弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2020.05.29

もやもや

 最近、テレビやネットで話題となったニュースでモヤモヤしています。

 非常事態宣言が出て、不要不急の外出を控えている中、かつ、検察官の定年延長問題が取りざたされていることを認識していながらマスコミ関係者と賭けマージャンをしていた東京高検の黒川検事長。あまりに軽率な行為であり、驚きを禁じ得ません。刑法上の「賭博罪」として立件もされず、かつ、人事院の懲戒処分の指針で「賭博」をした者は、懲戒処分として、減給もしくは戒告処分にするとされているにもかかわらず、懲戒処分にも該当しない「訓戒」処分になったことは本当に釈然としません。また、レートがいわゆる「点ピン(1000点100円)」であれば、実質的上、処罰されないと判断したといえるのではないでしょうか。

 一般的に、賭博は罪であると教えられていると思います。刑法上も「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」場合を除き、賭博罪は成立します(185条ただし書)。「一時の娯楽に供する物」とは、すぐにその場で費消することのできる菓子や食事等を指し、金銭であれば、およそこれに該当しないというのが判例の見解です。となると、レートを問わず原則として賭けマージャンをすれば賭博罪が成立することになります。ただ、実際には、暴力団との関わりが疑われているという場合等は別として、レートがいわゆる点ピンにとどまっている限り、私人同士での賭けマージャンも「賭博罪」として起訴されないといわれています。ここはすごくモヤモヤするところです。ここはひとつ「点ピン」であれば「一時の娯楽に供する」ものとするというようなガイドラインを作成してほしいものです。

 実は、賭博罪は、もともと何故処罰されるのか、その規制根拠が明確ではありません。
よく言われるのが、健全な勤労意欲・勤労秩序を守るためという見解です。しかし、賭博が勤労秩序を害するというのであれば競馬、競艇等の公営ギャンブルは何故許されているのか説明がつきません。また、あくまで賭博をする個人が浪費のあまり健康を害したり、財産を失ったりするからその個人の健康や財産を守るためという見解もあります。しかし、他人の権利を侵害しない限り、自分が自分の財産をどう使おうと自由なはずですので、単純賭博罪が成立する理由を説明できないことになります。上記見解のほか、賭博が罪になるのは、競馬、競艇、オートレースのような公営ギャンブルを通じて得られる国家財源を確保するためという見解もあります。無条件に賭博を認めると公営ギャンブルによって得られる財源が減ってしまうためこれを防ぐという視点です。公営ギャンブルが法制化されている現状を直視した現実的な見解であり、なるほどと思います。この見解に従えば、国家財政にさしたる影響を与えない少額の賭け事は、「一時の娯楽に供する物」に該当するから賭博罪は成立しないといえることになります。

 ただ、公営ギャンブルによる収入確保のためという視点であれば、麻雀はやるが、競馬、競艇等の公営ギャンブルを一切やらないという人の場合、そもそもその人の賭け金はもともと国家に入ることはないので国家財政に影響しないともいえます。やはりなぜ賭博罪が成立するのか明確には説明できない気もします。そうなれば、麻雀も公営ギャンブルの一つとして制度化してしまえという意見が出てくるかもしれません。
 結局、モヤモヤしてしまいます。

 こんなときは大三元でもあがってすっきりしたいです。

 もう一つモヤモヤしたことがありました。
 とある新聞記事を読んで軽くモヤモヤしたというお話です。

 記事によれば「訴状と書かれた書面の封書が届いた」との相談が4月ごろから警察署に複数件寄せられているため特殊詐欺被害につながりかねないとして、注意を呼び掛けているという内容でした。身に覚えのない訴状などが届いた場合、記載された電話番号に絶対に連絡しないで、家族や警察に相談してほしい、と締めくくっています。たしかに、まったく身に覚えがない場合には、「訴状」と書かれていたとしても、偽物の「訴状」であり、裁判と称して金をだまし取ろうとする詐欺ケースが大半だとは思います。しかし、実際(本物)の裁判でも、裁判所からまさに「訴状」と記載された書面が被告宛てに送達されることになります。仮に、訴えられる覚えはないと思っていたとしても何も反論しないで放置しておくと、訴えられた内容を認めたことになってしまい、敗訴判決を受けてしまうことがあります。たとえば、金を支払えという内容の裁判を起こされたとして、借りた覚えすらない、あるいは全額返済しているので返す必要がないという場合には、少なくともそのことをきちんと主張しておく必要があります。何も反論せず放置しておけば、金を借りたことや返済していないというように判断されてしまいます。実在する裁判所からの本物の「訴状」なのか、特殊詐欺被害につながりかねない偽の「訴状」なのか、後者ならそのまま放置して構わないと思いますが、前者であれば絶対に放置すべきではありません。新聞記事では、家族や警察に相談してほしいとありますが、場合によっては家族や警察も「訴状」の真偽の区別がつかないこともあるのではないか、さすがに弁護士であれば、訴状が本物かどうかの区別はつきますので、家族や警察のほか、弁護士にも相談したほうがいいのではないかなとモヤモヤしたというお話です。