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弁護士 鍛冶 孝亮
2015.11.16

無戸籍者の救済に向けて

無戸籍問題を御存知でしょうか。
平成24年に、無戸籍問題をテーマにした『息もできない夏』というドラマ(武井咲さんが主人公)が放送されましたが、このドラマで無戸籍問題を知った人も多いと思います。

子が生まれた場合、市役所などに出生届を提出します。出生届により、子の戸籍が作成されるため、通常であれば、無戸籍という問題は生じません。
しかし、様々な理由により、出生届が提出されず、戸籍が作られない子がいます。
戸籍がないということで、当然には住民票が作成されず、地方自治体からの案内がないため予防接種を受けることができなかったり小学校や中学校に就学できないこと、また運転免許証の交付やパスポートの発給を当然に受けることができないという問題が発生します。
このような不利益のほか、戸籍がないということで差別を受けることもあります。

 無戸籍者が発生する原因には、婚外子を出生したことを表に出したくなどの事情で出生届を出さない場合がありますが、民法で定められている「嫡出推定規定」により、子を夫の戸籍に記載されることを防ぐために、出生届を出さないことが、原因の9割を占めるといわれているようです。
 これはどういうことかというと、民法の規定で、結婚してから200日経過した後又は離婚後300日以内に生まれた子は、結婚相手である夫の子と推定されると定められています。
 例えば、妻が夫から暴力を受け、離婚を考えていたが、まだ離婚が成立していない間に、別の男性と肉体関係をもち、その男性の子を妊娠出産し、妻がその子の出生届を出すと、その子は夫との間の子と推定されます。そして、夫が筆頭者の戸籍が作られている場合、その子は、夫の子として夫の戸籍に記載されることになります。
 そうなると、夫に、第三者との間で子を作ったことがわかってしまうため、妻はあえて、出生届を出さずその子は無戸籍者となります。
 
平成27年11月11日、日本弁護士連合会(日本のすべての弁護士が所属している団体)が主催、法務省が後援した「全国一斉無戸籍ホットライン」を実施し、無戸籍問題について全国の弁護士が電話相談を行いました。
私が所属する釧路弁護士会でも実施し、子どもの権利委員会の委員長である私も、電話相談に応じました。
各地で無戸籍者の方からの相談を受け、無戸籍を解消するために様々なアドバイスがなされたと聞いております。
 
先ほど紹介した嫡出推定のケースですが、離婚後300日以内に生まれた子であっても、医師が作成した証明書により、離婚後に懐胎したことが直接証明できるのであれば、嫡出推定が及ばず、元夫の戸籍に記載されることはないという運用がされているようです。
また、元夫に対して親子関係不存在確認の手続や実の父に対して認知の手続を行うことで、正しい親子関係を法律上確定させ、正しい戸籍の記載をするという方法もあります。これらの手続は、裁判所が関係する手続になりますので、弁護士が手助けをさせていただくことになります。

なお、無戸籍であっても、必ずしも住民登録ができなかったり、保育所に入所や小学校に就学できなかったり、国民健康保険の被保険者になれなかったりするわけではありません。
必要な手続を行うことで、戸籍がなくても、行政サービスを受けられるよう運用が変わりつつあるようです。

国や自治体は、無戸籍者問題の解消に本格的に取り組んできておりますし、弁護士もますます関わっていくことになると思います。
無戸籍のことで悩まれている方は、ぜひご相談ください。