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弁護士 鍛冶 孝亮
2022.07.13

ベビーベッド事件

1 先日、8か月になる赤ちゃんのポータブルベビーベッドをレンタルしました。
  赤ちゃんは、ハイハイで移動、つかみ立ちをするようになり、手を離せない用事があるときにこのベビーベッドに入れるようにしています。
  心配していたのは、上の子(4歳)、二番目の子(2歳)がこのベビーベッドに入って遊ばないかどうかでした。
  このベビーベッドは、赤ちゃんが立っても出られないような仕組みとなっているのですが、椅子などを利用すれば入ることは可能です。
  ベビーベッドを設置してすぐに、子どもたちには、このベビーベッドは赤ちゃんの家だから絶対に入らないように釘を刺していました。

2 ところが、ある日自宅にもどったとき、赤ちゃんがベビーベッドから出ていて、上の二人の子どもがベビーベッドに入っていたのです。
  母親より事情を聞くこともできましたが、まずは上の子にどうしてベビーベッドに入ったのか聞いてみることにしました。
  上の子はダメなことだとわかっているようで、真っ先に出た言葉が、2番目の子にベビーベッドに入れられたとのことでした。話を聞く限り、自分が望んで積極的に入ったわけではなく、自分には責任がないような話でした。

3 このやり取りをみて、共犯者の供述の信用性のことを思い出しました。
  司法試験に合格して、司法修習が始まると、事実認定についての勉強を行います。
  人の話から事実を認定するときに、その人の話が信用できるのかどうか(信用性)ということが問題となります。
  刑事事件における信用性の問題で、共犯事件における共犯者供述の信用性という議論があります。
  一般的に、共犯者は、責任を他人に転嫁させたり、他人を引き込むような供述をするおそれがあるため、信用性を判断するためには、その点を念頭に十分に検討しなければならないとされています。
  具体的には、虚偽供述をする動機の有無、供述の経過、供述内容の変遷を十分に検討しなければならず、特に虚偽供述をする動機や共犯者の名前を出すに至った経過は十分に検討しなければならないとされています。

4 4歳になると嘘をつくことはできるようですので、自分自身の責任を免れるために、共犯者である2番目の子に責任をなすりつける動機は十分に認められます。
上の子が、いきなり2番目の子が悪いというような話をしている点は、自身の責任を転嫁させるための供述ともいえます。
  一方で、初めは単独で行ったと述べていたところ、途中から共犯者の話が出てきたときには、他人を巻き込んでいる可能性があると言われていますが、当初から一貫して2番目の子の関与を述べていることからすれば、まったく2番目の子が関与していないとは言い切れないとも思えます。
  ちなみに、2番目の子にベビーベッドに入れられたのであれば、どのような状況になって入れられたのかも確認したのですが、この点は黙秘権を行使され(上手く状況を説明できなかっただけかもしれませんが)聞き出すことができませんでした。
  客観的な状況としては、ベビーベッドの側には中に入るために使ったと思われる椅子があったこと、そして、上の子と2番目の子は自分が見つける直前まではベビーベッドの中で仲良く遊んでいたという状況です。
  上の子が2歳も離れている2番目の子に無理やりベビーベッドに入れられたという話自体は信じることはできませんが、一方で上の子が率先してベビーベッドに入ったというところまでは断定できません(2番目の子が先に入り、誘われて入った可能性もある)。
  今回はどのような経緯でベビーベッドに入ったのかまでは言及せずに、ベビーベッドに入って遊ぶことは、赤ちゃんに迷惑をかける行為であることを諭し、もう入らないように指導しました。
  その後、母親から事情を確認したところ、子どもたちがベビーベッドに入ったときには、赤ちゃんはベビーベッドの外に出て母親と遊んでいたようです。母親が赤ちゃんの面倒を見て二人から目を離した隙に、二人がベビーベッドの中に入ってしまったようでした。入るまでの詳しいやり取りは母親も見ていないようです。母親も普段からベビーベッドの中に入らないように言っていたため、入ったことを咎めて出させようとしたところ、ちょうど自分が帰宅したという状況のようです。
  結局どのような経緯で二人がベビーベッドに入ったのかを目撃している大人はいませんでした。

5 今回はベビーベッドに入るという行為でしたが、押入れから布団を出して遊んでいるなど、目を離すと子どもたちは大人から怒られるようなことを頻繁にします。また、喧嘩をして二人とも泣いているという場面にも遭遇します。
  どのような事情でそうなったのかを子どもから聞き取り確認することは、困難であると感じています。
  今回のコラムで紹介したように、兄弟間で責任を押し付け合う話をすることもありますし、年齢的に上手く状況を説明できないということもあるからです。
  子どもから話を聞く際には、誘導的な質問をすると迎合した話をする可能性もあることから、オープンクエスチョン(答える範囲をできるだけ制限せずに自由に回答できるような質問)で聞き出すべきと言われています。
  どちらかに必ず責任があることが前提となる「どっちが悪いのか」というような聞き方をしてしまうことがあり反省する限りです。
  誤った事実で叱ると、濡れ衣を着せられたことになり、大人のいうことも受け入れてくれないと思います。
  今回のベビーベッド事件を通じて、子どもの話は辛抱強く、そして結論を決めつけることなく聞かなければならないなと感じました。