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弁護士 鍛冶 孝亮
2021.05.25
2021.05.25
絵本の魅力
1 昨年の令和2年6月、絵本作家の田畑精一さんが亡くなりました。
代表作品として、『おしいれのぼうけん』があります。
保育園でケンカしたお仕置きとして、先生から押入れに閉じ込められた男の子2人が、押入れの中で不思議な体験をして勇気と友情で乗り切るという作品です。
女優の広末涼子さんも、たくさんの感情を受け取り、気持ちがいっぱいになる色あせない作品と絶賛しています。
私も小さいときに何度も読んだ作品です。
この前実家でこの絵本を見つけ、3歳の子どもに読み聞かせました。
興味は持ってくれたのですが、少し怖かったのか今のところ積極的に読んでほしいという感じではありませんでした。
2 田畑精一さんの作品に、『さっちゃんのまほうのて』という絵本があります。
妻の実家に行ったときに子どもが見つけ、読み聞かせをせがまれました。
小さいときに読んだことがある作品でしたが、子どもの視点で読むのと親の視点で読むのとではまったく違う作品であると感じました。
あらすじを説明します。
主人公のさっちゃんは、先天性四肢欠損により右手の指がない子どもです。
幼稚園でのままごと遊びでは、いつも赤ちゃんの役しかやらせてもらえませんでした。
あるとき、思い切ってお母さんの役をやりたいと友達に言ったところ、手のないお母さんは変だからなれないと拒絶されたことで大騒動となりました。
さっちゃんは幼稚園を飛び出して急いで家に帰り、お母さんに、なぜみんなとは違い自分の右手には指がないのかと尋ねます。
お母さんは、さっちゃんはお母さんのお腹の中で怪我をしてしまい指だけどうしてもできなかったこと、それがどうしてなのか誰にもわからないと説明します。
さっちゃんはお母さんに、小学生になったらみんなと同じように手がはえてくるのか尋ねますが、お母さんは小学生になってもはえてくることはないこと、この手はお母さんにとって大好きで可愛い手であることを伝えます。しかし、さっちゃんは、「いやだ、いやだ、こんな手いやだ」と泣き出してしまいます。
さっちゃんは、この日から幼稚園を休むことになります。その出来事の後、妊娠していたお母さんが弟を生みます。病院からの帰り道で、お父さんから、指がなくても素敵なお母さんになれること、不思議な力をもらえる魔法の手であるという言葉をかけてもらいます。この日以降、さっちゃんは以前の元気を取り戻して、友達とも仲直りをし、再び幼稚園に通うようになります。
子どものときにはまったくわかりませんでしたが、お母さんがつらい現実をさっちゃんに伝えるシーンは、お母さんの心情が痛いほど理解でき、胸にこみ上げてくるものがあります。
インターネットでこの作品の感想を見ていると、読んでいる途中で胸がつまり、読み聞かせを中断した方もいるようです。
子どもは、この作品から何を感じるのでしょうか。人とは違う特徴があっても仲間外れにしてはいけないこと、自分に人と違うところがあって強く生きていくことなど、人それぞれこの作品から感じるものは違うかもしれません。
個人的には、誰かのことを傷つけるとその子だけではなく、その子に愛情を注いでいる家族にも辛い思いをさせてしまうことになる、という点を気づかせる作品だと思っています。
親になってこの作品を読まなければ、このように思うことはなかったと思います。
3 私の母親は、白糠町でよみきかせの会を開いていたこともあり、私は小さいことからたくさんの絵本に触れて育ちました。
大人になってから絵本を読む機会はなかったのですが、子どもができたことで過去の読み聞かせてもらった絵本を自分が読み聞かせるようになりました。
今回紹介した『さっちゃんのまほうのて』のように、同じ作品であっても子どものときに読むのと親になってから読むのとで、違うメッセージを受け取ることができるところも絵本の魅力ではないかと思います。
または絵本では、小説などと違い言葉ですべて紹介していません。目で作品を読み取るのです。
『さっちゃんのまほうのて』で、さっちゃんの弟が生まれた直後の病室のシーンが描かれています。
そこでさっちゃんは、生まれたばかりの弟の体の一部を食い入るように見ています。さっちゃんがどうしてそのようなことをしているのかは何の説明もされていません。さっちゃんの行動の意味を読み手が考えることができることも絵本の魅力であると思います。
記憶というものは不思議なもので、30年以上前に読んだ絵本であっても、読んでいると自分が子どものときに興奮したシーンや悲しかったシーンを思い出してきます。
