弁護士 久保田 庸央
2022.05.18

第三者による破産の申立て?

 今年、第三者より破産を申し立てられ、釧路地裁から破産手続開始決定がなされたというニュースが2件ありました。

 2件とも、心当たりのある件だったので、ニュースを見て、何を言いたいのかは分かるのですが、第三者が破産申立てをするなんて、とんでもない話です。

 第三者が、他人の会社を強制的に倒産させるってことですからね。
 第三者なのに…。

 上記の2件は、第三者ではなく、債権者(請求権者)が破産の申立てをして、債務者(請求を受ける側)が破産開始決定を受けたというものです。

 通常は、自ら破産の申立てをするのが一般で、それは自己破産と言われています。経営が立ち行かなくなった会社や、借金の返済が困難になってしまった個人が、自ら破産の申立てをするのです。

 他方で、ほとんどが自己破産の申立てで、債権者が申立てをするのは、稀なことですが、その場合の破産申立は債権者破産と言われています。

 債権者が破産申立てをして、破産手続開始決定がなされた場合、申立をした債権者が破産手続において配当を得たとしても、他の債権者と平等の取り扱いを受けることになるので、全額の返済(配当)を受けられることは考えられません(全額の配当を受けられるということがあるとすれば、全債権者に満額が払われるということであり、通常は破産開始決定が出ないはずです。)。
ですから、債権者が破産申立てをするということは、自ら全額の支払を受けられないようなことをするということであり、この部分だけを見れば、経済的に不合理な行動ということになります。また、債権者からの破産申立手続は、裁判所に積む予納金等多額の費用もかかります。
このような点から、債権者による破産申立ては、ほとんど行われないということになるのです。

 それでも、債権者による破産の申立てが行われる場合は、例えば、回収は既に諦めており、税金対策として、損金処理を目的としている場合があります。また、財産の差押は個別の財産を特定して行わなければなりませんが、破産の場合は、全ての財産が対象になるため、いずれは倒産必至と思われるようなときに、財産が流出する前に申し立てるということなどが考えられます。
上記の通り、多額の費用がかかりますので、そのような費用をかけても、かつ、全額返済を受ける道を諦めてもメリットがあるという場合に、債権者申立てがなされるということになります。

 珍しい手続なので、一般の新聞で、債権者と表記すべきところを、誤って第三者により破産申立がなされたと報道されるのは致し方ないかもしれません。
 ですが、企業の倒産情報を報道しているところでも、第三者により破産申立がなされたと記載されているのを見ており、これについては何だかなと思います。
 しつこいですが、関係ない第三者が他人の会社を強制的に破産させるって、とんでもないことですよね。