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弁護士 荒井 剛
2016.10.28

ブータンを訪れて(前半)

 人口約70万人。北は中国、東南西はインドと隣接しているブータン王国。そう説明されてもいまいち場所がピンとこない人が多いと思います。雷龍の国、最後の秘境と評されるブータンですが、「国内総生産」(Gross Domestic Product:GDP)ならぬといえば「国民総幸福量」(Gross National Happiness:GNH)という国家理念を提唱したことで知られていますし、東日本大震災が発生した直後に多額の義援金を送金してくれた国としても知られているところです。

 また、2011年の秋には、ブータンのワンチェク王が若き王妃を伴って来日しました。そのときの様子がマスコミで取り上げられ、日本でもブータンのことが割りと多くの人に知られるようになったかと思います。それでもブータンは、タイ、マレーシア、シンガポールなどといって東南アジアや欧米諸国と比べると知名度が低く、まだまだ馴染みがないかと思います。私自身もそうでした。そのブータンに今年の4月及び9月に1回ずつ、合計2回行く機会がありました。

 訪問のきっかけとなったのは釧路ロータリークラブでした。

 私は、2011年に釧路ロータリークラブに入会したのですが、ここ数年、タイの小学校・幼稚園に浄水器を設置するという国際奉仕事業に携わっていました。その事業を知った方からブータンでも類似の事業ができないかとお声がけいただきました。せっかくのお話しでしたし、当時、私は国際奉仕委員会の委員長だったこともあり、まずは現地に行こうということで今年の4月に初めてブータンを訪れました。実際の事業については後半部分で触れてみたいと思います。前半はブータン自体の紹介をしてみたいと思います。詳しい情報はブータン政府観光局のHP (http://www.travel-to-bhutan.jp/)に載っております。

 日本からブータンまでの直行便はありません。タイのバンコクまで行き、そのバンコクからブータンの首都ティンプー近郊のパロ空港行きの飛行機に乗ります。バンコクからパロまでのフライト時間はまちまちなのですが3、4時間程度はかかります。バンコクからインド国内を通過してブータンに入るのですが、その途中でインドの空港(コルカタ等)に寄ります。航空券には、途中でインドの都市に寄るとは記載されていないし、チェックインしたときにもまったく言われておらず、最初は焦りました。4時間のフライトと言われていながら1時間30分で空港に到着したらからです。

 ただ、乗客の半数は平然とそのまま座っていましたし、インド系の人が次々降りていっていたこと、窓からは空港の周囲にヤシの実が生えているのが見え、標高の高いはずのブータンではおそらく見られないであろう景色であったこと、最終的にはフライト・アテンダントに聞いてここはインドだと確認しました。にしても本当に聞かされていませんでしたし、アナウンスでも特にあまり触れていなかったと思います。まあ、そのようなことがあってブータンのパロ空港に無事に到着しました。パロは首都ティンプーから50分ほど離れた郊外の都市にあります。すでに標高が2000メートルほどあり、多少、空気が薄いのですがパロ空港はいくつもの渓谷の間を抜けていきます。窓から見ていてもすぐ近くに山肌が見えますし、空港に到着するまでの最後の15分程度は、本当にスリル感をたっぷり味わうことができます。これは日本に帰国してから知ったのですが、パロ空港は、世界一パイロット泣かせと呼ばれ、ランディングが危険な空港として有名なのです。ネットで検索したら動画まで出ていました。

 ブータンというのは非常に特殊な国です。ブータンに入国する前に観光ビザを取得しておく必要があるのですがこの観光ビザがまたユニークなのです。滞在日数、滞在場所、滞在先ホテル、行程をすべて事前に伝えた上、1日あたり定額の公定料金を支払うシステムになっております。それを支払わないとビザがそもそも取得することができません。人数や時期にもよりますが一人あたり1日240ドルから290ドル程度かかります。もっともこの公定料金には、内国税(65$)、宿泊費、食事代、ガイド費用、国内移動費用、トレッキングツアーのキャンプ設備、運搬代などがすべて含まれています。一見すると高い印象を受けますがホテル代、3食の食事代、移動するための車の費用などもすべて含まれていると考えるとそれほどではない気がします。

 政府が徴収する内国税は医療費、教育費に充てられます。ブータン国内の医療費、教育費は無料なのですがその原資の半分は観光客が支払う内国税でまかなわれています。ブータン国内の道路はそれほど整備されていません。東西に一本の国道が走っているのですがそれ以外はまだまだです。ブータンの東部の奥地に行こうとするとそれこそ1週間以上かけていくことになります。道路については若干あえて整備を遅らしているのではないかという印象を持っております。そのほうが長く観光客が滞在しますし、その分、内国税収入も増えるからです。

 4月の訪問の際、時間があまりなかったものですからブータンの東部まで訪れることはできず、もっぱらパロそして首都ティンプーだけを回りました。ティンプー市内の車の通行量はそこそこありますが、実は、信号機が一つも設置されていません。世界中の国で首都に信号機がないのは非常に珍しく、ティンプー市内のメインストリートでは今でも警察官が手信号で交通整理しています。





 ブータンはチベット仏教の国で、殺生は基本的に禁止されております。だからというわけではないのかもしれませんが街の中に無数の犬を見かけます。誰か特定の人に飼われているわけではないのですが野良犬と称するにはあまりに健康的すぎますし、何よりどの犬も人を襲おうとしたり、人の食べ物をとろうとしたりしません。これは普段から犬たちが現地の人たちと平和的に共存していることの現れだと思いました。意外だったのは猫がほとんどいなかったということです。食事中もハエが寄ってきたりするのですが現地の人は基本的にハエも殺したりしません。ハエも気のせいかゆっくりと優雅に飛んでいる気がしました。

 ブータンには、チベット仏教の歴史的建造物も多く、標高の高いところに建立された古い寺院にトレッキングする観光客が世界中から集まります。景観も雰囲気も独特であり、まさに異国の地に着いたなと思わせます。残念ながらブータンには世界遺産に登録された文化遺産・自然遺産はまだありません。候補は幾つか挙がっているので近い将来登録される可能性があります。

 その1つがゾンと呼ばれる建物群です。ゾンは市毎に存在します。「ゾン」は、その地の政治、宗教的権威を両方備えているところです。チベット仏教が強く普及しているブータンでは、政治と宗教は分離するものではなく一体となっています。首都ティンプーのゾン群は、ブータンでは4番目に古く、1600年半ばに建築されました。現在でも役所として機能しており、ワンチェク国王もここで毎日仕事をしています。現在でも政治的、宗教的権威として機能している以上、観光客が入れるのは勤務時間が終わった午後5時半以降に限られていますし、王がいる建物や宗教的権威者がいる場所自体には入れないようになっております。当たり前といえば当たり前です。写真撮影自体も厳しく禁止されています。その近くまで行けるというのがそもそもすごいです。









さて、そんなブータンですが視察した小学校で具体的な事業を行うことになりました。
これについては後半部分にて紹介したいと思います。

(続く)