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弁護士 荒井 剛
2021.08.25
2021.08.25
頭の体操
1 私は文系なので数学は得意ではありませんが、最近、確率が絡む問題で頭の体操をしました。論理学等で取り上げられることがあるため問題の内容自体は聞いたことがあるかもしれませんが「モンティ・ホール」、「二つの封筒」と呼ばれる問題です。
2 「モンティ・ホール」問題
これはアメリカのクイズ番組で実際に行われていたもので番組司会者のモンティ・ホールさんにちなんで名づけられました。
問題はこうです。
あなたの前に3つの扉があります。
1つだけ扉の向こうに車があります。
無事に正解の扉を開けたら車が当たります。
まずは1枚、好きな扉を選んでくださいと言われ、
とある扉を選びました。
ここで、正解を知っている司会者が、
残った二つの扉のうち外れの扉をわざと開けた上、
あなたにこう尋ねます。
選択する扉を変えますか?
この場合、選択する扉を変更したほうがいいか、
つまり、扉の選択を変更した方が当たる確率が高くなるのかというのがこの問題です。
直感的には、残る扉は二つしかなく、そのどちらかが正解なので、
選択を変えようが変えまいが確率は2分の1ではないかと。
したがって、選択する扉を変えたとしても確率は変わらない、
というのが正解かなと。
私もそう思いました・・・・・・
しかし、実際には、選択する扉を変更しない場合の確率は3分の1であるのに対し、選択する扉を変更した場合の確率は3分の2に上がるため、正解は、扉を変更すべきということになります。
直感と実際とが合致しないかもしれませんが、実際に想定されるパターンを書き出すとわかると思います。仮に、Aの扉が正解だとして、あなたがAを選択した場合には、BもしくはCに変更すると外れてしまいますが、あなたがBもしくはCを選択した場合には、司会者は、もう1枚の外れのB又はCを開けてくれるため、残るのはAということになり、選択する扉を変えたほうがいいということになります。
あるいは、ちょっと視点を変えて、Aという扉と、B、Cという二つの扉の二択とイメージするとわかりやすいかもしれません。これだと当たる確率は、前者が3分の1、後者が3分の2だというのはわかると思います。先の事例に沿って考えると、最初に選んだ扉を変更しない場合は3分の1のままですが、扉を変更する場合は、司会者によって開けられる扉を含めた2枚の扉を選択したのと同じことになるため、確率は3分の2となります。
実は、この問題、世界中の数学者を巻き込み大論争が起きました。
結局、扉の選択を変更したほうがいいとの結論で決着がついています。
3 「二つの封筒」問題
次に「二つの封筒」問題を見てみましょう。
問題はこうです。
ここに異なる金額が書かれた紙の入った封筒が二通あります。
どちらかの封筒を選び、紙に書かれた金額を受け取ることができます。
なお、一方の紙に書かれた金額は、もう一方の紙に書かれた金額の2倍です。
あなたは1通の封筒を選択しました。
ここで「選んだ封筒を取り換えてもいいですよ」と言われます。
さて、この場合、取り換えたほうがいいでしょうか。
直感的にもさすがにこれは2分の1ずつで変わらないでしょと思いますよね。
では、実際に考えてみることにしましょう。
最初に選んだ封筒の紙に書かれた金額を「x」と仮定します。
そうすると、残った封筒の紙に書かれた金額は「2x」か「0.5x」のどちらかになりますね。たとえば、Xが2万円だったとすると、残った封筒のほうは、4万円もしくは1万円ということになります。
つまり、封筒を取り換えれば、受け取る金額は4万円もしくは1万円ということになります。そうしますと、封筒を取り換えると2万円から4万円となり、2万円増える可能性があります。もちろん、逆に、2万円から1万円となり、1万円減る可能性もありますが、増える幅(2万円)が減る幅(1万円)より大きいため、取り換えたほうが得だということになりますね。期待値で表すと2.5万円になりますでしょうか。最初の封筒が2万円だとすると5000円期待値が高いため取り換えた方がいいということになりそうです。
・・・・あれっ??
もし取り換えた方がいいということになれば、おかしなことが起きます。
最初の封筒を選び、上のように考えて封筒を取り換えたとします。
そこで、あらためて「封筒を取り換えてもいいですよ」と言われたらどうでしょう?
