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弁護士 小田 康夫
2020.11.4

改正民法の講義をしました@なかまっぷ2階(中標津町商工会)

10月29日水曜日14時から、中標津町の「なかまっぷ」にて、中標津商工会から要請を受け、「建設業者向けの民法改正講義」を行いました。建設業業者に関わる民法は、売買や請負に関する規定の変更点ですので、その範囲に絞って(民法の改正範囲は広く、条文数でいうと300条を超えるものとなっています)、

①請負業者がクレームを受けた場合の処理=担保責任の考え方の変更
②担保責任の期間制限=「知った時」基準への統一
③消滅時効は基本的に5年となりました。
④根保証の規制が厳しくなりました。

について、簡単ですが、講義を行いました。
当日は2時間弱、私の経験談や雑談を交えながら、パワーポイントと口頭で講義を行いました。私も数多くの講義を受けてきましたが、講義の直後は、「わかった!」と思っていても、講義から1週間も経つと、忘却の彼方へ・・・となることが非常に多い。
今回のコラムは、講義を受けた参加者の方へ、講義の文字起こしをしたものです。補足も入っていますので、復習用にお使いいただけると良いかと思います。
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まず、民法はいつから変わったか、です。
2020年4月1日から変わりました。もう変わった、ということですが、重要なのは、その前の取引、つまり、2020年3月31日までの契約は、改正前の民法が適用されるということです。
そして、「民法が大改正されたらしいけど、よく知らない」「何がどう変わったのか」という素朴な疑問を応える前に、確認をしておくことがあります。そもそも、民法とは何かというところです。民法は、簡単にいえば、人と人との間の主に取引を規律するものです。規律するというは、ルールを決めたものという程度の意味です。日用品でも、「売った」「買った」という場合、民法上の売買のルールが適用されます。みなさんが扱うもので、建設業に関わるルールも「建築資材を仕入れた」という場合には、売買のルールが適用されます。元請から依頼をされて、「屋根を張った」という場合には、請負のルールが適用されます。いずれも、民法です。
じゃあ、問題ですが、常に、民法(という法律)が適用されるか。
答えは、「NO」です。民法は、何らかの取引をした際、当事者間に(明確な)合意がない場合に適用されるのが原則となります。例えば、個人間でお金を貸したという場合、消費貸借契約という契約が成立しますが、利息について何も合意しなかった場合は、「利息なし」(民法589条1項)となります。利息を払うとだけ合意して、利率の合意をしていない場合は、民法404条2項が適用されて、年3%となります。利息を当事者間で、年5%と定めれば、その合意が優先されます。
この民法404条2項の規定のように、当事者間の合意が法律のルールに優先される場合、当該法律が定めるルールは、任意規定と言います。逆に、後ほど出てくる保証人の規定は、保証人保護のための民法の趣旨に反する合意は無効となるなど、例外的に民法が適用されて、合意があってもそれが無効となるものがあります。そのような規定は、強行規定と言います。
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さて、それでは、事例を簡単に設定して、話をしていきたいと思います。
まずはストーリーで考えましょう。
①個人事業主で屋根の設置をするBさん。
②取引先のAさんから部材(建築資材)を仕入れて、
③発注先のC(元請)から、依頼を受けて、
④依頼のあった、Dのところで、D牛舎の屋根を設置することになりました。

