弁護士 久保田 庸央
2013.08.16

JR火災に巻き込まれて

平成25年7月15日午前9時4分。JR北海道の札幌発釧路行きのスーパーおおぞら3号に乗車しました。
この日は、7月12日に根室入りして1泊し、翌13日にとあるシンポジウムの司会をこなし、家に帰る時間もなく、釧路に車を走らせ、最終のスーパーおおぞらで札幌に行き、札幌に2泊した帰りで、既にヘトヘトの状態でした。

JRに乗車して、自分の指定席(3号車3-A)に行くと、何と、既に知らないおばさんが座っていました。こんなヘトヘトの日に、幸先の悪いスタートだなと思いながらも、車掌に席を間違っている人がいるから何とかしてくれと頼みました。

車掌がそのおばさんに声をかけると、そのおばさんは3-Dの座席の乗車券を出しました。
そうそう席が間違ってるんだよと思いながら、3-Dを見ると、そこには別のおじさんが座っていました。いったいどういうことだと思っていると、何とそのおばさんの乗車券3-Dではあるのですが、3号車ではなく4号車。

そのおばさんは、そそくさと席を後にし、私は席を確保しましたが、乗車券とほとんどあわない席に座っていたおばさんに対しては、いったい何を確認して座っているんだこの○○○という汚い感情が芽生えてしまいました。

その後は、順調に進みました。

ところが、新札幌を過ぎたあたりから、雲行きがあやしくなりました。
車内アナウンスで、「計器のトラブルで一旦停止します。」と。

続けて、「火災等の重大な事態にはならないので、どうぞご安心ください。」と。
火災になりそうでも、そうやって言うだろうとは思いながら、あまり深くは考えていなかったところ、車両が停止しました。

少しすると、車内の電気がチカチカし始めました。
接客乗務員が焦った様子で速足で、前方車両の方に向かって行きました。

こりゃ駄目だなと思い、荷物を持たずに避難してくれとか言われたら嫌だなと思っていたら、前方から消火器を持った接客乗務員が、今度は駆け足で帰ってきました。
接客乗務員が私の後方に消えたと思ったら、すぐに「荷物を持って、前方に避難してください。」と接客乗務員が後方から叫んでいる声が聞こえました。

後ろを振り返ると、火が出ているではないですか。

これだけ火災を繰り返すなんて、JRは頭がおかしいのではないかとか思いながらも、仕方がないので、荷物を持って、前方車両に向かって避難を始めました。この時、荷物に気を取られて、乗車券をチケットホルダー(乗車券チェックのためにチケットホルダーにチケットを入れておくことが多く、この日は乗車券チェックの前に車両トラブルに見舞われている。)に忘れて来てしまいました。

そして、1号車の前方に階段が設置され、列車の外に出ることになりました。踏み切りでもない線路は歩きにくいこと、歩きにくいこと。その後どうなるのか分からないまま線路脇で炎天下にさらされることに。

最終的には、反対方向から来た、快速エアポートに階段を付けて線路から直接乗車して、札幌に帰されることになりました。

札幌駅に到着して、混雑の中、払い戻し手続のために窓口を訪れ、車両火災の避難の際に乗車券を忘れて来てしまったと言うと、窓口の職員は、「乗車券がないと払戻しには応じられません。」と言うのです。私は、上記のおばさんのお陰で、自分の指定席番号を正確に記憶していたので、指定席番号を告げると、探して見つかれば払戻に応じると言い、連絡先だけ伝えることになりました。座席番号を言わなかったら、そのまま門前払いにするつもりだったのかとか、本当に探すのか等、いろいろと不満はありましたが、末端職員に何を言っても無駄ですし、旅行代理店から払戻を受けることは可能だろうと思ってはいたので、他のお客さんも控えていますから、すぐに引き下がることにしました。

改札を出るとテレビカメラを持った人と、マイクを持った人がいました。
「NHKですが、スーパーおおぞら3号にご乗車されていましたか?」

「はい。」

「何号車ですか?」
「3号車です。」
「是非ともお話をお聞かせください。」

火元の乗客を見つけたとあって、食いつきのいいこと、いいこと。私も暇だったので、積極的に取材に応じることとしました。

取材後、妻に電話をし、何時に帰れるか分からないことと、NHKのニュースに映ることになるから、テレビを見るようにと伝え、結局、その日は、飛行機で帰り、家に着いたのは、午後7時過ぎになってしまいました。

皮肉を言えば、その日の収穫は、当日は、ニュースが何度も放送され、週末のニュースでも映像が流れたようで、多数の方にテレビ観ましたとお声掛けいただいたことでしょうか。

JR北海道は、事故が頻発し、安全対策が不十分であるのは言うまでもないと思います。加えて、払戻窓口において、火災で避難した乗客が乗車券を保有していないという理由で、門前払いにするような対応もとても褒められたものではありません。

道民の多くはJR北海道を利用せざるを得ないので、JR北海道には、安全対策、事故発生時の対応等真剣に改善に取り組んでもらいたいものです。