弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2016.06.07

財産開示手続について

法治国家のわが国では「自力救済」が禁止されています。

たとえば、人に物を貸していたとします。約束の期間を過ぎてもその人が貸していた物を返してくれない場合、力づくで物を取り返すことは禁止されております。また、人にお金を貸していたのに約束通り返済してくれないという場合、債務者の自宅や勤務先にまで押しかけて強引に借金を回収したいと思っても行き過ぎた取り立ては許されません。ではどうするのかというと、最終的には裁判所(司法)を通して、物やお金を返せと求めていかないとなりません。裁判所の判断を待っていたら面倒だ、自力で権利を実現したい、そう思うのは当然かもしれませんが、自力救済を認めてしまうと、結局、声が大きい人、腕力が強い人だけが物やお金を取り戻すことができる世の中になってしまいます。それを防ぐためにもあくまで裁判所(司法)を通じて権利を実現させるというシステムをとっております。これを自力救済の禁止と呼んでいます。何ヶ月も家賃を滞納していたため大家が勝手に借主の部屋の鍵を変えてしまったという事例がありました。でも大家が勝手に鍵を変えた行為は自力救済禁止の法理に反し違法であると判断されました。



自力救済が禁止されているからには裁判所を通じて権利行使した場合にはきっちりと物やお金が戻ってこなければ権利者としては納得がいかないでしょう。そのためには強制執行手続きが充実していないといけないと思うのですが現行制度では十分とはいえず、債権者が泣き寝入りしなければならないこともあり腑に落ちません。



たとえば、「債務者は債権者に対し、金○○円を支払え」という内容の判決が認められたとします。判決が出ても債務者が支払に応じない場合には判決通りの内容を実現させるために強制執行手続きを取ることになります。しかし、債務者にまったく財産がない場合や債務者が多数の債務を抱え自己破産を余儀なくされるような場合には、そもそも回収すべき財産すらないため強制執行手続きにかける費用だけ無駄になってしまいます。もちろん、債務者の勤務先が判明している場合には給料(ただし原則として4分の1)を差し押さえることもできますし、債務者所有の車が判明しているような場合には、その車自体を差し押さえることもありえます。ただ、債務者の勤務先や財産も不明だという場合、一体、強制執行手続きで債務者の何を押さえていいかもわかりません。預貯金を持っている金融機関がわかっていればその口座を押さえることも可能ですが債務者がどの金融機関に預けているかどうかもわかりません。



そのような場合、一定の条件は必要ではありますが、民事執行法上、債務者に対する財産を債務者に開示させるという財産開示手続き裁判所に求めることができます。財産開示手続きは、普通の裁判と同様、呼出状が送られますし、通常の裁判と同様、期日当日には出頭するよう促されます。そして、呼び出された債務者は、期日の際、自分自身の財産についての説明をしなければならないとされております。制度としては立派なのかもしれませんが、もともと支払をしていない債務者なのですから財産開示手続きの期日にも出頭しないということがあります。法律上、債務者が正当な理由なく財産開示手続きに出頭しなかった場合には30万円以下の過料に処せられると規定されておりますが、実際に過料に処せられたケースを目にしたことはありません。これでは逃げ得を認めてしまっているようなものですので正当な理由なく出頭しなかった債務者に対しては裁判所がもっと積極的に厳しい態度で過料に処するよう手続きを進めてもらいたいものです。また、制度的に、財産開示手続きの一環として、たとえ債務者が出頭しなかったとしても裁判所を通じて金融機関に照会をかけてもらい債務者名義の口座や取引履歴の開示を出させることができるようにしてくれればありがたいです。



弁護士となって13年間、財産開示申立事件を扱ったのはたった2回しかありません。そのうち1件は残念ながら債務者が期日に出頭してきませんでしたが、もう1件は成果がありました。すでに判決を取得していたものの長年連絡がとれなくなっていたため、弁護士が間に入って居場所を特定し、財産開示手続きの申立をしたところ、幸いにして債務者が期日に出頭してくれたというものです。その時点での債務者の生活状況を聴き取ることができましたし、分割払いではありますがその後少しずつ債権を回収することができました。



いまの制度設計では十分ではないにせよ判決を取得しても債務者が支払をしないという場合、財産開示手続きを利用してもいいかもしれませんね。