ここで、上記の「A→B→C→D」の関係が、民法上、どのように整理されるかというと、
A(売主)とB(買主)との間の契約は、売買契約です。
B(下請)とC(元請)との間の契約は、請負契約です。
C(請負人)とD(注文主)のとの間の契約は、請負契約です。
では、BとD(注文主)との関係はどうなるでしょうか。会場のみなさん、どうでしょうか。ここは、契約関係はありません。Bが「屋根を張りましょう」と約束をしたのは、Cさんに対してですから、あくまで、Dさんは、関係ありません。ただし、Bが明らかなミスをした場合、DはCに対して請負契約に基づいて、クレームを入れる(担保責任を追及する)ことは可能ですから、CからBに対して、同様に、クレームが入るでしょう。また、Bが重大なミスをして、Dが怪我をしてしまったという場合には、不法行為責任、つまり、契約関係がなくとも責任を負うことはあります。
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ここまでの理解は大丈夫でしょうか。さて、ようやく改正法の中身に入っていきます。まずは、「①請負業者がクレームを受けた場合の処理=担保責任の考え方の変更について」です。
改正前の民法では、みなさんも聞いたことがあると思いますが、「瑕疵」「瑕疵担保責任」という言葉が使われていました。例えば、先ほどの事例で、Aから仕入れた、建築資材に穴が空いているという場合、Bは、Aに対して、瑕疵担保責任を追及して、代替品を請求したり、損害賠償請求をしたり解除をしたりすることができます。
改正民法では、この瑕疵担保責任が、「契約不適合責任」という言葉に変わりました。内容はそれほど変わっていません。
話は少し変わりますが、もともと、「瑕疵」という言葉には、無理がありました。「瑕疵」というと漢字で書くと、「キズ」です。つまり、物理的に何か問題があるケースが対象になるということはいいのですが、例えば、アパートの賃貸借契約で、アパート内で自殺をした方がいた、借りた当時は知らなかったが、1年後に気づいたので、賃貸借契約を解除したいという場合、そのような解除は、認められていました。これは、契約の目的物に「心理的」瑕疵があるという説明がされました。つまり、「瑕疵」という言葉、広く、契約の目的に沿って、本件でどのようなモノを提供するのか当事者の意思に合致(適合)するか、という観点から、決められていたのです。改正法では、その点を明確にしたところに意味があります。また、改正にあたって、一部、請求権を追加しました。つまり、仕入れた商品に欠陥(契約不適合)があった場合、「買主は売主に何が言えるか」、いわゆる担保責任の規定の中に、
「追完請求権」(修理や交換を求める権利)を、認めました。
例えば、ある建築資材(オーダーメイド)を仕入れる際に、建築資材に欠陥があれば、改正民法では、買主が、売主に対し、修理や交換を求めることができるようになりました(追完請求)。そして、追完請求を売主が拒否すれば、「代金減額請求」が可能ということにしました。従前の、改正前民法では、代金減額請求は(法文上)認めていませんでした。やや専門的ですが、請負契約では、注文主の、請負人に対する損害賠償請求権と、請負人の、注文主に対する請負代金請求権を相殺し、実質的な代金減額請求は(技術的には)可能でした。
改正民法では、「売買でも請負でも代金減額請求が可能になった」「代金減額請求権を明確に権利として認めたことで処理が簡便になった」という部分だけ理解しておけば問題ありません。
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改正法では、代金減額請求が認められたという話をしました。
もっとも、買主側(注文者側)で注意すべき点があります。欠陥があったら、「すぐに代金減額だ!」と主張する事はできないということです。まずは、買主は売主に対し、「修理してくれ」「ちゃんとしたものと交換してくれ」(=追完請求)と連絡したうえで、
※この「連絡」には、内容証明郵便など、証拠が残るものが望ましいでしょう。

