでいるというような制度にした場合を弁護士から見れば最低の対策と言っています。

この場合、基本給をいくらか上げているわけなので、企業側の姿勢もそれほど悪くないし、従業員も実際にもらえる金額が増えるわけなので、従業員にとってもそれほど悪くはないと言えます。どんなに残業しても、それ以上は払わないという姿勢が見え隠れするので、いくらか基本給を上げたことで、一切残業代を支払わなくて済むというのではいかがなものとは思いますが、基本給を上げた分くらいは残業代の支払と認めてもよさそうです。

しかし、この場合、基本給を上げた分が残業代の支払と認められないだけでなく、基本給を上げた部分も基本給そのものと扱われ、残業代の時間単価が上がるということになります。例えば、基本給20万円で1カ月200時間の勤務だとすると(分かりやすく数字を設定しています)、1時間あたり1000円ですので、残業代の時間単価は25%増しの1250円となります。それを、残業代を含むものとして基本給を24万円にすると、1時間あたり1200円となり、残業代の時間単価が25%増しの1500円となるのです。

残業代の支払と認められないばかりか、残業代の時間単価が上がり、未払い残業代の金額が上がるというダブルパンチを受けることになります。

さらに、退職者への未払の残業代の遅延損害金は年14.6%つくことになりますし、裁判所は残業代のほかに、付加金という特別の制裁金(最大で未払金と同額)を課すことができ、付加金によって残業代が2倍に膨れ上がることもあり、とんでもないことになり得ます。

このような付け焼刃の対策は不十分であるばかりか、返って有害にもなるわけで最低の対策ということになります。

一定の財政出動をして、残業代対策をとるのであれば、逆効果とならないよう、きちんとした専門家に相談することが必要です。