弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2016.09.14

スクールロイヤーについて

1 弁護士法第1条では、基本的人権を擁護することや社会正義を実現することは弁護士の使命とされています。

実際、数多くの弁護士が、消費者被害の防止、環境保護活動、高齢者や障がい者の権利擁護活動、犯罪被害者支援などの人権擁護活動を行っています。

私は、日本の弁護士が所属する日弁連(日本弁護士連合会)の子どもの権利委員会の委員であり、釧路弁護士会の子どもの権利委員会の委員長として、子どもに関わる権利擁護に取り組んでいます。

今年の8月、日弁連の子どもの権利委員会の合宿があり、そこでスクールロイヤーの研究発表がなされていたので、今回のコラムで紹介させていただきます。



2 スクールロイヤーとは、学校関係者から、学校で発生する様々なトラブルについての相談を受け助言するなどし、トラブル解決に向けたサポートを行う弁護士のことです。

スクールロイヤーは、いじめなどの重大な問題だけではなく、少年非行、保護者対応、部活動でのトラブル、不登校、給食費の未納など様々なトラブルの助言を行います。

相談に乗る弁護士は、学校教育に深い見識を持ち、学校問題の相談や活動に経験があり、何より子どもの権利擁護のために熱心な弁護士が選ばれるようです。

このように、子どもの権利擁護に熱心な弁護士が、学校上でのトラブルについて助言を行うことに意義があります。

例えば、担任の先生が保護者から不当な要求をされているという事案を弁護士に相談すると、「不当な要求なので応じる必要がない」というのが一般的な助言になるかと思います。

しかし、学校、児童生徒そして保護者は、たまたま訪れたレストランの店員と客のような一回的な関係ではなく、互いを信頼し継続的な関係が築く必要があるため、学校側が保護者に対し、「法律的に根拠がない不当な要求だから応じられません」と回答するだけでは問題が解決しないのです。

保護者がそのような要求を行った経緯、学校側の対応にも何か問題はなかったのか、保護者の要求について子どもはどのような態度なのかなどを分析し、要求に応じられない理由を保護者へ十分に説明するとともに、学校側と保護者との関係を修復するための方法などを考える必要があります。

そのような視点から、子どもの最善の利益を一番に考え、アドバイスを行うのがスクールロイヤーです。

なお、スクールロイヤーは、何かトラブルが発生したときに助言するだけではなく、トラブルが発生する以前に必要な助言をして、トラブル発生の予防にも努めています。

学校側が問題ある初期対応をしてしまうことで、トラブルが大きくなり収拾がつかなくなるということが多いため、適切な初期対応のアドバイスも行います。



3 このように、スクールロイヤーは、子どもの最善の利益を一番に考え、子どもが健全な学校生活を送ることができるための助言を行っていきます。

スクールロイヤーは、法律の専門家として、中立公平な立場から、学校側にアドバイスをするものであり、学校の代理人ではありません。

相談の際、学校の利益に沿うように進めていきたいと言われても、そのことが法律上問題であったり、子どもの最善の利益に合致しない場合には、その点はしっかり指摘することになります。



4 予算措置や対応する弁護士の確保などの点から、全国の学校にスクールロイヤーが設置されているわけではありませんが、東京や大阪など一部の地域では、弁護士会が学校からの要請を受けて、スクールロイヤーを派遣するなどしているようです。

また、福岡県では、スクールロイヤー制度はありませんが、弁護士と教師との間で勉強会を行っているようです。その勉強会のテーマは、体罰に関する問題、少年事件の手続、保護者からのクレーム態様など様々です。このような勉強会を通じて、お互いの知識や交流を深め、気軽に相談できる環境を作っているようです。



5 平成25年に施行されたいじめ防止対策推進法では、いじめ問題を調査する第三者委員会の委員に弁護士が選任されるなど、学校関係のトラブルを解決するために、弁護士の関わりが必要されています。

文部科学省は平成29年度の概算要求で、スクールロイヤーの研究調査を盛り込んだようです。

学校でのトラブルは、いじめに代表されるように子どもの人権侵害に繋がるものですので、子どもの権利擁護のためにも、将来的に全国の学校にスクールロイヤーが導入されることを期待しています。