弁護士 荒井 剛
2020.09.30

最低限のマナー

 最低限のマナーは守ってほしい、そう思った出来事がありました。

 この間の日曜日、子ども(小学5年と小学3年)を連れてバッティングセンターに行ったときのことです。1回、打つのに200円かかりますので両替機に1000円札を入れ、出てきた100円玉10枚を子どもたちに渡し、好きなところで打ってきてと言いました。

 下の子はまだ小学3年生なので、バッティングセンターではいつも時速70キロ前後の球が出てくる一番遅いところで打っています。この日もいつものように時速70キロ前後のケージに行ったところ、普段はいつも空いているのですがこの日は先客がいたため順番待ちすることにしたようです。だいたい1回の利用で、20球前後しか打つことができませんので、順番待ちするといっても数分程度待てば前の人の打撃が終わります。ところが5分近くたってもまだ下の子はケージの前で待っていました。おかしいなと思っていたら、ほどなくして、下の子が私のところに来て、前の人がずっと打っているというのです。

 別に1回で交代しないといけないというルールはありませんし、後ろで待っている人がいなければ別に2、3回続けて打つことも全然問題ありません。ただ、後ろで明らかに待っている人がいるような場合には、その人への配慮といいますか、何回も続けて打つのではなく、一回交代したりするのがマナーではないかと思います。そこで、下の子に対し、さすがに打っても2、3回だと思うからもう少し待ってみればと言いました。しかし、下の子の説明によれば、前の人はケージ内のコインボックスの上に100円玉をたくさん置いているというのです。しかも、100円玉が30枚以上あるというのです。いやさすがにそれはないだろ、おおげさだなあと思い、どれどれと言いながらそのケージの前に行ったところ、驚きました。おおげさでもなく、本当に100円玉が山のように置かれていました。コインボックスにボールがあたったら、上に積まれた100円玉が落ちて大変だろうなと思いながら、ちょっと憤りを感じました。さすがにやりすぎだろと。2、3回ならまだしも山のように置かれた100円玉を全部使う気か?そうだとしたらさらにこれから10回以上打ち続けるのか?すでに3回、4回は打ち続けている様子でしたので、明らかに非常識だと感じ、その人に対し、一回、交代してもらって次は一回打たせてもらえないかと声をかけるしかないと判断し、一体どんな人が打っているのだろうと思ってケージを覗き込みました。またまた驚きました。そもそも、一番遅い球のケージですから、利用するとしてもだいたいは子どもです。それも小4年以下の中学年、低学年くらいでしょう。たまに学生や大人のカップルがキャッ、キャッ言いながら利用している場合もあります。しかし、ケージにいたのは明らかに70歳を超えていると思われる男性でした。もしかすると80際前後かもしれません。私は、思わず、「えっ」と口に出してしまいました・・・。えっ、なんで?・・・野球の試合でもあるのか?いやないだろ・・・・健康のためか?日々のストレスの発散か?それにしても日曜日に一人で来るんだろうか??・・・・・・なぜ100円山積み??長年溜め込んだ貯金箱を開けたので一気に使おうとしているのか??いやそんなわけないな・・・・・それにしてもなぜ何回も続けて打っているのか?後ろに人が待っていること気づかないのか??? あまりに多くの疑問を持ってしまったことと、下手に交代してほしいと声をかけて揉めても困るなという気持ちが生じたことから、声をかけるのをやめ、もう一回だけ打ち終わるのを待つことにしました。私の下の子は背も小さい方なので、待っていることに気がついていないのかもしれないと思い、私自身もケージの前に立って待っていました。
 そして、また一回が終わりました。その後、その男性がケージの外で待っている私達のほうを見ました。明らかに私達の存在を認識しました。さすがに山積み100円玉を片付け、一旦は、ケージの外に出てくれるかな・・と思いきや、まるで何事もなかったように、またしても山積みの100円玉群から100円玉を手に取り、コインボックスにチャリン。再び打ち始めました。これはもうダメだと思いました。この状態で次は代わってほしいなどと声をかければ、むしろ逆ギレされるかもしれないという恐怖を感じました。手にはバットを持っていますし、逆ギレした勢いでこちらに言い寄られた場合には下の子に怪我でもさせられたら怖いので、下の子には悪いですが、ちょっと今日は運が悪かったと思うしかないと言って下の子に打たせるのをあきらめることにしました。結局、その方はまた何回か打ち続けて疲れたのか100円玉群をビニール袋にゴソっと入れた後、去っていきましたので最終的にはそのケージを利用することができました。
 
 そもそも、どのような所作がマナーなのか人によって認識が異なるかもしれません。
 行儀が悪いといった類のものですのでその人の感性や生活環境等によっても異なってくるからです。ですので「マナー」を具体的に定義するのは難しいと思います。逆に具体的に定義することで、「マナー」の範囲を狭めてしまい、その定義からすれば○○はマナー違反ではないという口実を与えてしまう気もします。それでも「最低限のマナー」というのは存在するのではないかと思いますね。