弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2020.10.14

ゲームと条例

1 ファミコンで発売された『スーパーマリオブラザーズ』が今年で35周年を迎えたということで、Nintendo Switch用ソフトとして『スーパーマリオブラザーズ35』が現在配信されています。
  内容は、『スーパーマリオブラザーズ』の各ステージをオンライン上で同時に35人がプレーし、最後の1人になるまで走り抜けるバトルロイヤルゲームとなります。このゲームの面白いところは、自分が倒した敵が他のプレイヤーに送りこまれるところです(自身にも他のプレイヤーから敵が送りこまれます)。
  ゲーム開始は、送りこまれる敵もクリボーやノコノコなどの弱い敵で苦労はしないのですが、徐々にハンマーブロスやクッパといった強敵が登場します。
知り合いから勧められてやってみましたが、かなり上手いプレイヤーも多く、最後の一人になるのはかなり難しいです。
  初めてスーパーマリオブラザーズをプレーしたのは約30年になりますが、令和になった今でも面白さは衰えていない名作だと感じました。

2 物心ついたときにはゲームが身近にあった私の世代は、ゲームを通じて成長してきました。
  そのため、ゲームを規制するということに極めて敏感です。
  今年3月18日、香川県議会で、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」が可決・成立し、今年の4月1日から施行されています。
  この条例では、18歳未満の子どもの保護者に対し、子どものゲームの利用時間は1日当たりの60分まで(学校などが休みの日は90分まで)という基準を定め、このルールを遵守させるよう努めなければならないとしています。
  これまでゲームの利用時間について、学校などで指導がなされることはあったと思いますが、条例で基準を定めたのはこの条例が初めてです。

3 この条例は、制定の前から多くの反対意見がありましたが、条例は成立することとなってしまいました。
  条例施行後、香川県弁護士会からは、条例の廃止などを求めた会長声明が発出されています。この会長声明でこの条例の問題点が整理されています。
・ 香川県でネット・ゲーム依存症が「大きな社会問題となっている」との社会的事実がないこと
・ 憲法13条が定める子ども及びその保護者の自己決定権を侵害するおそれがあること
・ 教育の内容及び方法に対する公権力の介入は抑制的であるべきという憲法上の要請に違反していること
・ 「子どもの権利条約」で定められている「児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利」及び「子どもが意見を聴取される権利」を損なうものであること
条例の制定にあたり、パブリックコメントも募集されましたが、通常の期間の半分である2週間で募集を締め切っていること、賛成意見の大半が同じ書式同じ文章であること、賛否を集計したものでないにも関わらず賛否の数を公表されたこと(そのため県民の8割が賛成しているという間違った印象を与えたこと)、パブリックコメントの内容は概要のみしか開示されず県議会議員は内容を十分に確認できないまま審議されたことといった問題点が指摘されています。

4 ゲームのやりすぎによる学力や体力の低下、睡眠不足や視力低下などを防止する必要性は否定しません。
  しかしこの点も昔からいわれたものであり、現在になって出てきた問題ではありません。
  私も子どもの頃はゲームには熱中してしまい、親から1日の上限時間を決められたことがあり、そのルールを破った場合には、ゲーム機のコンセントを隠させるなどされました。
  ゲームの利用時間は、それぞれの家庭の中で、保護者と子どもが話し合って決めるべきものであり、地方自治体などの公権力が介入すべきものではないと思います。
条例で平日のゲーム時間は60分以下と定められているから、60分までしかゲームはできないといわれても子どもは納得するでしょうか。子どもは隠れてゲームをするのがオチです。 
  一方的に決められたルールを子どもに守らせるのではなく、子どもの意見を聞いた上でルールを決めなければ、子どもも納得しないと思います。
  条例が定めている時間自体何ら根拠に基づくものではありません。
  ゲームは昔から一部の人間から目の敵にされてきたと思います。
例えば、社会的に話題となる犯罪をした人がゲームに熱中していた場合には、あたかもその人がやっていたゲームが犯罪に繋がったのかのように報道されることもあります。
  今回の条例も「ゲーム障害」、「ゲーム依存」などもっともらしい言葉を使って、ゲーム時間の制限をしていますが、その中身が一体なんのかは条例を見てもわかりませんし、条例でゲーム時間を制限しなければならないほど、香川県で「ゲーム障害」や「ゲーム依存」が問題化していないことは、先ほど紹介した香川県弁護士会の会長宣言でも触れられているとおりです。
  ゲーム、漫画、ネット、SNSなど子どもたちが熱中しているものを制限すれば、子どもたちの健やかな成長を望めると安易に考えている人たちがこの条例の制定を考えたのではないかと思っています。
  
5 条例の廃止に向けて、一人の高校生が立ち上がりました。
9月30日、高松市在住の高校生が香川県に対して、条例は憲法に違反するとして、損害賠償を求める裁判を提起しました。
この裁判の費用はクラウドファンディングで募集したところ、600万円以上のお金が集まったようです。全国的にこの条例に疑問を持っている人が多くいる証拠です。
長い裁判になると思いますが私も応援しています。