それでも相当の期間、修理してくれない、交換してくれないという場合に初めて、

減額請求が可能です。というのも、追完請求をせずに、代金減額を認めると売主も予期しない損害を受けてしまうためです。なお、この「連絡」は、売主(請負人)保護を目的としていますから、売主(請負人)が修理をしない意思を明確にしている場合などには、追完請求の連絡をする必要はなく、いきなり減額請求が可能です。
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さて、次に、「②担保責任の期間制限=「知った時」基準への統一について」です。
改正前民法は、「知った時」から1年で担保責任の追及は制限されるとか(売買の買主)、「引き渡し時」から1年で担保責任の追及は制限されるとか(請負の注文主)、というように、「いつから時効がスタートするのか」(=基準)がバラバラでした。
しかも、1年という期間制限も、5年だったり10年だったりと幅があり、請負人が作る物が何なのかにより、場合分けが必要でした。
改正民法では、この辺りをすっきり簡潔にしました。すなわち、欠陥を「知った時」から「1年」で担保責任は制限される、としたのです。
ただし、商人間での売買の場合は、欠陥後通知をすぐに(直ちに発見できなくとも6か月以内に)行わないと、担保責任は追及できなくなってしまいます(商法526条2項)。また、買主や注文主が欠陥を「知った時」が10年先でも、20年先でも、100年先でもよいか、というと、そうではありません。消滅時効のルールも適用があります。すなわち、「権利を行使することができる時」(改正民法166条1項2号)から、10年で制限されると考えられています。例えば、買った商品の引渡しを受けた後、欠陥を知らずに、
〇半年たって欠陥に気が付いた→請求OK
〇5年たって欠陥に気が付いた→請求OK
〇9年たって欠陥に気が付いた→請求OK
×10年たって欠陥に気が付いた→請求NG
です。
この「請求OK」の場面でも、欠陥に気が付いたら「1年以内」に「通知」が必要です(売買→改正民法566条本文。請負→637条1項。なお、目的物の「種類又は品質に関」する契約不適合に限定しているため、数量不足の場合は1年の期間制限の適用を受けない)。逆に、この「請求NG」の場面でも、欠陥により買主・注文主が大きな怪我をしたなど不法行為に該当するものは、「20年」となります(724条)。このように、担保責任の期間制限を考えるにあたっては、消滅時効や不法行為のルールを知っておく必要があります。
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そこで次に「③消滅時効は基本的に5年となりました。」について見ていきましょう。
改正前は、1年や2年や3年などの職業別の短期消滅時効の規定がありました。また、貸金業者が個人にお金を貸す場合は5年、個人間の貸金なら10年と消滅時効の期間がバラバラでした。
そこで、改正法では、
「知った時」から5年(改正民法166条1項1号)
「権利行使することができる時」から10年(同項2号)
という基準に統一しました。
例えば、商品を売った代金を買主が支払ってくれない場面(債権回収の場面)で、買主に対して請求できるのは、売買から5年間までです。消滅時効のルールが出てくるのは、債権回収の場面が通常でしょう。10年間の消滅時効は、適用場面が限定的なので、前述したような「担保責任の期間制限」のところで出てくるという理解でとりあえずは十分です。代金を払ってもらう側=売主、請負人としては、「5年たったら、時効になる」「さっさと請求して、債権を回収しよう」ということになります。
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最後、「④根保証の規制が厳しくなりました。」についてです。最後なので、さらっと解説しますが、今回改正で、個人根保証(つまり、不特定債務について個人が保証人となる保証)は、すべて、保証人が責任を負う最大額(極度額)を定める必要があります。極度額を定めない契約(無限責任を定めるもの)は、無効となります。改正前は貸金の根保証の場面に限定していましたが、それが賃貸借や継続的売買契約の根保証の場面にも適用される形となりました。これまで、よくあったのが、子どものアパートの契約をする際、親が無限責任を負うというケースです。現在もあるかもしれません。少なくとも改正法上は、そのような、極度額の定めがないものは無効となりますので、契約上、保証の範囲が明示されていない場合には、請求されても、「保証債務を負いません」と拒絶できることになります。
また、(法人ではない)個人が保証をする場面で、公正証書を作成しなければならない場面があります。例えば、事業の運転資金を銀行から借り入れる際、友人が保証人となるケースなどです。
さらに、この友人が情報提供を求めた場合には、主債務者である会社や借りた本人は、自己の財産や収支、ほかに借金があるか否か、担保として提供するものがあるか否かについて説明をする義務があります。仮に、その説明にウソがあり、それによって、友人が保証人となってしまった場合で、銀行がそれを知っていたか、知ることができた場合には、友人は保証契約を取り消すことができます。
銀行の立場で考えれば、借主が、「保証人は、友人Eさんに、依頼しようと思っている」と言い出したら、貸付自体を断ることが多いでしょう。事業主からすれば、第三者に保証人を依頼してまで、運転資金を借り入れることは、「このご時世、難しくなった」ということです。なお、事業資金を借り入れる際に、代表者個人が保証人となるケースが多く、そのようなケースでは、公正証書は不要であり、自社の会社の事ですから、情報提供義務違反となるケースは、あまりないでしょう。
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以上が、今回の民法改正で建設業者の方に関わり問題になるところとして、ピックアップしたものです。ほかにも、改正法では、法定利率が5%だったのが、3%になりました。この3%というのも、3年ごとに見直される予定です。利息の関係でいえば、商事法定利率6%でしたが、それがなくなり、民法の規定と同様のルールとなりました。ほかにも相続法が変わり配偶者居住権という制度ができたり、時期がずれますが、自筆証書遺言は全文自署ですが、その要件が緩和されたりしています。
まだまだ、話足りないところですが、時間が来ましたので、本日の講義はここで終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。