昔読んだ絵本を子どもに読み聞かせるときに、果たして自分と同じように感じるのかどうかを見るのも楽しみにしています。
代表作品として、『おしいれのぼうけん』があります。
保育園でケンカしたお仕置きとして、先生から押入れに閉じ込められた男の子2人が、押入れの中で不思議な体験をして勇気と友情で乗り切るという作品です。
女優の広末涼子さんも、たくさんの感情を受け取り、気持ちがいっぱいになる色あせない作品と絶賛しています。
私も小さいときに何度も読んだ作品です。
この前実家でこの絵本を見つけ、3歳の子どもに読み聞かせました。
興味は持ってくれたのですが、少し怖かったのか今のところ積極的に読んでほしいという感じではありませんでした。
2 田畑精一さんの作品に、『さっちゃんのまほうのて』という絵本があります。
妻の実家に行ったときに子どもが見つけ、読み聞かせをせがまれました。
小さいときに読んだことがある作品でしたが、子どもの視点で読むのと親の視点で読むのとではまったく違う作品であると感じました。
あらすじを説明します。
主人公のさっちゃんは、先天性四肢欠損により右手の指がない子どもです。
幼稚園でのままごと遊びでは、いつも赤ちゃんの役しかやらせてもらえませんでした。
あるとき、思い切ってお母さんの役をやりたいと友達に言ったところ、手のないお母さんは変だからなれないと拒絶されたことで大騒動となりました。
さっちゃんは幼稚園を飛び出して急いで家に帰り、お母さんに、なぜみんなとは違い自分の右手には指がないのかと尋ねます。
お母さんは、さっちゃんはお母さんのお腹の中で怪我をしてしまい指だけどうしてもできなかったこと、それがどうしてなのか誰にもわからないと説明します。
さっちゃんはお母さんに、小学生になったらみんなと同じように手がはえてくるのか尋ねますが、お母さんは小学生になってもはえてくることはないこと、この手はお母さんにとって大好きで可愛い手であることを伝えます。しかし、さっちゃんは、「いやだ、いやだ、こんな手いやだ」と泣き出してしまいます。
さっちゃんは、この日から幼稚園を休むことになります。その出来事の後、妊娠していたお母さんが弟を生みます。病院からの帰り道で、お父さんから、指がなくても素敵なお母さんになれること、不思議な力をもらえる魔法の手であるという言葉をかけてもらいます。この日以降、さっちゃんは以前の元気を取り戻して、友達とも仲直りをし、再び幼稚園に通うようになります。
子どものときにはまったくわかりませんでしたが、お母さんがつらい現実をさっちゃんに伝えるシーンは、お母さんの心情が痛いほど理解でき、胸にこみ上げてくるものがあります。
インターネットでこの作品の感想を見ていると、読んでいる途中で胸がつまり、読み聞かせを中断した方もいるようです。
子どもは、この作品から何を感じるのでしょうか。人とは違う特徴があっても仲間外れにしてはいけないこと、自分に人と違うところがあって強く生きていくことなど、人それぞれこの作品から感じるものは違うかもしれません。
個人的には、誰かのことを傷つけるとその子だけではなく、その子に愛情を注いでいる家族にも辛い思いをさせてしまうことになる、という点を気づかせる作品だと思っています。
親になってこの作品を読まなければ、このように思うことはなかったと思います。
3 私の母親は、白糠町でよみきかせの会を開いていたこともあり、私は小さいことからたくさんの絵本に触れて育ちました。
大人になってから絵本を読む機会はなかったのですが、子どもができたことで過去の読み聞かせてもらった絵本を自分が読み聞かせるようになりました。
今回紹介した『さっちゃんのまほうのて』のように、同じ作品であっても子どものときに読むのと親になってから読むのとで、違うメッセージを受け取ることができるところも絵本の魅力ではないかと思います。
または絵本では、小説などと違い言葉ですべて紹介していません。目で作品を読み取るのです。
『さっちゃんのまほうのて』で、さっちゃんの弟が生まれた直後の病室のシーンが描かれています。
そこでさっちゃんは、生まれたばかりの弟の体の一部を食い入るように見ています。さっちゃんがどうしてそのようなことをしているのかは何の説明もされていません。さっちゃんの行動の意味を読み手が考えることができることも絵本の魅力であると思います。
記憶というものは不思議なもので、30年以上前に読んだ絵本であっても、読んでいると自分が子どものときに興奮したシーンや悲しかったシーンを思い出してきます。
昔読んだ絵本を子どもに読み聞かせるときに、果たして自分と同じように感じるのかどうかを見るのも楽しみにしています。