弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2019.06.13

動物愛護法について

1.少し昔の話になりますが、チワワに一目惚れしたおじさんがそのチワワを衝動買いするという消費者金融のCMがありました。
  このCMがきっかけでチワワがブームとなり、ペットショップでたくさんのチワワが売られていきました。
しかし、このCMには、動物を衝動買いすることについての批判がありました。
  可愛い犬を見たら今すぐにでも飼いたくなる気持ちはわかりますが、飼育することは、毎日の餌やり、散歩、掃除から、病気や老犬になったときにも責任をもって対応する義務があります。
  動物を衝動買いすることの批判は、相当の覚悟をもって飼育しようとしているのかという点にあると思います。

2.先日動物に関する法律の研修会に参加しました。
研修会では、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)の内容を勉強したため、今回はこの法律のことを紹介させていただきます。
  話が脱線するかもしれませんが、研修会では、法律の内容の話に入る前に、日本は諸外国に先立って、動物を保護する法令が制定されていたという話がありました。
  それは、歴史の教科書で勉強する徳川綱吉が制定した「生類憐みの令」のことです。現在の法律の勉強をしているときに、江戸時代の話が出てくるとは思っていませんでした。
 研修会の後、調べてみたのですが、「生類憐みの令」よりもさらに昔、日本に仏教が伝わった8世紀頃、動物の肉食や殺生を禁止する法令も制定されていたようです。
動物の立場からすれば、保健所に捕獲され殺処分される今の時代よりも、「生類憐みの令」が制定されていた時代のほうが過ごしやすかったのかもしれません。

3.動物愛護法の内容を説明していきます。
  多くの法律には、第1条にその法律の目的が規定されています。
  動物愛護法では、動物の虐待や遺棄の防止、動物の適正な取扱いや愛護に関する事項を定めて、人と動物の共生する社会の実現を図ることが目的であると定めらえています(1条)。
  法律の勉強をすると、基本的な法律である民法や刑法では、動物は「物」として扱われていると習います。
民法には、動物に関する条文があります(民法195条、同法718条)。195条は、飼育している野生の動物(猿、ウグイスなど)が逃げ出した場合に、捕獲者の所有を認める規定であり、718条は動物の飼育者に、その動物が他人に損害を与えた場合に損害賠償の責任を負わせる規定です。動物の愛護に関する規定は民法にはありません。
刑法には、そもそも動物という言葉は出てきませんが、他人が飼育している動物を殺傷した場合には、「物」を損壊させたとして、器物損壊罪(刑法261条)が成立することになります。
  このように、生きている動物を、テレビ、パソコンなどの「物」として扱うことに違和感を抱く人も多いと思います。
  しかし、動物愛護法では、動物を命あるものと規定し(2条)、人と共生する対象と扱っており、動物に関する基本である法律として意義深いものとなっています。
  動物愛護法では、動物の飼育者(所有者や占有者)の責務、動物取扱業者の責務、行政機関の責務が定められています。
  今回のコラムでは、動物の飼育者の責務や虐待に対する罰則を紹介します。

4.動物の飼育者の主な責務は以下のとおりです(7条)。
・ 命あるものである動物の愛護や管理の責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、動物の健康及び安全を保持するように努めること。動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加えるなど人に迷惑を及ぼすことのないように努めること(同条1項)。
・ 飼育している動物の感染性の疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うように努めること(同条2項)。
・ 飼育している動物の脱走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めること(3項)。
・ 動物がその命を終えるまで適切に飼養することに努めること。(同条4項)
・ 飼育している動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めること(同条5項)。
 動物を飼育する以上、当然のことが列挙されていると思いますが、わざわざ法律で規定しているということは、残念ながら現実は誰しもがこのような認識で動物が飼育しているわけではないことを意味します。

5.動物を虐待し、その動画をインターネットで配信するなどの事件が後を絶ちません。弱く反抗できない動物を虐待することは卑劣な行為です。
  動物愛護法は、愛護動物の遺棄、虐待、みだりな殺傷に対する刑事罰を定めています。
  愛護動物とは、「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」(44条4項1号)と「人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」(同項2号)と規定されています。
犬や猫などの身近な動物以外に、飼育しているモルモットなどの哺乳類、文鳥などの鳥類、イグアナなどの爬虫類も対象になっています。
  愛護動物をみだりに殺傷した場合、2年以下の懲役又は200万以下の罰金に処すると定められていました(同条1項、改正前の法定刑、改正による法定刑の引上げは後記します)。
  愛護動物をみだりに虐待(給餌や給水をやめる、酷使する、健康や安全を保持することが困難な場所に拘束し衰弱させる、飼育や保管している愛護動物が疾病にかかったり、負傷しても適切な保護を行わないことなど)した場合には、100万円以下の罰金に処すると定められています(同条2項)。
愛護動物を遺棄した場合も同様に100万円以下の罰金に処すると定められています(同条3項)。  
  どのような行為が、罰則の対象となる「虐待」や「遺棄」に該当するのかは、環境庁のHPで紹介されています。
■ 環境省 虐待や遺棄の禁止 [動物の愛護と適切な管理] 
    https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/aigo.html

  なお、本年6月12日、改正動物愛護法が国会で成立しました。
  この改正では、愛護動物を殺傷した場合の法定刑を、5年以下の懲役又は500万以下の罰金に引き上げられました。
  これまでの「2年以下の懲役又は200万円以下」の法定刑は軽いと思いますので、この厳罰化には賛成します。
  厳罰化のほかに、犬や猫に飼い主情報を記録した「マイクロチップ」埋込めの義務化、子犬や子猫の販売時期の規制などの改正の対象となっています。  

6.今回のコラムでは、動物の飼育者の責務や罰則などを紹介しました。
  動物取扱業者による虐待、行政機関の殺処分も動物愛護法に関わる需要な問題です。機会があれば、コラムに書きたいと思います。
最後になりますが、法律の条文は、堅苦しく味気ないといわれますが、動物愛護法1条には、「国民の間に動物を愛護する気風を招来」、「生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養」と表現されており温かみを感じます。
人と動物との共生という目的のためにも、動物愛護法を知らなかった人は、一度法律の内容を確認していただければと思います。
 ■ 動物の愛護及び管理に関する法律 条文
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=348AC1000000105