弁護士 小田 康夫
2017.11.01

オレオレ詐欺は終わらない

「お母さん、○○(息子の名前)だけど、今、時間ある?」
「事故を起こしちゃって」
「どうしたらいいかな」
「100万円位用意してもらえない?」
「こっちも怪我してて、取りに行けないから、友達に渡して」

 こんな電話がかかってきたら、あなたなら、どうしますか。
「オレオレ(振り込め)詐欺だ!」と判断できますか。
「騙されないぞ。すぐに警察に通報しよう」となるでしょうか。
例えば、実際に家族が交通事故に遭った場合、家族から、上の内容で電話が来ることはあり得ます。どのように、嘘なのか、本当なのかを見分けますか。

あなた)電話番号が違うじゃない?
→「俺の電話番号が違う?事故で壊れちゃって。友達のを借りてるんだ」
あなた)どうして急に大金が必要なの?
→「相手の車も壊れて、自分のお金じゃ足りないし、弁護士費用もあって、それくらいになるんだって」
あなた)警察に相談したの?
→「今、近くに警察官がいるから代わるね」(実際に、警察官役の人に代わる)
あなた)友達って誰?そんな人に渡せないよ。
→「同級生だった○○だよ。もう何年もたっていて顔も覚えていないかもしれないけど」

 あなたと電話口の人は、このようなやり取りとなりました。
電話口だけの情報で、本当に息子(娘)が交通事故を起こして電話を掛けてきたのか、犯人グループが掛けてきたのかの判別ができるでしょうか。実際の交通事故では、すぐに費用が発生することは稀ですが、被害者車両の損害について早急にお金を払って示談をするケースもあり得ない話ではありません。

 このような犯罪は「特殊詐欺」といいますが、特殊詐欺の手口はどんどん巧妙化しており、犯人グループはこちらの家族構成・名前の他、学校の卒業者名簿を持っていて交友関係も把握しているケースもあると聞きます。電話を受けて、「なんか変だな?」と感じ取れるかどうかは、その人の感性も大事ですが、心構えとしては、「いつか自分も騙されるかもしれない」と考えておくことがとても重要です。
 そういう思いがあれば、実際にそのような場面になったときに、周りの人に相談してみる、交番で一度話を聞いてみるという方法が取れるかもしれません。なお、上記の事例も、普通、友人に渡すのはおかしい、また、少し考えれば、弁護士費用も保険で賄われる特約には入っていないのだろうか?相手の怪我の治療費も自賠責保険で一定額は対応ができるのではないか?などいろいろな疑問が生じますが、突然の電話で心に余裕もない状況ですから、正確な情報を聴き取ることは難しいというのが実情のようです。

 先月の21日、釧路駅前の釧路ロイヤルインにおいて、「くしろシニアのくらしフェスタ」(一般社団法人シニアのくらし支援センター主催)というイベントに講師として参加させていただき、上記のような事例を紹介させていただきました。また、被害者はやはり高齢者に多いので注意をして欲しいという話をしました。これは、データ上もそうでして、警視庁の発表する統計によると、70代、80代の高齢女性が特殊被害に遭っているケースが突出して多くなっています。
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/tokushu/furikome/furikome.files/29_leaflet_jyokyo.pdf
報道によると、被害者の多くは、自分が「騙されるわけはない」と思っていたというそうです。

 いきなり電話を掛けて、こちらに心の余裕を与えないのが、詐欺グループの戦略です。繰り返しになりますが、普段から「自分も騙されるかもしれない」と考えておくこと、そして、実際に行動を取る場面では、周りに一度は相談するということ、を今一度、心にとめておくことが肝要です。