弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2021.12.8

絶対大丈夫

1 前回に引き続きプロ野球の話になりますが、今年の日本シリーズは私が応援しているヤクルトスワローズがオリックスバファローズを下して、日本一になりました。
  前回優勝したのは20年前で私が大学一年生のとき話でした。そのようなこともあり、優勝を決めた瞬間、テレビの前で嬉しさを爆発させました。
ヤクルトスワローズが2年連続最下位から日本一になった原動力の1つに高津監督の言葉がありました。
それは9月7日、当時3位で迎えた首位阪神タイガースとの3連戦初戦のチームミーティングのときの話です。
高津監督は、選手たちの前で、「去年の悔しい思いを今年どうやってはらすのかを考えずっとやってきたのがチームスワローズだ」、「みんな自信をもって頑張れば絶対大丈夫」というメッセージでチームを鼓舞しました。
 (東京ヤクルトスワローズ公式 YoutTube)
 https://youtu.be/nSpVBD-TskM
 阪神タイガースとの3連戦に勝ち越して、スワローズはペナントレース優勝、日本シリーズも勝ち、日本一になりました。
 高津監督の「絶対大丈夫」は、チームだけでなくファンの間でも合言葉となりました。
 高津監督の「絶対大丈夫」は、単なる精神論ではなく、無理な選手起用で怪我人を出さないよう徹底した選手管理のマネジメントにも裏づけされているところではありますが、どんなに厳しい状況でも自分やチームを信じて実力以上の力を出すための魔法の言葉ともいえます。

2 ところで弁護士の仕事は法的トラブルを解決するものですが、まず大切なことは法的トラブルに巻き込まれた人に安心してもらうことにあると思います。
法的トラブルの当事者は、非常に不安な状態であり、ときには夜も寝られないと述べる方もいます。
そのような方には、適切な助言や見込みを伝え、まず不安を解消していただくことが大切になります。
 そのような方が、弁護士から一番に聞きたい言葉は、「絶対にこちらの請求は認めらます(又は相手の請求は認められません)」、「絶対に裁判に勝てます(又は負けません)」という心強い言葉なのではないでしょうか。
  しかし、見通しを確認された際に、弁護士から言える言葉は、「こちらの主張が通る可能性が高いと思います」、「こちら側が負ける可能性は低いと思います」というように奥歯に物が挟まったような表現になります。
人によっては、はっきりと「勝てる」、「負けない」と断言してくれず、逃げ道を作っているように感じることや弁護士に自信がないようと感じるかもしれません。
また、不安から解放されるためにもっと安心できることを言ってほしいと感じる人もいると思います。

3 実は弁護士が職務を行うにあたってのルール(弁護士職務基本規程)で、依頼時に依頼する人に有利な結果を約束してはならないとされています。
弁護士職務基本規程第29条2項
「弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない」
弁護士が依頼を受けるときは、基本的には依頼する人からの聞取りや手元にある資料に基づき見立てを立てます。相手方の主張や保有している資料、回収可能な財産などを必ずしも把握しているわけではありません。
このように弁護士はすべての事実関係を把握した上で見立てを立てるわけではないため、必ず依頼する人の有利な結果になることを約束することはできないのです。
依頼時に「絶対に勝ちます」と約束した場合、勝つために手段を選ばない活動(嘘の主張を行う、証拠を捏造するなど)を行うおそれもあります。証拠の偽造などは犯罪行為であり許されることではありません。
また、「絶対に勝てる」と約束して負けた場合、依頼した人との間で約束が違うということで問題となり、依頼する人に新たな紛争が生じさせてしまうことになります。
このように、弁護士が適正な活動を行うため、そして弁護士と依頼する人との間の紛争を防止するために、先ほど紹介したルールが存在するのです。

4 弁護士は、依頼する人が意図する結果が間違いなく出るだろうと思われる案件を受けることはあります。
  しかし、先ほど記載したように依頼を受ける弁護士はすべての事実関係を把握しているわけではありません。ときには、依頼を受けた後に、依頼した人自身も把握していなかった事実関係が発覚することもあります。
  そのため、「絶対大丈夫」はないのです。
  過去に、業者からお金を借り入れたものの長年支払をせずにいたら督促がきたことで、その対応についての相談を受けたことがあります。
  このような相談の場合、消滅時効が主張できないのかまず検討します。
  消滅時効とは、一定期間、民法で定められている事情(請求を受ける、支払をする、裁判を起こされる)がない場合に、その時効が完成していることを主張することで支払義務を免れるという制度です。
相談時に、10年以上返済をしたことや返済の約束をしたことはないこと、裁判を起こされたことはないとのことだったので、業者に時効を主張する書面を作成して送付するよう助言し、そのような対応をしたところ、過去に裁判を提起し判決が下されており時効が完成していないという反論が先方からあったという再相談がありました。
改めて確認したところ、裁判を起こされたことをすっかり忘れており、初回の相談時にはそのような説明をされたとのことでした。
その件は必要な対応を行い最終的には解決したのですが、依頼時だけでなく、相談時においても、「絶対大丈夫」というような助言をしてはならないということを改めて肝に銘じた出来事でした。

5 スポーツの場面では「絶対大丈夫」という自信のもと最善の結果を出すことも可能ですが、法的トラブルの場面ではそのように信じたことで新たな紛争が発生することもあります。
 弁護士は、法的トラブルに巻き込まれて不安になっている人に、「絶対大丈夫です」という言葉を使わずに、いかに安心してもらうため、どのような言葉をかけたらよいのかをいつも悩んでいるということ、一方依頼を受けた人が希望する結果を実現するために心の中で「絶対大丈夫」と自分に言い聞かせながら仕事を行っていることを知っていただけると幸いです。