弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2016.03.29

騙された!映画のプレミアムチケット?

前回、前々回と未成年とは何歳のことなのか、民法上は「20歳」で成年と規定されていること等について触れました。公職選挙法で18歳でも選挙に行くことができるようになった以上、民法上の「成年」も18歳に引下げてはどうかという意見も出ているところですが、やはりまだ社会の荒波にもまれていないためか簡単に人の話を信じてしまう傾向があるため、投票ができるようになったからといって安易に民法上の成人年齢を18歳まで下げるのは慎重であるべきだと思います。

今から20年以上も前のことです。私が18歳、大学生活を始めてまだ一月も経っていなかった頃だったと思います。法学部に入学し、はじめの授業あたりで未成年の場合には契約を取り消すことができるというようなことを学んでいたかと思います。そんなある日、たまたま大学の講義等で使用する専門書をまとめて買う必要があり、4万円という貧乏学生にとってみれば大金と呼べるお金を財布に大事に入れて新宿に行ったときのことでした。

JR新宿駅の改札を出たところ、見知らぬ二人組の男性(20代後半か)に、「お兄さん、映画は好きですか?」と声をかけられました。今なら、怪しげな人だなと警戒しながら、素通りするか、「すいません、今は忙しいので」と言って難なくスルーしていると思います。しかし、当時、まあ純粋で若かったです。声を掛けられたのだからと思い、その場で立ち止まって話を聞くことにしました。それに実際、映画は大好きでしたので、一体、どんな話をするんだろうと興味を持ってしまいました。今、振り返ると本当に恥ずかしい限りです。立ち止まったことで2人組からしてみれば私が完全なカモに見えたことでしょう。

簡単な会話から始まり、有名な映画をネタに話が盛り上がった後、突然、「今、幾ら持っているの?」みたいな質問をされました。一瞬、何で?と思ったのですが、そこは純粋な学生、聞かれたから素直に4万円と答えました。「4万円」と答えた直後、あっ、言わなければよかったと思ったのですが、その後も普通に映画の話を続けていたのであまり気にしないでいたところ、「どの映画館でも使える優れもののチケットが10枚あるけど、いるかい?」と言われました。そんな素晴らしいチケットなら欲しいと思い、「欲しいです」と即答。「じゃあ名前をサインして」と言われ、チケットをもらうためホイホイとサインした後、チケットの束を受け取りました。

問題はその後です。そのときまで気が付かなったのですが、声をかけてきた人、そして、私とずっと雑談をしていた人は、一人だけでした。2人組なのに一人しか口を開いていなかったのです。しかし、私が名前をサインし、チケットの束を受け取った直後、それまでずっと黙っていた別の男性がプレミアムチケットの説明を始めたのです。ところが、一体、何を喋っているのかがまったくわかりません。滑舌が悪いというレベルではなく、本当に何を言っているのかまったくわからない感じでした。おそらく、知的障害あるいは言語障害を抱えた方ではないかと思います。そのため本当に何を言っているのかわからなかったのですが、一生懸命説明しているのに聞き返したりすると失礼かなと思い、正直、内容を把握しないまま、「はい」「はい」と答えていると、最初に説明をしていた流暢な男性が、「はい、プレミアムチケット購入していただきありがとうございます。代金は5万円になります。サインしましたし、契約は成立しています。」と言ってきました。このときになって初めて騙されたと気が付きました。

しかし、このとき私は自分が騙されたということについてもそうなのですが、障がい者を利用して人から金をだまし取ろうとするそのやり方に激怒し、流暢に説明をしていた男性に対し、「あんたやりかたひどくないか。そもそもチケットをくれるんじゃないのか、誰も「買う」とは言っていない、しかも5万円なんて聞いていないし、プレミアムチケットのことをそもそも説明できない人に説明させること自体おかしいだろう。詐欺じゃないか、チケット返すから金は支払わない」と結構大きな声で言い返し、その場から逃げようとしました。

ところが、いつの間に集まっていたのか、あるいはもともと最初から周囲を囲まれていたのかわからないのですが、明らかにガラの悪い10人位の人に囲まれていることがわかりました。改札前で多数の通行人が行き交う場所です。実際、多くの通行人がいましたが、誰一人、こちらを見ようともしません。駅員はどこに行ったんだ、助けてくれと内心思っていましたが、駅員の姿も見つけられません。

当時、携帯電話という便利なものを持っておらず、これはもう完全にやばい、逃げ切れないと覚悟しました。いや待て、自分は法学部の学生、未成年者取消を学んだはずだ、これを主張するか!いや待て待て、そんなことが通じる相手ではない。お金持っていないと言うか?いや、さっき「4万円」あると言っているし、今更、持っていないという言い訳も通用しないな、この人たち、なかなかやるじゃないか、いやいや感心している場合か、今は生きてここから逃げることを考えよう、もうだめだと観念し、「わかった、でも5万円は払えない、大事な買い物をする必要がある。2万円で勘弁してくれ」と伝え、何とか2万円を支払うことで逃げることができました。それでも彼らが後をついてくるんじゃないかと思い、しばらくドキドキした記憶があります。それでももしかするともらったチケットが使えるのではないかと思い、チケットに書いてある電話番号に公衆電話から電話したところ「お客様のお掛けになった電話番号は・・・・・」とのアナウンスが。

高くて痛い勉強料となりました。ただ、一方で、こんなやりかたは許せないなって思ったことが司法試験を受けるきっかけの一つになっていたのかもしれません。