弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2019.03.01

「軽い」コラム

突然ですが今年の私の目標の一つに体重を軽くするというのがあります。
ベスト体重まであと8キロもあり、道のりはまだ遠いです。
早く軽くなりたいという願望もあり、「軽い」コラムを書くことにしました。

世の中「軽い」ことで取扱いが異なるということがよくあります。
たとえば、軽自動車。いまや全国の自動車保有車両数の4割を占めるほどですが軽自動車の場合、車検査証の発行元や車の名義変更手続き等を行うのは行政機関である陸運支局ではなく軽自動車検査協会という民間会社になります。軽自動車の場合には「車庫証明書」も不要ですし、車税も比較的安い「軽自動車税」が課せられるなど取扱いに違いがあります。

ただ、軽自動車だからといってガソリンスタンドで「軽油」(ディーゼル油)を入れてはいけません(笑)。これで車をダメにしてしまったという人がいるとかいないとか。「軽」自動車なので、「軽」油を入れたくなる気持ちはわからないでもないですが軽油とガソリンとは同じ石油由来の製品といっても沸点が異なり、「軽自動車」だから「軽油」を入れるということではなく全く別です。むしろ、「軽油」は重量のあるトラック、バスに使用されることが多く、軽自動車の場合には普通乗用車と同じくガソリンを入れるのが一般的です。

ところで「軽い」ということで取扱いが異なっている法律があるのですがお分かりになりますか。世の中には約2000弱の法律が存在しますが「法律」の名称に「軽」が含まれているのは3つしかありません。

まず、「日本国有鉄道清算事業団の債務の負担の軽減を図るために平成九年度において緊急に講ずる特別措置に関する法律」です。これは特定の事項にしか適用されない特別措置法なので一般的な法律とは異なります。

次に、「軽井沢国際親善文化観光都市建設法」という法律があります。たしかに「軽」が含まれていますが軽いという意味が違いますので除外します。

残ったものは・・・・・・
「軽犯罪法」です。みなさん絶対に聞いたことがある法律だと思いますが実際にその法律を読んだり、あるいは見たことはあまりないかもしれません。

軽犯罪法はたった4条しかありません。殺人、窃盗、詐欺、傷害、放火、強制性交等といった「刑法」で規定されているような犯罪とまでいかないにしても社会秩序を害しそうな軽微なものを犯罪として処罰することを定めた法律です。条文自体は4つしかないですが第1条は1号から34号まであり軽犯罪にあたる行為が列挙されております。

これに違反すれば「拘留又は科料に処する」(第1条柱書)と規定されております。

「拘留」は「一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。」(刑法16条)、
「科料」は「千円以上一万円未満とする。」(刑法17条)と定められています。

したがって、軽犯罪法に触れると最大29日間、刑事施設に入るか、1万円未満を支払う羽目になるかもしれません。ただ、軽犯罪法2条では、情状により刑を免除することもできるとされています。一方、情状により「拘留及び科料」にすることができるとも規定されておりますので、軽犯罪といえども悪質な場合には、29日間、拘置所に入り、かつ、9999円を支払わないといけない場合もありえることになります。ちなみに「拘留」「科料」にも時効があり、公訴時効期間は1年です(刑訴法250条2項7号)。

では一体どんなことをしたら軽犯罪法に触れると規定されているのでしょうか。

代表的なものとしては、
・たんつばを吐き、立小便をする
「街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者」(1条26号)。
 公園に限らず多くの人が集まる場所でたんつばを吐いたり、大小便をしたらこれに該当します。おそらく多くの人が一回や二回、これに触れた行為をしたことがあるのではないかと思います。が、1年以上経過していれば時効です・・・・。

・のぞき
「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(1条23号)。
 家の風呂場を外からのぞいたり、銭湯や温泉の脱衣所をのぞいたりする場合がこれにあたります。

・刃物や人を怪我させるような器具を隠し持つ
「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」(1条2号)。
 正当な理由がない場合が必要なのでたとえば芸術作品を作るためにカッターナイフや彫刻刀等をカバンにしまって持ち歩いているというような場合はいいと思います。ただ、刃物といっても刃渡り6センチを超える刃物については、銃刀法という別の法律で規制されたりしますので注意が必要です。

・騒いだりして乱暴な言動をとる
「公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」(1条5号)
 酔っ払って大きな声を出して他の客などに迷惑をかけたりした場合にはこれに該当します。

・こじき行為
「こじきをし、又はこじきをさせた者」(1条22号)。
読んで字の如しです。物乞いのことです。こじきは、放送禁止用語ではありますが、法律上は規定されております。

このほかおそらく誰でも一度や二度やられたことがあり、内心ムカッときたという経験があると思われるのが、列の割り込みです。列の割り込みも軽犯罪法に触れる行為にあたる場合があります。

「公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者」(1条13号)。

その他、裸にならないまでもお尻やもも等、体の一部を露出する場合も露出の仕方によってはアウトになります。「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」(1条20号)。

ちょっと意外だと思われるものとしては、働けるのに働こうとせず、家を持たずにふらふらする場合も軽犯罪法に触れるということです。軽犯罪法1条4号は「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」と規定されております。

また、かくれんぼや肝試しとして空き家や空きビルに身を隠して潜む行為は、「人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくひそんでいた者」(第1条1号)も該当する可能性があります。

軽犯罪法1条は1号から34号まであるのに33の行為しか規定されていません。よくよく1条をみると「21号」が削除されています。かつて、21号では、動物を虐待する行為を軽犯罪法に触れる行為としていましたが、現在、より刑罰が重い動物愛護法が制定されたため21号が削除されたという経緯があります。

さて、この「軽犯罪法」ですが、弁護士になって軽犯罪法が問題となるケースに直面したことはほとんどありません。しかし、軽犯罪法も犯罪であることにはかわりがないため一度はどのような行為が軽犯罪法に触れるものか見ておくのもいいかもしれないと思い、今回は「軽い」コラムを書いてみました。

コラムを書き終え、先程、チョコレートを食べてしまいました・・・