弁護士 久保田 庸央
2013.02.08

都会からの食い扶持確保のための出張相談?

近年、東京や札幌等の遠方の弁護士、司法書士による債務整理のチラシを目にする機会が多くなりました。わざわざ釧路まで出張してきて、無料の法律相談会をやるというものです。



借金の問題は、債務者が自殺に追い込まれたり、借金返済のために犯罪に手を染めてしまったりと重大な問題を含んでおり、弁護士を利用する側から見て、借金問題の解決のために、法律相談等のチャンネルが多くなることはいいことです。一見すれば、上記の無料相談会は大変素晴らしい企画ということになります。



しかしながら、実際はそうではないように思います。

日弁連で債務整理の報酬の上限が定められる前は、過払金の報酬が回収額の50%を超えるものが散見され、明らかに暴利行為という事例も何回も目にしました。このような事例は、遠方の弁護士に依頼はしてみたものの、その後の対応等に不安を感じて、再度別の弁護士に相談するような例外的な場合に発覚するので、氷山の一角であろうと思います。

また、手間がかかりそうな破産事件などは、無料相談会には行ったものの、「この事件は地元の弁護士にやってもらってください。」と言われましたというものは、かなりの頻度で目にします。ひどい時には、出張相談で事件受任した弁護士が事件処理できなくなり、その弁護士の(都会の)所属弁護士会から、地元の弁護士で対応してくださいなんてのもありました。



どの事務所で、どういう対応をしているのかは存じ上げませんが、少なくとも私の目には、事件あさりをしに来ているようにしか見えません。実際問題として、チラシに多額の費用をかけ、わざわざ飛行機に乗って、宿泊までして、莫大な経費をかけるのですから、採算のとれる事件ばかり選んで受任するというのは、自然な流れということになろうかと思います。

また、債務整理の事件処理というのは、途中から方針変更もあり得るもので、そういった時には、面談による打ち合わせをすることは、おそらく不可能で、ぞんざいな事件処理にならざるを得ないのであろうと思っています。



北海道新聞の平成25年2月2日の夕刊に、「首都圏弁護士道内に次々」「商機求め相談会」という記事が掲載されていましたその記事には、「2年前に独立し事務所を開いた東京の若手弁護士の一人は昨年6~12月、相談会を札幌で6回、帯広で1回開いた。理由は『東京の競争が厳しいから』。」と記載されていました。

都会の競争であぶれた弁護士が食い扶持を求めて、相談会を開催しているということのようです。また、記者の目にも、「商機求め」とある通り、多重債務者救済の観点からの相談会というよりは、弁護士の側からのビジネス視点での相談会と映っているようです。



上記北海道新聞の記事が、相談会の実際を正確に表しているとすれば、そのような相談会は利用しない方がよさそうです。