弁護士 久保田 庸央
2016.03.17

両方青の交通事故?

当たり前のことですが、信号の色は、青 → 黄 → 赤 → 青と変化します。

信号の動きを簡単に示すと

      青 → 黄 → 赤   赤   赤   赤 → 青

交差道路  赤   赤   赤 → 青 → 黄 → 赤   赤

となるわけです。

ご覧頂けば分かることですが、信号は赤が一番長く、全体が赤となっている時間もあるということです。全体が黄色だったり、全体が青であったりということはありません。全体が青なんてことがあったら、車はぶつかり放題になってしまいます。

ところが、現実の交通事故では、信号のある交差点での直進車同士の出合い頭の事故で、双方とも信号が青だと主張することが結構あります。

物理的にはあり得ないので、どちらかが嘘をついていたり、勘違いしているということになります。

そして、どちらかが赤信号無視をしていることになるので、赤信号無視をした方が相手方の損害を全て賠償しなければならないことになります。

どちらかが完全に負けることになることもあり、話し合いでの解決は中々難しく、裁判で白黒決着をつけることになることが多いものと思います。

裁判では、目撃者の証言や信号のサイクル表等で、決め手になる証拠があれば、その証拠で決着がつくことになります。特に、決め手になるものがなければ、当事者のお話を聞いてどちらが信用できるのかという観点で判断されることもあります。

しかしながら、審理の結果、裁判所にもよく分からないということもあります。

この場合、裁判のルールで、証明責任を負っている側が負けることになっています。証明責任は、通常は、請求する側が負っており、相手が赤信号無視をしたということが証明できなかったのだから、請求は認めませんよということになるのです。

お互いに相手が信号無視をしたとして訴え合っていた場合、請求側が両方とも負けるということになるのです。

ただし、交通事故で怪我をしたり、死亡してしまったという人の体に関する損害(人損)の場合は、法律で証明責任を逆側に負わせています。人損の場合は、怪我等をさせた側は、自分が悪くないことを証明しないと支払を免れられません。裁判所がどちらが赤信号無視したか分からないという場合は、怪我等に関する損害は、お互いに認められるということになります。

両方負けたり、両方勝ったりというのは、通常の感覚からすると妙な結論です。実際に裁判をやっていると、当事者のどちらかが嘘をついているようには見えない場合も多くあります。ですが、真実はどこかにあるはずで、本当は相手が悪いのに証明できないから裁判に負けるとか、余計な紛争に巻き込まれるということがないようにドライブレコーダーを搭載するというのは一つの防衛策かもしれません。

今後、機会があれば、証明責任が勝敗を分けた交通事故の裁判についてコラムを書きたいと思います。