弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2016.06.20

家は買うべきか、借りるべきか(後編)

1 前編では、家は買うべきか、それとも借りるべきかという点について、お金に関わる話を中心に行いましたが、後編では法律問題に関わる話をしていきます。

2 近隣トラブル
持家であれ賃貸であれ、気持ち良く住むためには、近所の方との関係も重要になってきます。
よく聞く近隣トラブルでいうと、賃貸であれば騒音問題、持家の場合には騒音問題のほかに境界問題が挙げられます。
賃貸の場合、必ずしも入居者同士で解決しなければならないものではありません。貸主である大家に対し、騒音で日常生活に支障が生じていることを訴え、騒音をやめるよう大家から注意してもらうことを求めることもできます。
大家がしかるべき対応をせず、引越しをして新しい部屋を探すことになったときには、契約違反(入居者の日常生活に支障が生じているのに必要な対応をしない)を理由に、引越し費用を請求することができる場合もあります。
一方、持家の場合には、所有者である持ち主が個人で対応しなければなりません。また、持家を売却して引越しをすることは簡単にできませんので、近隣トラブルがあっても住み続けることを強いられることもあります。
よく聞くトラブルは、隣の家の人が境界線を越えて使用している、雪を人の庭に捨てるなどです。当事者以外からすれば、話合いで解決できると思われることでも、感情的になっているため、解決に至らないこともあります。
なので、持家を建てるときには、事前に近所のことも十分に調査する必要があります。賃貸の場合も同様に、どのような職業の人が入居しているアパートなのか(私は昔、隣室の学生が深夜まで騒いで困ったことがあったので、社会人しか入居していないアパートを調べてそこに入居した経験があります)、子どもの足音などが心配なのであれば、上の階の部屋や隣の部屋の家族構成を教えてもらえる範囲で不動産業者に確認してみる必要もあるかもしれません。

3 借金問題
病気や失業などで収入が減り、住宅ローンや家賃が支払えなくなったり、生活費に困り、銀行のカードローンでキャッシングをするものの、返済ができず他の銀行や消費者金融からお金を借りて、雪だるま式に借金が膨らんで、その救済を求めて弁護士事務所を訪れる方もいます。
借金問題は、しっかりとした手続を取れば必ず解決できるものです。
借金問題を解決させる主な手続として、借入先(債権者)と交渉して毎月の支払額を減額し長期間かけて完済するという任意手続、毎月の支払額と債務の総額を減額し債務を完済させるという個人再生手続、財産を手放す代わりに借金を完全になくすという自己破産の手続があります。
個人再生手続には、一定の条件を満たせば、住宅ローンは従前どおり支払い、他の借金を減額し支払っていくという手続(住宅ローン特別条項付個人再生)をとることが認められています。持家を残すことを希望する場合、この手続を選択することもあります。
なお、持家を所有している人が自己破産をする場合、原則として破産管財人が選任されることになりますが、その場合裁判所へ納める予納金が、破産管財人が選任されない場合に比べて高額になってしまうため、その予納金をどのように用意するのか悩むことも多いです。
家という大きな財産を所有しているのかどうかは、借金問題の解決の場面でも影響を与えます。

