親権取れますか?
離婚がらみの法律相談というのは、事務所でも、法テラスでも、法律相談センターでも比較的多くの相談があります。
離婚問題は、そもそも離婚するのか否か、お子様の親権者をどうするか、養育費は?財産分与は?慰謝料は?年金分割は?と争いとなり得る点が多くあります。
中でもお子様の親権については、多くの方が強い関心をお持ちで、離婚調停や離婚訴訟になった際にも、親権をどちらにするかというのは、よく争点になります。
法律相談の際に、よく質問されるのが、「親権取れますか?」です。
漠然とした質問ではあるのですが、多くの方が想定しているのは、裁判で判決になった場合に親権者がどうなるのかということです。
ただ、この質問に正面からお答えしても、あまり意味があるとは思えません。
意外と思われるかもしれませんが、離婚で裁判までいって、判決までいくというのは、離婚事件の中では割合としてはかなり少ないので、裁判で判決までいく前提の回答だけをしても不十分というほかないのです。
相談者が本当に聞きたいことにお答えするには、相談者にある程度、離婚問題を解決する場合の手続の流れを知っていただく必要があります。
以下、簡単に、手続の流れを、相談者の意思の関与との関係で説明致します。
離婚をする場合のおおまかな流れは、①裁判外での話し合い段階、②離婚調停、③裁判となります。③の裁判は、③-1で和解、③-2で判決とわけてもいいと思います。
①裁判外での話し合い段階は、ご本人が話し合いをされてもいいですし、弁護士を代理人にして交渉をしてもいいです。話し合いですから、こちら側も同意しなければ離婚になりませんし、親権者も決まりません。
相談者の意思との関係では、その意思に反して親権を取られることはないということになります。
②離婚調停の段階はどうでしょうか。
離婚調停は、平たく言えば、裁判所での話し合いです。裁判所でやるので、話し合いが成立すると、その内容は判決を受けた場合と同じ効力があるなど強力な側面はあります。ただし、あくまでも話し合いなので、例えば、親権者が相手方になるような内容に、意思に反して合意する必要はありません。
ここでも、相談者の意思に反して親権を取られることはないということになります。
③次に裁判の段階。
③-1 和解の段階。
ほとんど全ての事件で、判決に至る前に、和解の話があります。
ちなみに、和解というのは、仲直りの意味ではなく、条件を整えて双方の合意で裁判を終わらせるという程度の意味しかありません。双方の合意が必要なので、親権者が相手方になるような内容の和解に応じる必要はありません。
この段階でも、相談者の意思に反して親権を取られることはないということになります。
③-2 最後に判決の段階。
判決では、裁判所が、親権者をどちらにするか、判断を示すことになります。
この段階になって、初めて当事者の意思に反する結果となり得るということになります。
親権を取れるとか取れないという話は、③-2の判決の段階のことを言っているわけで、手続の流れの中の極一部を言っているにすぎないということになります。
もちろん、判決になった場合の見込みが途中の交渉段階や調停段階の合意内容に影響は与えているはずではありますが、それでも合意である以上、不本意な側面があるにせよ、意思に反するということまでは言えないことになります。
なお、①裁判外での交渉はどの程度の件数があるか見当もつきませんが、たくさんあると思われます。②調停事件では、釧路家庭裁判所では、年間に200番以上の事件番号がついています。③裁判は、釧路家庭裁判所では、年間10~20件前後で、7~8割は和解で終わっていると思われ、判決まで至っているのは数件程度と思われます(和解の割合は体感ですが外れてはいないと思います。)。
大分長くなりましたが、以上の流れを踏まえて、親権に限らず、最良の解決は何かを探っていくことになります。