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弁護士 鍛冶 孝亮
2020.05.14

こども、子ども、子供

1 最近、平成生まれの若者に問題を出して全員正解だと賞金を獲得できるという番組や日本人の何割が知っている問題を出すという番組が流行っています。
突然、5月5日は何の日かと質問されたら即答できますか。
大半の人が、カレンダーを見るまでもなく、「こどもの日」と答えることができると思います。
  ところでどうして「こどもの日」なのか。「子どもの日」又は「子供の日」と表記されないのか分かりますか。
  答えられないと、とある番組では「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られてしまうかもしれません。
  今回は、どうして「こどもの日」なのか。「こども」を漢字で表記すると、公的には、「子ども」又は「子供」のどちらが公的なものなのかをお話していきます。

2 公的な表記としては、公用文(国や公共団体が法令や公用の文書などに用いる文章)が基準になります。
官公庁で作成する文書は、分かりやすくバランスがとれたものでなければならず、各部署で統一したルールに基づき作成しなければなりません。そのため公用文が存在します。
  そのルールの1つに、公用文では、常用漢字表に基づく漢字を使用するというものがあります。
  常用漢字表とは、内閣が一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安を定めたものとなります。
  文化庁によれば、この常用漢字表の範囲(2136字)を身に付けておけば、社会で用いられる漢字の96%程度は理解できるという見方もあると紹介されており、日本人として最低限知っておかなければならない漢字が定められているといっても良いと思います。
  (参考)文化庁広報誌 ぶんかる
  https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/kotoba/kotoba_009.html
 常用漢字表では、「こども」の漢字は、「子供」を使うとされています。
  先ほど紹介したように、公用文は常用漢字表に基づく漢字を使用するルールがあるため、公的には「子供」と表記することが正しいことになります。

3 ところが、実際の公文書では、「子供」と統一されておらず、「子ども」と表記されることが多いです。
「子ども・子育て支援法」や「子ども・若者育成支援推進法」という法律名も、「子供」とは表記されておりません。
このように、「子供」ではなく「子ども」を使用することになった経緯は、「供」は当て字(漢字の本来の意味に関係なく、音や訓を借りてあてはめた漢字)であり特別な意味を持たないこと、「供」の漢字が「お供え物」を連想させ使用することが不適切であるからといわれています。
公的の表記として、ルール上は「子供」と表記することが正しいですが、「子ども」と表記することも広く使われているため、どちらが正しい表記なのかは、はっきりと結論付けることはできません。

4 日本の教育や文化の所管する行政機関である文部科学省も、ルール上「子供」と表記すべきであるところ「子ども」と表記していました。
  ところが、平成25年6月、文部科学省は省内の公文書では、今後「子供」と表記するようになりました。
  「完ぺき」、「戦りつ」、「憂うつ」といったように、漢字から成る熟語の一部を仮名書きにする交ぜ書きは、日本語の使い方としては正しくありません。
文部科学省は、正しい日本語を表記するために、「子供」に統一したのではないかと考えます。
ただし、「子供」と表記するのはあくまでも省内での公文書に限るとされています。で
文部科学省の方針変更に他の省庁も従ったという話も聞いておりませんし、公用文以外には、文部科学省も「子ども」と表記しており、現在も統一は図られていません。

5 以上のとおり、常用漢字表に従えば、公的には「子供」と表記すべきですが、「子ども」も使用されているため、公的な表記方法としてはどちらも正しいといえます。
  一般市民がどちらを使用するのかは、一人一人の考え方によると思います。
ちなみに、私は、日本弁護士連合会や釧路弁護士会の子どもの権利委員会の委員なのですが、どちらも「子ども」を使用していることや、柔らかい感じがするため、「子ども」と表記するようにしています。 
  さて冒頭の質問に戻りますが、5月5日は、どうして「子どもの日」又は「子供の日」と表記しないでしょうか。
  これは「国民の祝日に関する法律」で決まっているからです。
  この法律では、祝日として「こどもの日 五月五日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」とし、条文で「こども」は平仮名表記としています。
  したがって、「こども」と表記するのが正しいことになります。
平仮名で表記されているのは、漢字を習う前の子どもも読めるようにという配慮されているからではないかと思います。
  今回調べて初めて分かったのは、こどもの日は母に感謝する日にもなっていることです。
  こどもの日が祝日に制定されたのは昭和23年です。医療が発展した現在も出産は母親にとって命がけです。こどもの日の制定に関わった人は、命がけで子どもを産んでくれた母親にも感謝すべきという意味を込めたのかもしれません。
  もちろん、父親や祖父母といった子どもに関わる人すべてに感謝することも否定されているわけではないと思います。