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弁護士 荒井 剛
2021.04.28

脳のアップデート

アンデシュ・ハンセン著の「スマホ脳」が著者の母国スウェーデンのみならず、世界中でもベストセラーになっております。作者は、精神科医で、ノーベル賞選定で知られるカロリンスカ医科大学を卒業しています。この本は、進化論という視点から分析されており、現代病とも呼べるスマホ依存症に陥る脳の働きなどをわかりやすく解説してくれています。

「スマホ」といっておりますが、タブレットやインターネットを見るPCにもあてはまります。おそらく多くの人が実感していると思いますが、たとえば、インスタグラム・LINE・フェイスブックのSNS上の投稿を見ていると、たとえ自分自身が投稿していなかったとしても次々と別の人の投稿を何気なく、無意識にチェックしたりしているかと思います。また、何気なくネット上のニュースサイトを見ていると、トップに挙がってきているニュースのほか、左右に表示される全然関係のないニュースをついついクリックし、別のニュースをチェックし、さらにはそこのニュースから別のニュースと、次々と記事をクリックしてしまい、結局、気づいたら数分以上時間が経過していたという経験があると思います。

これはスマホを操作したり、ニュースをクリックしたりするたびに脳からドーパミンが放出されるような仕組みになっているからのようです。ドーパミンは、人に快感ややる気を起こさせる報酬物質とよく言われたりします。しかし、それだけではなく、記憶、注意、運動機能にも影響を及ぼします。

進化論との関係でいけば、わたしたち人間は猿人からホモ・サピエンスに進化したと言われております。ホモ・サピエンスが登場したのは10万年や20万年前とも言われておりますが、ホモ・サピエンス登場の頃の脳の容積と今の人類の脳の容積とはそれほど差異はないそうです。つまり、生物学的には今も脳と身体は狩猟民族だったサバンナにいるということです。サバンナで生きていくためには動物を狩る必要があります。狩りに出かけたところ獲物になりそうな鹿を発見したとします。そのとき、鹿だけに集中し、まったく周りに注意することができなかったらどうなるでしょうか。おそらく鹿を狩る前に、自分が獰猛な大型動物に襲われてあっという間にやられていたと思います。そうならないため一つのことに集中しすぎないよう周囲にも注意しながら行動することができるよう脳が指令を出しているのです。狩りをしつつ、周囲に危険な動物がいないかについても気を遣うよう指令を出すということです。狩猟時代と現代と比較すると、科学は圧倒的なスピードで進化しました。しかし、脳自体はそれほど進化していません。少なくとも科学の進化のスピードについていってはいません。

話をスマホに戻します。スマホの画面で次々とクリックしてしまうのは、周辺の記事やコメントにも注意して見るよう脳が指令しているからだというのです。なるほどなと思いました。意思が弱いというのではなく脳の構造上の問題ということですね。

次々とクリックすることで多様なニュースに触れたり、新しい情報に接することができ、自己満足にもつながりますので、プラスの側面はあります。しかし、問題なのは、無意識に次々と気になるように仕組まれていることで、気がつくと本来やるべきことすらやっていないという事態に陥る可能性があるという点です。作業が中断されることで、記憶力、集中力、他者とのコミュニケーション能力にも悪影響を及ぼすことが問題です。そして、スマホを見ることで放出されるドーパミンの量は、若者のほうが成人より多いため、若者のスマホ依存症がより問題になるということになります。

スマホ依存症を改善するために一番いいのはスマホ自体を手放すことですが、それは今の社会では無理です。じゃあ、どうすればいいのでしょうか。

著者曰く、とにかく週3回程度、30分から45分程度の運動(ランニング、ウオーキング)が効果的であると紹介されています。しっかりとした睡眠も必要ですが、重要なのは週3回、各30分から45分の運動です。なぜ運動がいいのでしょうか。科学的に運動を行うことで脳が活性化することが証明されているからです。たとえば、回し車を動かし続けたマウスとそうでないマウスと比べると回し車を動かし続けたマウスの脳の老化が遅かったことがわかったりしています。村上春樹氏は、小説を執筆する際、毎日、必ずランニングと水泳をして夜9時には寝るという生活をしているそうですし、スティーブ・ジョブズは、動きながら議論するのがいいアイデアを生み出すと考え、「ウオーキング・ミーティング」を実践していたそうです。

運動がいかに脳を活性化させるかについては、著書の別の書籍「一流の頭脳」に詳しく書かれています。この本も大変お薦めですので、お時間があれば是非、これもお読みいただくといいと思います。

結論からいえば、脳は、運動することによって、年齢を重ねても活性化させることができるし、アップデートさせることができます。脳の細胞は、年齢を重ねるごとに、日々、減少していく一方だと言われておりましたが、それは事実と違います。

高齢者の陸上競技で30個以上の世界記録を樹立したカナダのオルガ・コテルコさんは77歳になるまで本格的な陸上トレーニングすらしたことがなかったのですが、運動を継続したことで彼女の脳の海馬は他の人より大きくなっていたことがわかりました。

現代人を悩ませているあらゆる心身の不調は、昔に比べて身体を動かさなくなったことが原因だと言われています。なるほどと思いましたね。

しかし、いまやスマホ・ネットはなくてはならない時代です。

完全にスマホ・ネット社会から離れることができればいいですが、それは現実的ではありません。そこで、せめて週3回程度、45分の適度な運動をし、脳をアップデートすることを心がけることにしましょう。