弁護士 鍛冶 孝亮
2012.06.06

防犯の必要性

釧路市の生活情報が紹介されている生活情報マガジン月刊fit5月号を読んでいたら、釧路警察署の特集ページを発見しました。

この特集ページでは、車上ねらいが多発していることや、「侵入窃盗」というキーワードを紹介し、釧路で侵入窃盗(いわゆる空き巣)が発生する理由の1つとして、「釧路人はなぜか鍵を掛けない傾向があること」を指摘し、施錠は最低限しなければならないこと、警報器を設置するなどの防犯対策をとるべきであることなどが記載されていました。

犯人が逮捕されたからといって、盗まれたお金や物が、被害者の方へ当然に戻ってくるわけではありません。犯人が盗んだお金を使ってしまったり、物を売却した場合には、盗まれたものは、ほぼ戻ってこないといっても過言ではないでしょう。

過去に自分が担当した窃盗事件の被害者の方は、給料日当日、給料全額が入ったバッグを、鍵を掛けていない車に置いていたところ、ほんのわずかな隙を狙った車上ねらいにあい、給料の全額を犯人に盗まれてしまいました。その事件の犯人は、盗んだお金を全部使ってしまったため、被害弁償を行うことができませんでした。

防犯上、外出するときに鍵を掛けることは当然ですが、自宅にいる場合でも施錠をする必要があります。

例えば、施錠していないドアから自宅に侵入した犯人から暴力を振われ、財産を脅し取られたうえに、怪我を負うという被害に遭う可能性があります。また、女性の場合、自宅に侵入した犯人から性的暴行を受ける可能性があります。

施錠をしていても、窓ガラスなどから無理やり侵入する犯人もいますが、施錠をしていることがわかったら、侵入を諦める犯人も多いはずです。

「犯人も家の中に人がいるのは分かっているのだから侵入してこないだろう、だから鍵を閉めなくても大丈夫」と考え、施錠をおろそかにすると、犯罪被害に遭う可能性が高くなります。

刑事事件の弁護人をやっていると、自宅や自動車の施錠をする、貴重品は肌身離さず持っているなどの当たり前のことが、犯罪の被害に遭わないために大切であることがわかってきます。そして、前述したとおり、一度盗まれてしまったお金や物は、被害者の方の元に全額戻ることがほとんどないということもわかります。

お金や物を盗む犯人が一番悪いのはいうまでもありませんが、「もし施錠をしていたり、貴重品を置きっぱなしにしていなければ、被害者の方も犯罪の被害に遭うことはなかったかもしれない…」という辛い気持ちになったことが何度もありました。

犯罪の被害を受けた後、事後的に救済を受けることは非常に困難です。自分や家族を犯罪被害から守るため、防犯をしっかりすることの必要性を、特集ページは改めて教えてくれました。

特集ページを読んで、釧路地域の治安を守り、地域住民の方々に安心した生活を送るために努力されている釧路警察署の切実な想いが伝わってきましたので、弁護士としても防犯の大切さを紹介するコラムを書こうと考えた次第です。