弁護士 久保田 庸央
2013.01.29

覚せい剤と生活保護

これまで、国選・私選の刑事弁護事件、被疑者弁護事件等、大部分が国選弁護事件が占めますが、200件以上の刑事事件を担当してきました。中でも、覚せい剤の自己使用については、件数が多く、数十件の事件を担当してきました。

その時に、漠然と思っていたことは、覚せい剤事件の被告人には、生活保護受給者であることが結構多いなということです。

札幌中央署で昨年1年間で覚せい剤事件で検挙した81名中、28名が生活保護受給者であったとの報道が最近なされました。また、ここ釧路でも、過去間で延べ57名が覚せい剤事件で検挙され、生活保護の支給が停止されたとの報道が昨年なされました。

残念ながら、私が漠然と抱いていた感覚はどうやら間違いではなかったようです。

ところで、生活保護費で覚せい剤を買うということは、その支給の前提となる税金が反社会勢力に流れるということを意味します。

検察側が、そのことを厳罰に処すべき理由として指摘したのはあまり見たことがなく、覚せい剤の購入原資が生活保護費であることで、他の場合と比較して重く処罰される傾向はないと思いますが、社会としては大きな問題なのではないかと思うのです。



最近、何かと生活保護がやり玉に挙げられますが、生活保護制度は最後のセーフティーネットとなる大変重要な制度です。生活保護を必要とする方が、不必要に肩身の狭い思いをしたり、窓口の水際作戦等の不当な行為により受給できなかったりというのは絶対に避けなければなりません。

おそらく少数派と思われる不正受給者や上記のような保護費で覚せい剤を購入するような問題行動により、問題のない多くの方が迷惑しているものと思います。生活保護制度の信頼のためにも、さすがに保護費での覚せい剤購入だけは何とかならないものでしょうか。