弁護士 荒井 剛
2017.10.25

年齢の数え方って?

 社会生活の中でよく年齢を聞かれたりすることがあるかと思います。
 そう聞かれるとおそらく多くの方は「満年齢」で答えていると思います。

 誕生日を迎えて初めて1歳。
 それ以降も誕生日が来る度に1歳ずつ加算していくという計算方法です。
 1歳未満の場合は0歳○ヶ月という表現をするかと思います。

 これに対して「数え年」で答えるという人もごくまれにいるかもしれません。
 「かぞえで言うと・・・○○歳」という答え方です。
 このような数え方は「数え年」と呼びます。

 「満年齢」と「数え年」では年齢が違ってきます。
 「数え年」では、生まれた瞬間から1歳と計算します。
 そして、翌年の元旦を迎えた時点で2歳として計算します。
 生まれた瞬間から1歳なので数えで0歳ということはないということになります。

 「数え年」の場合、たとえば12月31日に生まれた瞬間に1歳と数え、
 元旦である翌日になった時点で2歳と数えることになります。
 「満年齢」であれば生後2日にしか過ぎないのに、
「数え年」になると早くも2歳ということになるわけです!

 いまの感覚からすれば「満年齢」で計算するのが普通であり、
 「数え年」に違和感を覚えるかもしれません。
 でも昔は「数え年」で年齢を表すのが一般的でした。
 今でも人が亡くなったときの年齢を表す「享年」は、
 「数え年」で言いあらわすのが慣習となっています。

 ではいつから年齢の数え方が一般的に「満年齢」になったのでしょうか。

 少し時代をさかのぼります。
明治時代、「年齢計算に関する法律」が制定され、
年齢は満年齢で計算すると規定されました。

 こんなところまで法律で決められています。
 法律は制定されたのですが「数え年」の習慣はなかなか抜けきれず、
 「満年齢」による計算方法が全国的に普及することはなかったようです。

 そこで、昭和24年、
 「年齢のとなえ方に関する法律」という別の法律が制定されました。
 たった二つの条文しかない短い法律です。

 1条は、国民に対し、従来の慣習である「数え年」をあらため「満年齢」の使用を心がけてねという内容になっております。
 これに対し、2条は、国及び地方公共団体に対し、原則として「満年齢」を使用するよう義務付けております。

 この法律によりようやく全国各地で「満年齢」が使用されるようになり、
 いまでは「満年齢」による数え方がすっかり定着しました。
 そのため日常生活で「数え年」による計算で数えないといけないという場面に出くわすことはほとんどないと思いますし、「数え年」を意識する必要もそれほどありません。

 それでも還暦祝い、古希祝、喜寿祝といった特定の年齢をお祝いする場合には、数え年が重要だったりします。還暦祝いは、生まれたときの干支が60年経過してまた戻って来ることを祝うものですから、60年が経過したときに祝うということで、「数え年」で61年のときに祝うことになります。また、古希祝は「数え年」で70になる年にお祝いをするということですので厳密にいえば満年齢で69歳の年ということのようです。しかし、最近は、お祝いする気持ちが重要だということでそこまで厳密にされていないと思います。

 一方、「厄年」については少し気を付けておいたほうがいいかもしれません。
 厄年には、前厄・本厄・後厄がありますが、いつ厄年にあたるかは、
 「数え年」を基準とすることが多いようです。

 厄年は、男性・女性いずれにもあります。
 たとえば男性の大厄と呼ばれるのは42歳ですが、前厄は41歳、後厄は43歳ということになりますので、「満年齢」と「数え年」とでは、厄除けをスタートする年が1年ずれることになりますので、厄除けの対象となりそうな場合には、「満年齢」と「数え年」いずれの計算で厄年と捉えているのか意識したほうがいいかもしれませんね。