弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

ヘッダーイメージ
ご相談の予約・お問い合わせ

釧路本店

概 要
〒085-0017
釧路市幸町6丁目1番地2号AKビル

TEL

0154-32-0515

受付時間

平日9:00~17:00

無料駐車場完備

中標津事務所

概 要
〒086-1128
標津郡中標津町西8条北5丁目1番地13

TEL

0153-72-8121

受付時間

平日9:00~17:00

無料駐車場完備

釧路弁護士会バナー 法テラスバナー 勤務弁護士募集
弁護士 鍛冶 孝亮
2020.04.16

キャッシュレス時代

1 買い物や外食をしているのに財布のお金が減っていないという一見不思議な現象がある人は、キャッシュレス決済サービスを利用している人だと思います。
令和元年10月から消費税税率の引上げと同時に、経済産業省によるキャッシュレス・消費者還元事業がスタートしました。
  ほとんどの人が、「C」の文字に✔がついているマークを店頭で見たことがあると思いますが、そのマークをつけているお店は還元事業対象の事業者になります。
  対象のお店でキャッシュレス決済を行うと、代金の5%または2%の還元を受けられることになります(ポイントで還元される、請求額から引かれるなど還元方法は決済方法で異なります)。消費税が8%から10%へ上がりましたが、もし5%の還元を受けられるのであれば、増税前よりも負担額は小さくなります。
  この還元事業は、令和2年6月までとなっています。
  還元事業が終わったとしても、便利なキャッシュレス決済を止めて現金決済に戻るとは考えにくいです。還元事業をきっかけにキャッシュレス決済をするようになった人も大勢いると思いますが、この便利な決済方法でこれからも安全に使用していくために、今回のコラムは仕組みなどについて書いていきます。

2 キャッシュレス決済手段としてはどのようなものがあるでしょうか。
  以下のように分けることができます。
 (事前チャージ型)
  デビットカード、電子マネー(事前チャージ型)が代表的なものといえます。
  電子マネー(事前チャージ型)としては、交通形ICカードやコンビニやスーパーで独自で発行しているチャージ式のカードになります。
  事前チャージ型の電子マネーであれば、決済と同時にチャージしていたお金が減ります。チャージした金額以上に決済を行うことはできないため、キャッシュレス決済手段の中でも比較的安全な決済方法かもしれません。
  デビットカードも、決済と同時に預金口座からお金が引き出され、残高以上に使うことができないため、同じく安全な決済方法といえます。
 (事後支払型)
  クレジットカードが代表的なものです。
一定期間に使用した分を後払いで支払います。
自分が持っているお金よりも高額の取引をしてしまった場合には、請求された額を支払うことができないことになります。
(混合型)
  電子マネーの中には、クレジットカード付きのものがあり、残高が0円になるとクレジットカードを利用して残高を自動的にチャージするものがあり、クレジットカードでの支払に近いといえます。
クレジットカード付きほうがポイントの付与率が高いため、事前チャージ型の電子マネーではなくクレジットカード付きの電子マネーを持つ人もいます。
  最近では、スマートフォンを利用して、バーコードやQRコードで決済する方法も増えています。この場合、支払方法を選択できます。
事前にチャージした範囲で支払をする方法、クレジットカードと連携させクレジットカード会社による事後請求とする方法、携帯電話料金と一緒に後日請求してもらう方法、買い物などで貯まったポイント払いとする方法などです。
  このようにキャッシュレス決済といっても手段は様々です。
そして実際の支払方法も各手段によって固定化しているわけではありません。
  キャッシュレス決済は、手持ちの現金を使うことなく取引を行うことができるだけであり、いずれかのタイミングで自身のお金がなくなることには変わりはありません。
いつどのようにお金がなくなるのかを把握した上で、キャッシュレス決済を行う必要があります。

3 キャッシュレス決済の意義はどのようなものなのでしょうか。
  経済産業省では、キャッシュレス決済の推進には、以下の意義があると紹介しています。
  (消費者)
・消費履歴の情報のデータ化により家計管理が簡易になる
  ・現金を持ち歩かずに買い物ができる
  (事業者)
  ・レジ締めや現金取り扱いの時間を短縮できる
・キャッシュレス決済に慣れた外国人観光客の需要を取り込める
・データ化された購買情報を活用した高度なマーケティングを実現できる
消費者の一人としての感想ですが、レジで財布からお金を取り出したり、お釣りをしまう手間が省けるためスムーズに決済できますし、航空会社のマイルやポイントが付与されるため、現金で購入するよりもお得です。
何より、クレジットカードの明細を見れば、いつどこで何を購入したのか把握できます。現金取引の場合、レシートを残していなければ正確な内容がわかりません。
このようにキャッシュレス決済は非常に便利なものだと感じています。

4 一方で、キャッシュレス決済は、手持ちの現金で取引をするものではないので、その仕組みを十分に理解して利用する必要があります。
  弁護士として、自己破産の申立てや破産した人の破産管財人の業務を行っていると、キャッシュレス決済を行うには自己管理が要求され、しっかり自己管理できていないと自己破産に至ってしまうことを痛感します。
  自分自身の支払能力を考えることなく、クレジットカードで多額の買い物をして多重債務状態に陥るということはその典型でしょう。
  クレジットカード取引は、事後的に購入代金を支払ってくれるという信用取引の1つです。誰かに借金して商品を購入し、後ほど借りたお金を返すという形と何ら変わりはありません。
  クレジットカードは魔法のカードではなく、署名や暗証番号を入力することで借金をすることができる恐ろしいカードともいえると思います。
  最近問題となっていると感じているのは、スマートフォンを利用してのキャッシュレス決済を行い、その支払方法を携帯電話料金に上乗せし支払うようになっているケースです。
このような支払方法は、クレジットカードと同じ後払い方式の支払ですので、自己管理ができない人は利用すべきものではありません。
自己破産を弁護士に依頼すると、キャッシングやクレジットカード取引を行うことを依頼した弁護士から禁止されます。
しかし人によっては、スマートフォンを利用してのキャッシュレス決済がクレジットカード取引と同じであると理解できず、依然として使用している人もいます。
このことがわからないと、破産した後に再び支払で首が回らなくなり危険性があるため、このような決済方法をしている人に私はその仕組みをしっかり説明するようにしています。
人からお金を借りたりクレジットカードなどを利用しないで、手持ちの現金だけで生活していれば、借金で生活ができなくなることにはならず、破産をする必要はありません。
クレジットカードを含めたキャッシュレス決済は、非常に便利なものですが、しっかりと仕組みがわからなければ、自己破産に至るものものでありますので、少しでも心配な方はキャッシュレス決済は使用せずに、現金取引を行うほうが良いかもしれません。

5 キャッシュレス決済は、非常に便利な仕組みですし、ポイントの付与など現金で購入するよりも得になることもあります。
  しかし、先ほど述べたように、仕組みを十分に理解した上で、自分自身で管理する能力が必要です。
  キャッシュレス決済を利用されている方は今の決済方法は自分にとってふさわしいのか、これから始める方は自分にとってふさわしい決済方法を吟味し利用をしていただきたいと思います。