弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2019.11.14

使用は一生の苦しみ

1 11月6日、田代まさしさんが覚醒剤を所持していた疑いで逮捕されたニュースが流れました。
  田代まさしさんは、過去に覚醒剤を所持・使用していたとして実刑判決を受け服役をしていたことがあります。
  一方で、自らの体験をもとに薬物依存症の人たちの社会復帰を支援する活動を行っており、11月23日には、広島市で行われる「再犯防止シンポジウム」で講演する予定だったようです。
なお、田代まさしさんが、本当に覚醒剤を所持や使用していたのかどうかは、これからの捜査、起訴された場合には裁判の中で判断されることになるため、現時点で覚醒剤に関与していることは確定的ではないことをはじめに述べておきます。

2 田代まさしさんの逮捕のニュースを見て、「意思が弱いのではないか」という感想を持った人もいるかと思いますが、覚醒剤の刑事事件を担当したことがある法曹関係者は、改めて覚醒剤の恐ろしさを感じたと思います。
 厚生労働省の調査によれば、覚醒剤事犯として平成28年に検挙された者の再犯率(覚醒剤事犯の検挙人員のうち再犯者数の比率)は64.9%と高い数字です。
  私も覚醒剤を使用したとして捕まった人の刑事弁護を数多く担当しました。担当した人の中には、再犯を繰り返して、人生の長い時間を刑務所で生活している人もいました。
  同じ人を2回弁護したこともあります。一度目の裁判で、もう二度と覚醒剤を使用しないと約束して服役をしたのですが、再び覚醒剤を使用して捕まり弁護をすることになった場合には、何ともやり切れない気持ちになりました。

3 覚醒剤を止めることができない理由はその依存性にあります。
依存の中身としては、覚醒剤を使用したくて我慢ができなくなる精神的依存、使用ができないと体調に不快症状が出る身体的依存があります。
  覚醒剤を自分の意思で止めることが困難なのは、このような依存性があるからです。
  また、覚醒剤を止めて数年経過していても、ストレスや飲酒などが契機となり、脳が覚醒剤を使用していたときの状態を思い出し、幻覚や妄想といった精神病の症状に襲われるという「フラッシュバック現象」があります。
  せっかく覚醒剤を止めていたにもかかわらず、フラッシュバック現象を契機に再び覚醒剤を使用してしまうこともあります。
  このように一度でも覚醒剤を使用してしまうと、脳に記憶され一生悩まされることになります。

4 覚醒剤を止めるためには、覚醒剤による依存症を克服することが必要ですが、自分一人だけでは克服することが難しいです。
覚醒剤などの使用による薬物依存症から回復して社会復帰を目指すための民間のリハビリ施設であるダルクが存在します。
覚醒剤使用者の再犯防止のためには、刑罰(刑務所に入れる)だけではなく、このような治療・社会復帰を目指す施設が必要だといわれています。
  ダルク(DARC)の由来は、Drug(薬物)・Addiction(依存)・Rehabilitation(回復)・Center(施設)の頭文字を組み合わせたものです。
  ダルクは、本人の意思だけでは薬物依存症を回復することが難しいということを前提に、同じく薬物依存症で悩んでいる者同士によるグループセラピーを中心に、回復の向けた手助けが行われています。
  道東では、帯広市にとかちダルクが存在します。
 田代まさしさんもダルクで薬物依存症から回復を目指していました。

5 そもそも覚醒剤を入手できなければ覚醒剤を使用することはできません。
覚醒剤と縁を切ろうとしている者へ、覚醒剤を売りつける売人の存在こそが、覚醒剤使用者の社会復帰を阻害しています。
  覚醒剤使用者が出所すると、どこからか情報を仕入れるのか、その人に覚醒剤の購入を持ち掛け、再び覚醒剤を使用させる売人が存在します。
以前担当した刑事事件で巧妙だと感じた手口は、一度目は無償で渡すところです。目の前に覚醒剤を見せられ、しかもお金もかからないとなると手を出してしまいます。2回目以降はしっかりとお金をとり、再び覚醒剤の常習者に仕立てあげるのです。
  捜査機関も、覚醒剤が流通することがないよう覚醒剤の入手先を捕まえるという捜査を行っていますが、いまだに覚醒剤を売る者はなくなりません。

6 田代まさしさんには、多くの仲間や支援者もいたと思いますし、何より一番回復を望んでいたのは田代まさしさん本人だったと思います。
もしも、田代まさしが覚醒剤に関与していたのであれば、意志が弱かったという話ではありません。どれだけ強い意志を持ち、依存症の回復を目指す仲間や支援者がいても、止めることが困難である恐ろしいものが覚醒剤であるということです。
  一度でも使用すると一生苦しむことになる覚醒剤の恐ろしさが広く世の中に知れ渡り、これ以上覚醒剤に手を出さない人が増えないことを望みます。
そして、過去に覚醒剤を使用しまったものの、苦しみながら覚醒剤との縁を断ち切ろうとしている人が社会復帰できるために、薬物依存についての理解が深まるとともに、薬物依存の対策が充実することを望みます。