4 離婚問題
持家に住んでいるのか賃貸物件に住んでいるのかは、離婚の際にも問題となります。
例えば、持家に住んでいる夫婦が離婚することになった場合、今後持家には誰が住むのか、住宅ローンはどうするのかという問題が出てきます。
結婚してから取得した財産は、夫婦の共有財産となるため、持家は財産分与の対象となります。一方で、住宅ローンは金融機関に対する債務ですので、離婚をしたとしても、夫婦で半分になるわけではなく、ローンの申込者が支払義務を負っていることになります。
離婚の際、子どもがいると、子どもとしては住み慣れた家から出て行きたくないと希望することも多いです。例えば、住宅ローンの支払義務者が持家を出て行き、住宅ローンの支払義務がない者が子どもと一緒に持家に住み続けるということもよくあります。住宅ローンを支払う人と実際に住宅に住む人が異なる場面が生じるため、持家に誰が住むのかという点でもめることも多いです。
また、住宅ローンは、家族が1つの家で生活していくことを前提に組まれており、場合によっては、ローンの支払額が配偶者のパート収入を踏まえた額となっていることもあります。そのため、離婚により、住宅ローンの支払ができなくなることがあります。
住宅ローンを申込む際、配偶者や配偶者の親族(義理の父母や兄弟)が連帯保証人になっている場合もあります。先ほど述べたとおり、離婚しても債務については影響を受けませんので、住宅ローンの支払義務者が離婚により住宅ローンを支払えなくなった場合には、連帯保証人へ請求がきます。連帯保証人が破産をしなければならないケースもあります。
例えば離婚の際、持家には妻と子どもが住んで、夫は住宅ローンを支払うという合意した場面では、養育費の額をどのように決めるのかという問題があります。妻の住居に関する費用を負担しているのだから、養育費の額を決めるにあたっては、そのことを考慮すべきという考えもあります。
書こうと思えば、1つのコラムにできるほど書くことがあるのですが、賃貸の場合に比べて、離婚の際、持家があるだけで考えなければならないことがたくさん出てきます。

5 相続問題
賃貸物件の借主が死亡した場合、相続人(例えば配偶者や子ども)が賃借人の地位を相続するため、賃貸物件に住み続けるのであれば特に問題は発生しません。
持家の場合、誰が相続するのかという簡単な話では終わりません。
誰かが持家の取得を希望する場合、誰も希望しない場合のいずれの場合でも問題があります。
例えば、1つの家を複数人が取得を希望すると、家は現金や預金のように簡単に分けることができませんので、誰に相続させるのか、家を相続できなかった人の相続はどうするのか(特に持家以外の財産がない場合)などで揉めます。
そして、持家には思い入れを強く抱く方が多いため、「お金を渡すから持家を諦めてくれ」と言われても納得できず、解決が難しいケースがあります。
持家の取得を誰も希望しない場合には、誰に持家を相続してもらうのかで揉めます。例えば、実家を出た子どもが、既に家を建てているのであれば、親の持家の相続を希望しないことが一般的です。もし、相続してしまったら、固定資産税の支払義務が発生しますし、空き家として管理をしなければなりません。
法律上、持家の屋根が台風で飛んで誰かに怪我をさせたり、屋根から雪が落ちて隣の家の車を壊した場合、建物の保存や管理に問題がある所有者は損害賠償をしなければならない場合もあります。そのため、定期的に危険なところがないかどうかを確認しないといけませんし、火災保険の加入も必要になってくると思います。
空き家問題については前編で少し触れました。相続による空家問題を発生させないためには、生前に持家を解体し更地にしておくか(介護施設に入居する際などに)、持家の解体費用を残しておくなどの対応が必要になってくると思います。

6 このテーマのコラムを書き終わってみて、こんなに書くことがあるのかと驚いたのが本音です。書こうと思えばもっと書けると思います。
「家は買うべきか、借りるべきか」という点の分析ですが、お金や法律問題に関するリスク(多額の支出が必要になってくるのかどうか、トラブルが発生した場合複雑な問題が出てくるのかどうか)だけに着目し、できるだけリスクを避けるのであれば、家は借りるべきという判断になるのではないでしょうか。
しかし、人はリスクの有無だけで物事を決めるわけではなく、家を建てることを希望する人が多いことも事実です。
持家を建てた人を「一国一城の主となった」と称したり、「夢のマイホーム」という言葉があるくらい、多くの人は持家を持つことに強い憧れを抱いていると思います。
持家の魅力は、例えばアパートのように隣室を気にせず生活できること、賃貸に比べて広い部屋で生活できること、自由度(例えば自分好みの部屋や庭を作ることができる)が高いところだと思います。
確かに、賃貸に比べて持家の場合には様々なリスクがあるかもしれませんが、対応可能なリスクにはしっかりと対策をすることで、そのリスクを回避又は軽減することもできると思います。
持家と賃貸、どちらが自分のライフスタイルに一致するのかだけで判断するのではなく、リスクやその対策も考えて、選択することが大切になってくると思います。