やはり同じように封筒を取り換えたほうがいいという結論となり、また、取り換えるということになります。しかし、取り換えた封筒は、最初に選んだ封筒になります。
こうなるといつまでも封筒を取り換え続けるということになってしまいます・・・・
何かがおかしいですね。どこがおかしいのでしょうか。
実は、前提条件にない事実を勝手に確定させていたことが問題になります。
つまり、最初に選択した封筒の紙に書かれていた金額が「2万円」だと仮定しましたが、ここに問題があります。まだ、この時点で金額は決まっていない状況であるにもかかわらず金額を決めてしまったことに問題があります。つまり、仮に「2万円」だと仮定したとしてもその「2万円」と書かれた紙が自分の選んだ封筒に入っているのかどうかが確定できていないにも関わらず、それを自分の選んだ封筒に書かれた金額と設定していまっていることに問題があります。
次のように考えるとわかりやすいかと思います。
たとえば、「二つの封筒」の問題で、最初に選択した封筒を実際に開けてみた場合はどうでしょう。つまり、最初の封筒を開け、紙に「2万円」と書かれているのを確認した後で、「封筒を取り換えますか?」と聞かれた場合です。
この場合には、もう一方の封筒の紙には「4万円」もしくは「1万円」と書かれていることがわかりますので、先ほどの仮定の計算が活きてきて期待値が5000円高まる結果、封筒を取り換えたほうがいいという結論になります。
しかし、「二つの封筒」問題では、最初の封筒に書かれた金額をまだ確認できていません。これがポイントになります。
「二つの封筒」問題では、結局、「x」と書かれた紙が入っている封筒か、「2x」と書かれた紙が入っている封筒のどちらを選ぶかという単純な二択問題だということになりますので、封筒を取り換えても、取り換えなくても同じ2分の1ということとなります。
たとえば、二つの紙袋があり、ダイヤモンドと石ころのいずれかが入っているという場合と同じであり、最初に選択した紙袋であろうが、紙袋を取り換えようが、ダイヤが入っている確率は2分の1で変わりません。それと同じように考えれば「二つの封筒」問題も確率は2分の1のままのはずです。
結局、「二つの封筒」問題は、最初の直感が正しかったということになります。
4 ただ、直感が正しいといっても数字や数式を活用するなということではなく、
大事なのは前提条件・前提事実を正しく把握するということですね。
実は、最初の「モンティ・ホール」問題が大論争となった原因も前提事実をきちんと把握していなかった人がいたからともいわれています。
仮に、司会者が正解を知らず、残った二つの扉のうち一つを選択しただけであれば、確率は3分の1のままです。あるいは、司会者が正解を知らず、残った2枚の扉のうちの1枚を開けたらたまたま外れた状態で扉を選択しなおすかという問題であれば、確率は2分の1になります。しかし、司会のモンティさんは、正解の扉を知っています。知っているからこそ、確率が上がるということになります。面白いですね。
理系の人であればすぐにわかるかもしれませんが、文系の私にとってこの二つの問題は、いい頭の体操になりました。
弁護士の仕事に限りませんが、前提条件や前提事実が変われば、問題となる法的問題が異なりますし、戦略や結論が大きく変わることになります。
したがって、いかに前提となる事実を正確に把握することが重要なのかを再認識させられた問題でした。
2 「モンティ・ホール」問題
これはアメリカのクイズ番組で実際に行われていたもので番組司会者のモンティ・ホールさんにちなんで名づけられました。
問題はこうです。
あなたの前に3つの扉があります。
1つだけ扉の向こうに車があります。
無事に正解の扉を開けたら車が当たります。
まずは1枚、好きな扉を選んでくださいと言われ、
とある扉を選びました。
ここで、正解を知っている司会者が、
残った二つの扉のうち外れの扉をわざと開けた上、
あなたにこう尋ねます。
選択する扉を変えますか?
この場合、選択する扉を変更したほうがいいか、
つまり、扉の選択を変更した方が当たる確率が高くなるのかというのがこの問題です。
直感的には、残る扉は二つしかなく、そのどちらかが正解なので、
選択を変えようが変えまいが確率は2分の1ではないかと。
したがって、選択する扉を変えたとしても確率は変わらない、
というのが正解かなと。
私もそう思いました・・・・・・
しかし、実際には、選択する扉を変更しない場合の確率は3分の1であるのに対し、選択する扉を変更した場合の確率は3分の2に上がるため、正解は、扉を変更すべきということになります。
直感と実際とが合致しないかもしれませんが、実際に想定されるパターンを書き出すとわかると思います。仮に、Aの扉が正解だとして、あなたがAを選択した場合には、BもしくはCに変更すると外れてしまいますが、あなたがBもしくはCを選択した場合には、司会者は、もう1枚の外れのB又はCを開けてくれるため、残るのはAということになり、選択する扉を変えたほうがいいということになります。
あるいは、ちょっと視点を変えて、Aという扉と、B、Cという二つの扉の二択とイメージするとわかりやすいかもしれません。これだと当たる確率は、前者が3分の1、後者が3分の2だというのはわかると思います。先の事例に沿って考えると、最初に選んだ扉を変更しない場合は3分の1のままですが、扉を変更する場合は、司会者によって開けられる扉を含めた2枚の扉を選択したのと同じことになるため、確率は3分の2となります。
実は、この問題、世界中の数学者を巻き込み大論争が起きました。
結局、扉の選択を変更したほうがいいとの結論で決着がついています。
3 「二つの封筒」問題
次に「二つの封筒」問題を見てみましょう。
問題はこうです。
ここに異なる金額が書かれた紙の入った封筒が二通あります。
どちらかの封筒を選び、紙に書かれた金額を受け取ることができます。
なお、一方の紙に書かれた金額は、もう一方の紙に書かれた金額の2倍です。
あなたは1通の封筒を選択しました。
ここで「選んだ封筒を取り換えてもいいですよ」と言われます。
さて、この場合、取り換えたほうがいいでしょうか。
直感的にもさすがにこれは2分の1ずつで変わらないでしょと思いますよね。
では、実際に考えてみることにしましょう。
最初に選んだ封筒の紙に書かれた金額を「x」と仮定します。
そうすると、残った封筒の紙に書かれた金額は「2x」か「0.5x」のどちらかになりますね。たとえば、Xが2万円だったとすると、残った封筒のほうは、4万円もしくは1万円ということになります。
つまり、封筒を取り換えれば、受け取る金額は4万円もしくは1万円ということになります。そうしますと、封筒を取り換えると2万円から4万円となり、2万円増える可能性があります。もちろん、逆に、2万円から1万円となり、1万円減る可能性もありますが、増える幅(2万円)が減る幅(1万円)より大きいため、取り換えたほうが得だということになりますね。期待値で表すと2.5万円になりますでしょうか。最初の封筒が2万円だとすると5000円期待値が高いため取り換えた方がいいということになりそうです。
・・・・あれっ??
