弁護士 鍛冶 孝亮
2022.04.13

春を告げる花

1 長かった冬も終わり春の訪れを感じるようになりました。
  今年の冬はいつもより寒くもなく、雪もそこまで多くなった気がします。
  3月になっても雪が積もるくらい降りましたが、暖かい日が続きすぐに溶けていました。そしていつの間にか4月になっていました。
  単にカレンダーが3月から4月に変わっただけで春を感じるのではなく、気候の変化や植物の芽生えなどで実際に感じるものではないでしょうか。
  北海道では雪解けで感じることもありますし、道外では花粉症の症状で感じることもあり、人や地域によって感じ方はそれぞれ異なると思います。

2 個人的に春がやってきたと感じるのは、福寿草の花を発見したときです。
  北海度では3月下旬から4月にかけて、雪解けが進み地面が見えてくる時期に黄色の花を咲かせます。
  まだその頃の地面の色は、白(雪)と茶色(枯れた植物)だけなので、深い緑の葉に黄色の花を咲かる福寿草はとても目立ちます。
  雪解けとともに咲く花としては、スノードロップもありますが、道東では自生していないのか見たことはありません。
  一方福寿草は、この時期になると良く見かけます。



この写真は、2020年4月4日、釧路市丹頂鶴自然公園内で撮影したものです。
 
福寿草の花を見て春を感じる方も多いのか、福寿草のことが報道されることもあります。私の子どもが通っているこども園の庭に福寿草が咲いたという新聞記事を先日見ました。
興味がない人からすれば、わざわざ記事に載せる必要はないと感じるかもしれませんが、この記事を見て春を感じる人もいます。

3 ちなみに福寿草は毒をもっている植物です。
  トリカブトと同じキンポウゲ科の植物であり、トリカブトほどではありませんが、口にした場合、嘔吐、呼吸困難、心臓麻痺の症状があり、死に至ることもあるようです。
  全国的に誤食する例も少なくないという話を聞いたときに、福寿草を誤って食べる人がいるのかと疑問にもったことがありますが、トリカブトの若芽はフキノトウに似ていることもあって、初春に山菜取りをして誤食する人がいると聞いて納得しました。
  北海道では雪解けの時期を代表とする山菜としてギョウジャニンニクがあります。
  ニンニクと同じような香りや味がしますが食感はネギのようにシャリシャリしています。ジンギスカンと一緒に炒めて食べると美味しいですが、個人的には天ぷらをおすすめします。天ぷらにするとうまみが凝縮され何もつけなくても美味しく食べることができます。
  ギョウジャニンニクと同じユリ科の植物であるスズランも猛毒をもつ植物で、青酸カリの約15倍の強さの毒があるといわれています。スズランをさしておいた花瓶の水を飲んだ子どもが亡くなったと事案もあるようです。
ギョウジャニンニクとスズランの若葉は似ていることもあり、誤って採取してしまう人もいるため、注意喚起がされています。
  春を代表する花や山菜には猛毒のものもあるため注意が必要なのです。

4 福寿草が咲くと一気に春が進み、いたるところにフキノトウが生えてきます。
  しばらくするとタンポポも咲いてすっかり野原は緑色になります。
  その時期の福寿草がどうなっているのかは見たことがありません。もしかしたらほかの植物の陰でひっそりと花を咲かしているのかもしれません。
  福寿草は、桜の花のような華麗さはないかもしれませんが、春の訪れとともに一番先に花を咲かせていつの間にか散っていくはかない花なのかもしれません。
  私は、ライラックの花を見たら初夏を、コスモスの花を見たら秋を感じます。人にとって、季節を感じる花が違うのは面白いことだと思います。
  先日、私の子どもが通っているこども園の庭に福寿草が咲いているのを見たときに、4歳の子どもに「福寿草が咲いたよ」と伝えたものの、まだよくわからないのか関心をもってくれませんでした。
  せっかく自然豊かな北海道に住んでいるため、季節移り変わりの時期には子どもと一緒に外へ出かけ、植物の変化とともに季節を感じることの楽しさを知ってほしいと思っています。
  先ほど毒をもつ植物のことにも触れましたが、山菜採りをする場合には最低限の知識をもって行うことが必要だと思います。例えばギョウジャニンニクの場合、葉や茎からとても強いニンニクの匂いがするので、ギョウジャニンニクでないかどうかすぐにわかります。また、若葉の時期もスズランと違いますので、知識があればその植物がギョウジャニンニクかスズランなのか判明することも容易です。
  このような知識は図鑑などを見ているだけ身に付くものではないと思います。
  冬眠明けの熊には最大限に気を付けながら、春の山を散歩してみてはいかがでしょうか。