弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2020.11.25

「あきらめない」=「認めない」?

11月上旬、アメリカで大統領選挙が行われました。大接戦の末、民主党のバイデン候補が勝利したと報道されております。しかし、トランプは、選挙に不正があったと主張し、敗戦を認めていません。法廷闘争にまで持ち込むつもりであり、最後まであきらめないとも言っているようです。このトランプの態度を、潔くない、と批判する声が多いと思います。ただ、英語にはもともと「潔い」という意味を持つ単語はないと思います。試しに、グーグルで「潔い」「英語」で検索すると”clean”と出てきました。人としてクリーンだというのと「潔い」というのとはまた意味が異なるかと思います。トランプの態度は「潔くない」というのともちょっと違うなと思いながら高校時代に自分が体験したエピソードを思い出しました。

これまでのコラムでも触れたことはありましたが、私は、高校時代、父の仕事の都合でアメリカに住んでいました。ロスアンゼルスから車で40分、海岸沿いの郊外にある公立高校に通っていました。割と白人層が多い地域で、白人系が5割、アジア系(インド、韓国、中国、日本、イラン等)が4割、そして、ヒスパニック、黒人系が1割といった感じでした。

私が高校2年生の頃だったと思います。当時、クロスカントリー部に所属していましたので、とにかく毎日走らされていました。日によって走る距離は違うのですが、3マイル(4.8キロ)から10マイル(16キロ)を連日走っていました。大会が一通り終わり、シーズンオフに入り、誰が来年のキャプテンになるのかが話題に上る時期のある日、いつものように走っていたときでした。その日は、割と長めのコースを走るトレーニングメニューでしたが、オフシーズンで気が緩んでいたためか、途中でランニングをさぼり、10人位でサッカーをして遊んだことがありました。ちょうど、コース沿いに、ミニサッカーができるほど広い庭がある空き家がありました。しかも、藪が邪魔して沿道からは庭の様子が見えないためサボって遊ぶためには絶好の場所でした。空き家は、コースの序盤あたりにありましたので、この空き地から、折返し地点まで走り、さらにこの空き地に戻るまでにかかると思われる時間だけ、この空き地で過ごしてから、走って戻れば、怪しまれずに済むというズルい作戦です。サボりの常連が最初からサッカーボールを空き地に用意していたようでした。

その日、私は、ライアンという同学年の白人の子と一緒にランニングをしていましたが、私とライアンは、サボり魔からの誘いに乗ってしまい、一緒にサッカーを楽しんでしまいました。そこで、楽しくサッカーをしていたら、突然、部員の誰かが、「監督に見つかった!監督がこっちに向かっている!逃げろ!」と叫びました。藪が邪魔しているとはいえ、庭に入ってきてしまえば、完全にばれますので、これはやばいなと思い、パッと周りをみたら、よほどサボり慣れているのか、さっきまでワイワイ楽しくサッカーをやっていた仲間は、あっという間にいなくなっていました。そこで、私とライアンは、慌てて逃げ出し、何事もなかったかのようにゴールに向かって走り始めました。その帰りのランニング中、ライアンから、監督に見つかったかな、もし見つかったら俺キャプテンになれないかなあ、でも俺絶対キャプテンになりたい、どうしたらいいかな、正直に自分から監督にサボっていたことを告白したほうがいいかななどと相談されました。監督は、トレーニングをサボり、空き地でサッカーをしていた部員がいるという事実は把握していました。具体的に誰がいて、全部で何人サボっていたのかまで正確に把握していなかったかもしれませんが、ライアンもいたことは薄々わかっていたと思います。

ライアンは非常に悩んでいました。ライアンは、性格もよく、先輩・後輩からも慕われるナイスガイでした。まさに次年度のキャプテンにふさわしい人物でした。

ただ、監督は、非常に厳格で、トレーニングをサボるような奴はキャプテンに指名しないと言っていましたので、ここでライアンがサボっていたことがバレたらまずキャプテンにはなれません。そこで、彼は悩んでいました。キャプテンはあきらめたくない。自分から素直にサボったことを告白するか、それともサボったことは一切認めないと白を切るか。キャプテンになるためにはどちらを選択すべきか。

私は、日本的発想なのかもしれませんが、まだキャプテンになる前の段階ですし、気の緩みで間違いをおかすこともあるため、ここは潔くサボったことを認めて謝罪したほうがむしろキャプテンとして相応しいと思うし、監督もそう思ってくれるのではないかと言って、ライアンに自白することを勧めました。

しかし、ライアンは、自白するのではなく、サボったことを認めないという選択をしました。

結果、監督は、彼を次年度のキャプテンに指名しました。

監督は、おそらくライアンもサボっていたことはわかっていたはずです。
キャプテンになることをあきらめないために取るべき道は、サボったことを認め、謝罪する、ではなく、サボったことを最後まで認めない、だったわけです。
つまり、「あきらめない」=「認めない」ということでした。

ライアンが「あきらめない」=「認めない」という選択をしたこと、
そして、その選択を、キャプテンとして相応しくない行動だとは監督が考えなかったことに
驚きました。

ちなみにこの監督も白人です。
もちろん、白人だからといって白人全員が同じ価値観を持っているということはないですが、このときに日本とアメリカ(とりわけ白人)の価値観の違いを痛感しました。
どちらがいいか悪いかということではなく、価値観が違うことを認識した出来事でした。

トランプ大統領の言動を見ていると、「あきらめない」=「認めない」というライアンの選択を思い出しますし、そのような価値観だからこそアメリカでは訴訟が多いのだと思いますね。