弁護士 荒井 剛
2014.08.21

飲酒運転がなかなか減りません・・・

薬物や飲酒運転による人の死傷事故が後を絶ちません。

本当に悲しいことです。



今年の5月に、自動車運転処罰法が施行され、

薬物や飲酒による影響で運転に支障を生じるおそれがある

状態で運転して事故を起こして人を死傷させた場合には

懲役15年以下の刑を科すことが可能になりました。



ニュースでよく取り上げられたため、

あらためて繰り返す必要はないかもしれませんが、

これまでは薬物・飲酒のせいで実際に

「正常な運転が困難」な状態で車を運転していた

ことを立証できなければ、危険運転致傷罪にならないと

言われていました。



それではあんまりだろということで、

すこし適用可能な条件を緩めたということです。

つまり、実際、運転が困難だったかではなく、

運転に支障を生じるおそれがあるといえれば適用になります。

もちろん、実際に正常な運転が困難な状態であることまで

立証できる場合にはさらに重い刑にはなります。



ただ、こうやって法律を改正し、薬物・飲酒運転に対し、

厳罰を科すようにしてもこのような事故が

なくなるわけではありません・・・。



先日、小樽のビーチ近くで発生した飲酒による死傷事故。

結局、検察側は危険運転致死傷罪の適用を見送りました。

あくまで酒気帯びでの過失運転致死傷罪で起訴しました。

酒気帯びとはいえあくまで過失運転致死傷罪なので

7年以下の懲役になります。

ちなみに危険運転致死傷罪が適用になると

20年もしくは15年以下の懲役になります。



検察が危険運転致死傷罪での起訴を見送ったのは、

危険運転致死傷罪に追加された新類型であっても

少なくとも飲酒により「運転に支障を生じるおそれがある」

と認められる必要があるところ

今回のケースでは被告人が事故後にコンビニまで

車を運転して普通に買い物をしていたため

「運転に支障を生じるおそれがある」

とまではいえないと考えたからのようです。



しかし、飲酒していたことは明らかです。

正常値の何倍かの数値も出ていたはずです。

正直、今回のケースで新設された危険運転致死傷罪が

適用にならないのであれば一体何のための改正なのかと

思わざるを得ません。



事故を起こしてもその後しばらく普通に運転していた

という事実があれば危険運転致死傷罪の適用を免れてしまう

ことになってしまいます。



飲酒運転している人の多くは、

自分は飲んでも運転に支障がないと思っていると思います。

実際には、たしかにその人にとって運転に支障がないのかもしれません。

しかし、飲酒運転による事故を防止するためには、

実際に運転に支障を来すか来さないかという基準を用いるべきではないと思います。



飲酒運転後の事故についても単純に飲酒した上で事故を起こしたら

それだけで刑が加重されるような類型が必要だと思います。



小樽の事故が発生した後でも連日のように

飲酒運転の摘発がニュースになっています。



ところで、ある新聞記事によれば飲酒運転で事故を起こした人の4割が

アルコール依存症だということです。



4割というのはかなりの数字になります。

そうすると単純に飲酒による事故の場合に

刑を重たくすればいいという話ではありません。



現在、酒気帯び運転等で免許取消になった後に免許を再取得しようとする際、

2日間の講習が必要とされているようですが、1日目の講習を受けた後、

30日間に亘る飲酒ノートを記録しなければ次の講習を受けられないという

システムになっているようです。



30日間、飲酒の有無、飲酒した場合にはその種類や酒量などを毎日、

記録させるというものです。



毎日、自分の行動を記録させることによって

自分の行動を分析することができます。

また、記録化する過程で飲酒への抑止力が働きます。

抑止力はわずかかもしれませんが飲酒運転撲滅に役に立っていると思いたいですね。