弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 小田 康夫
2016.11.02

「弁護士の出前授業」に行ってきました。~法を教えることは、みんな個性がバラバラで、だけど、それで良いと知ってもらうこと。~

 ウルトラマンとバルタン星人、アンパンマンとバイキンマン、孫悟空と(初期の)ベジータ、など、アニメや漫画には必ずと言っていいほど、ヒーローと悪者が存在します。そして、ヒーローは必ず勝ちます。

 私は、とある小学校において、「弁護士の出張授業」に講師として行ってきたことがあります。そこでは、事例問題として、民話サルカニ合戦をオマージュした(話を少し変えた)問題を出題しました。確か、その問題は、カニがサルに一方的に攻撃されて、怪我を負ったという事件でした。児童には、カニ側の弁護士が正義で、一方的に攻撃したサルが悪者、当然、サル側の弁護士も悪者という印象になったに違いありません。

 正義は必ず勝つ。この事例でも民事事件では、カニ側が勝ち、刑事事件では、サルは有罪になりました。みんながこれまで教えられてきたとおり、「正義が必ず勝つ」のシナリオです。

 しかし、実際の世の中はこんなに単純ではありません。

 いい人が羽織っているマントに「正義」と書いてあるわけではありませんから、だれが「正義」なのかわかりません。また、「正義」が必ずしも勝つとは限りません。むしろ負ける方が多いかもしれません。一見、「正義」だと思っていたことが勘違いだったり、世間から悪者扱いされていた人が実はいい人だったりします。そもそも「正義」なんて単なるイデオロギーで、存在すらしないのかもしれません。

 漫画でもそうです。

 バルタン星人ももともとは故郷を失って仕方なく地球にやってきた弱者です。バイキンマンもなかなか憎めない奴で、ベジータも実はいい奴でした。ワンピースなんて、ヒーローであるルフィは海賊で、人民を守るという大義名分をかざす世界政府が冒険の邪魔をする悪者です。

 私も講師として「弁護士の出前授業」に参加したのですから、大きな声では言えませんが、既存のルールをただ知ってもらうために行う「法教育」には意味がないと思っています。だって、そんな法律があることや弁護士がどのような仕事かは、インターネットで調べればすぐに出てきますし、誰でも教えられますから。法務省のHPには「法教育」が、民主主義の担い手を育てる云々書いてありますが、「民主主義」の意味は文脈により多様で、難解ですから、一見して何を言っているのか良くわかりません。

 じゃあ、子ども達にいったい何を教えるべきなのか。

 大事なのは、まず、子ども達が生まれた瞬間からこれまで歩んできた人生の中で、自分たちを縛り付けている「法」っていうものが、何者なのか、を教えることだと思います。

 法は、「天から当然のごとく降ってきて、与えられるもの」ではなくて、「多様な価値観を持った人が幸せに共生するために、みんなが守るべき約束事、ルール」です。

 当然、みんなに適用されるので、公平なものにすべきですし、外国人などの構成員の種類が増えれば、文化も違いますから、みんなが幸せに暮らすために地道に更新していくべきです。

 つまり、「法」は決して普遍的なものでないこと、当然、不都合があれば、変えていくべきだし、現行の法律が常に正しいとは限らないという意識を持つことが必要となります。

 弁護士が、教えるべきは、

 ①「法」の意味、すなわち、価値が多様であることを大前提に作られているという意味で懐が深く、多様な価値観を認めており、この社会で生きる個人が尊重されていること

 ②既存のルールの中身だけではなく、そのルールが、どのような経緯で生まれたのか、それゆえ、そのルールを硬直的に適用することの問題点がどのような点にあるかについて、考えるきっかけを与えること

 ③そして、弁護士も一緒になって、多様な価値観や多様な考え方があることを知った上で、より良いルールにするにはどのような知恵があるかをみんなで語り合うこと

ではないでしょうか。

 私の気持ちとしては、出前授業の中で、実際の(私が知っている)民話のサルカニ合戦を見せて、サルを殺した子ガニの有罪・無罪、そして有罪の場合の量刑(罪の重さ)を小学生同士に論じさせたかったのですが、さすがにそれはやり過ぎ・・・ですかね。

 なお、(私が知っている)民話のサルカニ合戦の内容は確かこうです。

 サルが持っていた柿の種とカニが持っていたおにぎりを交換した。

 カニは柿の種を植えた。

 柿がたくさん実った。

 サルが、カニに柿を取ってあげようと言って、柿の木に登り、勝手にバクバク食べた。

 カニは怒ったが、サルに柿をぶつけられて死亡した。

 親カニの仇を討つため、子ガニが蜂や臼や牛糞を仲間に入れて、サルを殺した。

 何通りにも改作されているため、実際の民話はこれと異なるかもしれませんが、こんな民話だったと思います。改めてみると、結構残酷であり、かつ、色々考えさせられる話です。

 サルの遺族の前で検察官なら何を主張するか、子ガニの立場でどんな弁護ができるか、そして裁判員の立場でどんな判決を書くか。

 さて、みなさんなら、どうしますか。