弁護士には無縁?後継者問題
2006年の中小企業白書によれば、年間約29万社の廃業企業のうち、約7万社は後継者がいないことを理由とする廃業であると推定され、これだけの雇用が完全に喪失された場合を仮定すると、失われる従業員の雇用は毎年約20万人から35万人に上ると推定されるとされており、中小企業における後継者問題は深刻な状況にあることが分かります。
このような状況を受けて、現在、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が制定され、事業承継に関する相続に関する点、金融支援措置、贈与税や相続税の税金面での一定の手当てがなされています。
では、弁護士の後継者問題はどうでしょうか。
残念ながら、無縁というほかありません。
後継者問題とは、事業を後進に引き継ぎたいが適当な後継者がいないという問題であり、弁護士は、お先真っ暗な弁護士業務を後継者に引き継がせたいとは思わないからです。
弁護士人口の無茶な激増により、弁護士の職業としての魅力は地に落ちてしまいました。弁護士の就職難がよく報道されるほか、最近は、年収100万円以下の弁護士が2割という報道がなされました。インターネットで、「弁護士 就職難」とか「弁護士 100万円」とか「弁護士 70万円」などと検索すれば、弁護士業界の惨状がたくさんヒットします。
しかも、現在は司法試験を受けるために、法科大学院を出なければならず、法曹志願者は何百万円もの関所料(授業料)も負担しなければならず、普通の経済感覚を持った方であれば志願しないのは当然であり、法曹志願者は激減しています。今年の法科大学院の入学者は2698名で、ピーク時の半数以下となってしまっています。これでは、政府の司法試験の合格人数年間3000人という目標には、法科大学院修了者全員を司法試験に合格させてもまだ足りないということになり、政策が完全に誤りであったということは明らかでしょう。
法曹養成のあり方については、法曹養成制度検討会議の「中間的取りまとめ」が出されました。既に現実味がなくなった目標3000人の撤回以外は現状維持というような不十分な内容ですが、この「中間的取りまとめ」に対しては、パブリックコメントが募集されています。既に、手遅れの感は否めませんが、弁護士に後継者問題は無縁などという自虐的なコラムを書かなくてすむように、期限は迫っていますが、私も意見を出しておこうと思います。