弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2019.09.26

空き地が変わる?

 以前、釧路市の人口が減少し、市内の「空き家」が増えてきたこと、その空き家も老朽化して危険だというコラム(「空き家が多くなっています」2017.6.28)を書きました。

http://www.ak-lawfirm.com/column/1075

 しかし、これはあくまで「空き家」を問題としており、「空き地」は問題にしていません。「空き家」の場合、所有者が不明の場合ももちろんありますが、所有者がわかっていても所有者側で建物を解体するだけの費用を負担することができない、あるいは所有者が別の地に住んでいるため「空き家」の状況を把握しないまま「空き家」として放置しているといった事情があることが多いです。

 これに対し、「空き地」問題では、その空き地の所有者がそもそも誰なのか、どこにいるのかがわからないというケースが多いです。それによって土地の利用が阻害され、土地が有効利用されていないという問題が生じます。このような土地のことを「所有者不明土地」と呼びます。

 では、なぜ所有者不明土地が発生するのでしょうか。

 その主な原因は土地の所有者が死亡しても相続登記をしていないことにあると指摘されております。平成30年版土地白書によれば、平成28年度に地籍調査を実施した1130地区(563市区町村)の62万2608筆の土地中、不動産登記簿で所有者等の所在が確認できなかった土地の割合は、驚くことに20.1%もあったそうです。これは相続登記の申請が土地所有者に義務付けられていないからでしょう。

 仮に、ある土地を利用したい、あるいは購入したいと思い、その土地の所有者を探索したとしても、20%の割合で、そもそも所有者等の所在が確認できないということになります。また、探索といっても、登記簿上、所有者として記載されている人が生きているのかどうかもわかりません。探索の結果、土地所有者が死亡していたというケースは決して珍しくありません。もし、土地所有者が死亡していた場合にはその相続人を確定させる必要があります。その確定作業がなかなかしんどいです。

 私が実際に担当した案件でも土地者不明土地問題で頭を悩ましたことがありました。
依頼者は自営業者の方で、自分の土地に自営のための建物を建てて営業していたところ、実は、建物が隣地の一部にかかっていたため、隣地を取得したいというお話でした。すでに建物を建ててから20年以上が経過していましたし、隣地の固定資産税についても何故かその依頼者が納税管理者として指定されこれまでも支払い続けていたため、時効取得が認められる案件といえますが、きちんと判決で認めてもらった上で登記を移転する必要があります。そこで、隣地の所有者が誰なのか調査しました。所有者は判明したのですが戸籍上、その人物は明治生まれの方でした。戸籍上、死亡したということであれば、その方の相続人をさらに調査する必要がありましたが、戸籍上、死亡したかどうかさえも不明でした。そこで、その方を被告として裁判を提起し、公示送達(郵便が届かない場合に特別に認められる送達手続き)を利用してどうにか判決を得て登記を移転することができたというケースがありました。これは、名義人がそもそも死亡しているかどうかさえ不明な事案でした。

 また、次のような事案もありました。自分が所有する土地上に設定された過去の地上権登記を抹消してほしいという案件でした。地上権の期間が経過していれば簡単に抹消できるなと思い、登記をみると大正時代に設定されていたものでした。当然地上権の存続期間は終了しております。ただ、地上権者は個人ではなく法人でした。釧路管内の土地でしたが、実は、地上権者であるその法人は誰でも知っている財閥の大企業でした。したがって、その大企業の法務部にでも問い合わせ、事情を説明すれば簡単に抹消できると考えました。ところが、法務部に問い合わせてもその資料がなく、協力したくても協力できないという回答でした。そこで、さらに調べていくと、その法人は、戦後、GHQによって強制的に解散されていたことが判明しました。これは登記だけみてもまったくわかりませんでした。その財閥の歴史について書かれた書籍をネットで見つけ、その書籍を購入してはじめてわかったと記憶しております。結果、地上権者として登記されていた法人は、すでに完全に消滅し、まったく存在しない法人となっていましたので、簡単に抹消することができず、除権決定という極めて特殊な手続きを経てようやく登記を抹消することができました。

 二つの事案は、相続人問題で頭を悩ました事案ではないですが、所有者不明土地問題の事件だったといえます。二つの事案とも時効取得を認めたり、地上権登記が抹消されたとしても名義人にとって実質的に何ら不利益はないはずですのでもっと簡単に登記手続きができないものかと常々思っておりました。そんな不満が来年以降、少し解消されるかもしれません。
 
 実は、現在、法務省の法制審議会(民法・不動産登記法部会)では、相続登記の義務化等を含めて相続等を登記に反映させるための仕組み、登記簿と戸籍等の連携等による所有者情報を円滑に把握する仕組み、土地を手放すための仕組み等が検討されています。

 たとえば、相続登記の申請を土地所有者に義務付けることが検討されております。また、相続人間で遺産分割協議をすることのできる期間を制限するということも検討されております。さらに、これは相続とは少し離れるのですが、土地の所有権の放棄を可能とする制度も法制審議会では取り上げられております。所有権は、物を自由に使用することができる権利である以上、その所有権を放棄することも自由だという考えもあります。ただ、不動産については土地所有者の都合で勝手に放棄することができるとすれば、固定資産税を支払いたくないという理由で放棄したり、あるいは、たとえば廃棄物が埋設されているような環境汚染された土地も自由に放棄することができてしまい、不都合です。そこで、現在は、勝手に土地を放棄することができないことになっております。それを一定の場合に限り、土地の所有権を放棄することができるようになるということが検討されております。果たしてどのような条件のもとで土地所有権を放棄することができるようになるのかが気になりますね。

 この所有者不明土地問題に関係する法改正の議論は、かなりのスピード感で進んでいます。
令和元年に民法・不動産登記法部会の第1回法制審議会が開催されましたが、2020年までに必要な制度改正の実現を目指すと言われています。通常、法制審議会で議論される場合、実際に法案が国会に提出されるまでに少なくとも数年以上かかると言われているところからすれば、今回の改正議論がかなりのハイペースで進んでいることがお分かりいただけるかと思います。

 ちなみに法務省の法制審議会の内容や議事録は公開されておりますので、どのようなことが話し合われているのか詳しい情報をご覧になりたい方は法制審議会のホームページにアクセスしていただければ閲覧可能です。

http://www.moj.go.jp/shingikai_index.html