弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2021.08.11

歴史に残る東京2020

1 2021年7月23日から8月8日まで行われていた「2020年東京オリンピック競技大会」が終了しました。
  今年の4月、関東の裁判所へ行く用事があり、東京駅丸の内駅舎前に設置されているカウントダウン時計を見る機会がありました。
  ちょうどその日は、オリンピックまで100日という節目の日でしたが、新型コロナウイルス感染症のまん延防止等重点措置が発令されていたということもあり、カウントダウン時計の周辺には数人しか歩いておらず閑散した状態でした。



  このような様子を見て、本当に100日後にオリンピックが開催されるのだろうかと思いました。
  その後、東京都に緊急事態宣言が発令もされましたが、なんとかオリンピックは開催され、日本は過去最多の58のメダル(金27個、銀14個、銅17個)を獲得することができました。
  今回のコラムは、アスリートが活躍した話ではなく、オリンピックの開会式や閉会式のことに触れ、運営について思ったことを書いていきます。

2 57年ぶりに日本で行われる夏のオリンピックということで、テレビに釘付けとなり開会式や閉会式を見た人も多いのではないでしょうか。
  ただし、開会式や閉会式の感想は、人によって様々で、消極的な意見も多いようです。
  入場式では、珍しいものはゲーム音楽を使った入場、ピクトグラム、ドローンによる地球の演出くらいであり、それ以外はインパクトがあるような演出はなかったという意見もネットで見かけました。
例えば、タレントのデーブ・スペクターさんは、165億円使い7年間準備していてこんなものなのかと酷評されていました。
  閉会式についても、これといったという演出はなく、次回開催国のフランスの演出のほうが良かったという意見も見ました。
  
3 私個人としては、運営側の視点から見ていました。
  どうして運営する側の視点から見ていたかというと、2年前の2019年、北海道弁護士会連合会の定期大会の運営に関わったことがあり、そのときからまだ数年しか経っていないということもあって、運営していく側の大変さを思い出したからです。
  北海道弁護士会連合会とは、札幌高等裁判所管内にある4つの弁護士会の「旭川弁護士会」、「釧路弁護士会」「札幌弁護士会」「函館弁護士会」で組織されている会であり、定期大会では、1年に1回開催される、活動報告や会計報告、人権擁護に関わる宣言や決議を行う行事です。
  参加者の規模としては、300人程度であり、参加者の多くは道内の弁護士ですが、日本弁護士連合会の会長や副会長も参加されるほか、裁判所や検察庁の方も来賓として参加されます。
  定期大会の前には、記念シンポジウムも行われ、定期大会の後には懇親会も行われます。 
私はこの行事について事務局長という立場で関わっていました。
 この行事は、先ほど紹介した4つの弁護士会が、毎年持ち回りで開催しており、ある程度行事の内容や流れというものが決まっています。
釧路弁護士会で過去に開催された際の資料もあるため、それを参考に運営をしていくことになるのですが、いざ準備をするとなると簡単なものではありませんでした。
実行委員会の開催、各担当部会の開催、ホテルや旅行業者との調整、来賓者への招待の準備など、書ききれないほどの事前準備に追われていました。
いざ当日を迎えると、滞りなく各行事が終了するよう固唾をのんで見守っていました。
大きな問題もなく終了したときには、安心感を得たことと疲れを感じたことを覚えています。

4 東京オリンピックは、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が中心となって、日本オリンピック委員会や日本国政府、東京都、各種スポーツ団体などの関係団体と協力して、オリンピックの準備や運営が行われています。
  オリンピックは世界的なイベントであり、先ほど紹介した開会式や閉会式のほかに、メインである多数の協議大会の運営を行うことになります。
  どれくらいの人が運営に関り、準備にあたってどれくらいの打合せの時間がとられ、どれくらいの連絡や調整が行われたのかは、あまりにも大規模であり想像することはできません。
  これからパラリンピックが控えているとはいえ、オリンピックの閉会式が終了した時点で、運営にかかわった多く人は一安心したのだろうと、テレビを見ていて思いました。

5 開会式や閉会式の話に戻りますが、それなりの準備期間や多額のお金をかける以上、それに見合った内容にすべきという意見が出ることももっともだと思います。
  しかし、今回のオリンピックは、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、感染防止対策を徹底した上で行われることになりました。
  開会式や閉会式の内容についても、当初は、たくさん人を動員したり、もっと派手な内容で行われることを予定していたかもしれません。
  しかし、もともと予定していた2020年7月から1年間延期されることとなり、延期が決定した後もオリンピックを中止するのかという議論もある中、準備をしなければなりませんでした。
  パフォーマンスなども感染防止対策に配慮したものとしなければなりませんでした。
  令和3年6月のニュースによれば、オリンピックに関わる大会ボランティアが予定していた約8万人のうちおよそ1万人が、6月1日までに辞退したと報道されていました。ただでさえ人手が足りない中、開催直前に運営スタッフが大幅に減少したことで運営側としては頭を抱えたのではないかと思います。
  個人的には、これまでのオリンピックが行われたような同じ状況の中で開催されたものではなく、様々な部分で大きな制約を受けながら準備が進められ、内容自体も大きく修正しなければならない部分もあったと思われることからすれば、今回行われた開会式や閉会式は十分満足できたものであったと思っています。
  余談ですが、閉会式で、東京ヤクルトスワローズの応援の場でも使われる東京音頭が流れたときは、思わずテレビの前で喜びの声を上げてしまいました。SNSを見ていると自分を含めたスワローズファンは大歓喜しました。

6 サンデージャポンというテレビ番組で、「爆笑問題」の太田光さんが、コロナの中でお笑いイベントを企画する際、本当に盛り上げたいと思うことがあるけどここまでしかできないという限度があり、自分たちももうちょっとやりたいという気持ちや見ている人に申し訳ないという気持ちがあるという発言をされ、運営する側の葛藤や制限ある演出への理解を示されている姿勢を見て、非常に共感しました。
  東京オリンピックの招致のキーワードにもなった「おもてなし」を十分にできなかったことは、運営する側でも悔しいと感じているのではないでしょうか。
  それでも、海外の選手は、開会式や閉会式が良かったという感想やこのような状況の中オリンピックを開催してくれたことについての感謝を述べており、日本人として嬉しさを感じました。
  世界的に困難な状況の中、1年延期されて開催された東京オリンピックですが、日本が過去最高のメダルを獲得したというだけではなく、大きな制約を受けながられも無事に終えることができたという点でオリンピックの歴史に残るものになったと思います。
  オリンピックに参加した選手の多くが、大会を準備、運営した側へ、オリンピックを開催していただいてことについて感謝しているというメッセージを送っています。
  オリンピックのような巨大なイベントだけではなく、地域のお祭りなども現在の状況では、そもそも実施するのか、実施したとしてもどのような内容で実施するのか、運営を行う側は苦悩していると思います。
当然のことながら、イベントや行事が開催されるということは、その準備や運営に関わっている人がいます。関わってくれた人たちに感謝の気持ちを持つことは大切なことです。
今回のオリンピックは、そのような当たり前ですが大切なことを気づかせてくれることになった機会だったと思います。