もし取り換えた方がいいということになれば、おかしなことが起きます。
最初の封筒を選び、上のように考えて封筒を取り換えたとします。
そこで、あらためて「封筒を取り換えてもいいですよ」と言われたらどうでしょう?
やはり同じように封筒を取り換えたほうがいいという結論となり、また、取り換えるということになります。しかし、取り換えた封筒は、最初に選んだ封筒になります。
こうなるといつまでも封筒を取り換え続けるということになってしまいます・・・・
何かがおかしいですね。どこがおかしいのでしょうか。
実は、前提条件にない事実を勝手に確定させていたことが問題になります。
つまり、最初に選択した封筒の紙に書かれていた金額が「2万円」だと仮定しましたが、ここに問題があります。まだ、この時点で金額は決まっていない状況であるにもかかわらず金額を決めてしまったことに問題があります。つまり、仮に「2万円」だと仮定したとしてもその「2万円」と書かれた紙が自分の選んだ封筒に入っているのかどうかが確定できていないにも関わらず、それを自分の選んだ封筒に書かれた金額と設定していまっていることに問題があります。
次のように考えるとわかりやすいかと思います。
たとえば、「二つの封筒」の問題で、最初に選択した封筒を実際に開けてみた場合はどうでしょう。つまり、最初の封筒を開け、紙に「2万円」と書かれているのを確認した後で、「封筒を取り換えますか?」と聞かれた場合です。
この場合には、もう一方の封筒の紙には「4万円」もしくは「1万円」と書かれていることがわかりますので、先ほどの仮定の計算が活きてきて期待値が5000円高まる結果、封筒を取り換えたほうがいいという結論になります。
しかし、「二つの封筒」問題では、最初の封筒に書かれた金額をまだ確認できていません。これがポイントになります。
「二つの封筒」問題では、結局、「x」と書かれた紙が入っている封筒か、「2x」と書かれた紙が入っている封筒のどちらを選ぶかという単純な二択問題だということになりますので、封筒を取り換えても、取り換えなくても同じ2分の1ということとなります。
たとえば、二つの紙袋があり、ダイヤモンドと石ころのいずれかが入っているという場合と同じであり、最初に選択した紙袋であろうが、紙袋を取り換えようが、ダイヤが入っている確率は2分の1で変わりません。それと同じように考えれば「二つの封筒」問題も確率は2分の1のままのはずです。
結局、「二つの封筒」問題は、最初の直感が正しかったということになります。
4 ただ、直感が正しいといっても数字や数式を活用するなということではなく、
大事なのは前提条件・前提事実を正しく把握するということですね。
実は、最初の「モンティ・ホール」問題が大論争となった原因も前提事実をきちんと把握していなかった人がいたからともいわれています。
仮に、司会者が正解を知らず、残った二つの扉のうち一つを選択しただけであれば、確率は3分の1のままです。あるいは、司会者が正解を知らず、残った2枚の扉のうちの1枚を開けたらたまたま外れた状態で扉を選択しなおすかという問題であれば、確率は2分の1になります。しかし、司会のモンティさんは、正解の扉を知っています。知っているからこそ、確率が上がるということになります。面白いですね。
理系の人であればすぐにわかるかもしれませんが、文系の私にとってこの二つの問題は、いい頭の体操になりました。
弁護士の仕事に限りませんが、前提条件や前提事実が変われば、問題となる法的問題が異なりますし、戦略や結論が大きく変わることになります。
したがって、いかに前提となる事実を正確に把握することが重要なのかを再認識させられた問題でした。