弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2020.07.29

「誹謗中傷」の書込み規制について

 7月29日、市民パーソナリティとして地元FMくしろのラジオの番組に久々に出演しました。約3か月ぶりでした。毎回、リクエスト曲を流してもらうのですが、今日は「マン・ウィズ・ア・ミッション」の“Colours”という曲をリクエストしました。”Fly Again”、 “Take Me Under”といったノリのいい曲ももちろん大好きですが、綺麗なギターソロから入り、ギターソロで終わるこの曲を結構気に入っています。タイトル通り、人生の様々な場面を様々な色に例えて歌詞にしています。この曲を聴くと前を向いて行こうという気持ちになります。ちなみに、私がこれまでどんな曲をリクエストしてきたのかについては、「2か月に1度のラジオパーソナリティーと私のリクエスト曲」(http://www.ak-lawfirm.com/column/1131)という過去のコラムでも触れていますのでこちらをご覧いただければ嬉しいです。

 さて、この3か月間、世間は新型コロナ一色という感じがしておりますが、今年の5月、テレビ番組に出演中だった20代の女性がSNS上で誹謗中傷を受けて亡くなったという悲しいニュースがありました。今回のFMくしろのラジオでも、SNSの誹謗中傷問題をテーマに取り上げていただきました。

 SNS上の「誹謗中傷」の書き込みが人の名誉を害し、人命にまで影響を及ぼしていることは事実です。「匿名」による書き込みは、誰でも簡単にでき、特に内部告発のような場面ではメリットである反面、発信者がすぐに特定されないため内容が過激なもの、誇張されたものになりやすいというデメリットがあります。

 さきほどのニュースが報道された後、匿名で「誹謗中傷」の類を投稿していた人たちは、こぞってSNS等に書き込んだ「消えろ」「不愉快」といった投稿を自主的に削除したり、ネット上の中傷問題を取り扱う弁護士事務所に対し、匿名であっても「身元が特定される可能性があるのか」という問い合わせをするケースが多くなっているそうです。身元が特定されなければ何を書き込んでもいいと思っていたのでしょうか。本当に卑怯極まりないです。それだったら最初から書き込むなと言いたいです。

 身元が特定されるのであれば、明らかに今よりSNS上の「誹謗中傷」は減るでしょう。
現在の法制度であってもプロバイダ―責任制限法に基づき、発信者の情報開示請求(正確にいうと二段階、①「サイト管理者」に対するIPアドレスの情報開示請求、②「プロバイダ」に対するIPアドレスから発信者を割り出すための情報開示請求)を行い、開示された情報を基に、特定された投稿者に対し、損害賠償請求を求めたりすることができます。しかし、実際に開示請求をし、賠償が認められるまでの時間と費用がかかりすぎるという問題があります。少なくとも発信者情報の開示が認められるまでも半年ほどかかり、それからようやく民事裁判で賠償請求するという流れになります。さらに、賠償実務上、誹謗中傷による名誉棄損等の損害額の相場は50万円前後とも言われています。情報開示、民事裁判を行うために50万円以上の費用をかけて、50万円前後の賠償金しか認められないということであれば、残念ながら、泣き寝入りしてしまう人が大半ではないかと思います。

 だったら、発信者の情報をすぐに開示すればいいではないかと素朴に思うかもしれません。実際、現在、有識者の間では、発信者の開示を求める司法手続きを簡略化できないかという議論がなされていると言われています。

 ただ、逆に、安易に発信者情報の開示が認められるのであれば、「誹謗中傷」にはあたらない政治的批判だったり、企業の不祥事を内部告発するような内容であったとしても、身元が簡単に特定されてしまう危険があるのであれば、このような投稿自体を控えてしまうことにつながります。投稿を控えること、つまり、萎縮(いしゅく)してしまうことを萎縮効果と呼びますが、安易な発信者情報開示は、表現の自由に対する萎縮効果となってしまうため慎重にならないといけません。

 表現の自由は重要な人権といわれています。それは、自分の主義・主張を対外的に表現することで自分の尊厳を確保することにつながるという点のほか、民主主義の基礎として必要不可欠であるという点です。つまり、主権者である国民が自由に意見を表明し、議論することによって政策決定のプロセスに関与することができますが、これは自由な意見表明の場が保障されてはじめて機能します。だからこそ表現の自由が重要だといわれています。もし、SNS上の書き込みの発信者情報が安易に開示されることになれば、自由な意見表明を委縮させてしまうことにつながるという意味で慎重にならざるを得ません。

 SNS上の「匿名」投稿に対する規制は、表現の自由の保障とのバランスが難しいと言われているのはこのような点にあります。
そうすると、誹謗中傷により被害を受けたという裁判において、せめて裁判所で賠償額を増額させるという判断をしてほしいと思いますね。
ただ、これも時間と費用をかけて、実際に裁判を起こす必要があります。

 そもそも「誹謗中傷」による投稿をしなければ一番いいわけです。もともと、一方的に特定の人に対し、匿名で、かつ、みんなでよってたかって誹謗中傷することは卑怯なことです。
卑怯なことはしない、卑怯な言動をとらないということを子どもの頃からもっと強く教えるべきだと思います。ダメなものはダメなのであって、理屈ではないと思っております。

 一人一人が卑怯なことはダメだという意識を常日頃から持ってほしいな、そう強く願いながら、今日は、マン・ウイズの“Colours”をリクエストしました。皆さんも是非聞いていただきたい曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=v8gU2qi-un0 (ユーチューブ参照)